1話 日常
時は大戦時代。人々がダンジョンのスキル、通称ダンスキを求めて激しい戦が起こった。
毎日、万と言う死者を出し世界中が荒れていた。
このままでは、この世界が崩壊してしまう恐れがあるため当時最も優れていたダンスキを持っていた5人組がその力を使い人々の記憶を改善した。
今までの戦が嘘のように世界に平和が戻った。
しかし、この世界を変える程の力を使った5人はどんどん弱りはて、1人また1人と死んでいった。
やがて最後の一人になった者はまたいつの日か自分達の力を上手く使う者が現れると信じて自分達のダンスキを一部封印した。
いつの日か、この世界に光が差し込むことを願って。
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時は経つ
「ルンルンルン♪」
「メイおはよう」
欠伸をしながら妹に挨拶してる僕は、ルカ・エヴェルト。この貧乏貴族の長男をしている。貴族だけど使用人や豪華な屋敷…………………とは、いかない。
貴族は貴族でも1番下の準男爵だ。貴族のランクは、1番上から公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、そして準男爵だ。貴族だから裕福そうに思われがちだけど、うちの家はそうではない。むしろ貧乏だ。
食事は、1日2食。お風呂もないので庭の井戸にある水を、汲んで洗っている。夏の時は、まだいいんだけど冬の時は凍ってる事もあり1回棒で割ってそこから水を汲んでいる。
正直に言って普通の平民と大差はない暮らしをしている。
それでも僕らは毎日平和に暮らしている。
「メイ、何でそんなに嬉しそうなの?」
「だって、今日はお兄様のスキルが貰える日じゃないですか」
「そうだけど、別にどうでもよくない?」
「どうでもよくありません!愛しn…じゃない。大切なお兄様のスキルが分かるんですよ?」
(今、危険単語言いかけたよね?)
この国では12歳になると王都にある教会で、神官様からスキルを貰える。戦闘向きのスキルや商売スキル、鍛冶スキルなどその人に合ったスキルが授けられる。僕も今年で12になったので教会に行く予定だ。
「ルカーー」
「母上が呼んでいるな。メイちょといって来るよ」
「はい。お兄様」
僕は、少し眠いせいもあり足を引きずりながら母上が呼び出した場所へ向かう。
「どうしました?母上」
この人は、僕の母上で名はエミリー・エヴェルト。父上の名はルイス・エヴェルト。
「どうしたじゃないわよ。可愛い我が子がスキルを授かる日よ?こんなにめでたいことはないわ。ね?あなた」
「そうだ。可愛い息子ルカがスキルを授かる日がくるとはな。父さん嬉しいぞ」
その場で、僕を見ながら号泣してしまった父上。僕の母上と父上は、少々愛が強すぎる。少しめでたい日で泣いたり、俺が1時間以上家を空けるとあちこちを探し回ったりするのだ。
少し面倒だか、そこも親として好きだし尊敬している。
「で、呼び出したようは?」
「そう、忘れる所だったわ。今日は、スキルを授かる日だしいつもより服をいいのにしようと思って」
「家に、そんな服あったっけ?」
「お父さんのを着るのよ」
母上は、そう言いながら、父上に合図を送る。
「さあ、ルカ。この中から好きな物を選んで」
そうは言われても10着もない。貧乏は辛いよ。自分でそう思いながらどんどん悲しくなってくる。でもそうは言ってられない。母上と父上が僕の為に用意してくれたんだ。早く選ばないと。
「父上、これは?」
「これか?これは、貯めたお金で1番最初に買った服だ。まあ、買ってそうそう鳩に糞を落とされたがな」
ガハハハと笑う父上。僕は内心ダメじゃないかと思いつつ、次の服を選ぶ。
「父上これは、何で白いのが付着してるの?」
「それは、母さんとの初夜にアレを発射する場所を少しミスっ(ゴツンッ!)」
父上が言い終わる前に母上の拳がヒットする。
(いやいや!少しどころじゃないよね!?)
頭を押さえながら床をゴロゴロ転がる姿に少し恐怖を覚えた。他の物も聞いてみたがどれもマシな物がなかった。
大事な部分が破れてたり、朝食をこぼしてそのまま匂いが取れなくなったりとどれもこれも着れる事は出来ないじゃないか!と思って少し拗ねてしまったのは、ここだけの秘密。
「ルカ。そろそろ朝食ができるからメイを呼んできてくれないかしら?」
「分かりました」
僕は、メイのいる井戸に少し早歩きで向かう。
視界にメイを捉えて口を開く。
「メイ〜〜。もうすぐ朝食だからねーー」
「今行きます!お兄様少し待っていてください」
メイは、慌ただしく洗濯をしていたであろう服や、タワシなどをまとめてこちらに来る。
「いつもありがとね。僕は、こんなにいい妹を持って幸せものだよー」
「いいえ、お兄様。これは、私の日課のようなものですし、お兄様のしたgを嗅げゴホッ洗えますからね」
(あれ?僕の耳がおかしいのかな?今下着を嗅げるって言ったような…………)
「お兄様?早く行きましょう」
「そうだ…ね」
(僕は、この瞬間に深く考えるのをやめた。だってメイが可愛いから)
「母上、連れて来たよ」
「丁度今出来たところよ。さあ座って」
「「はい!」」
俺とメイは、お腹が空いていたのか同時に声を揃えた。
ちなみに父上はと言うと、まだ床にうずくまっていた。
「お母さん。お父さんはどうしたの?」
メイの可愛らしい質問が発せられる。
(メイ可愛いいけどそれは、聞いたらダメなんだよ)
「机に頭をぶつけたんだよ」
「そうなのですか。お父さんも少し馬鹿ですね」
「おいっ!」
父上の言葉は、スルーして母上にはナイスフォローとグッドマークを手で作りメイには見えないように見せてくる。
「ほら、あなた。早く席についてちょうだい」
「メイ〜。ルカと母さんがいじめてくるよ〜(泣)」
「自分で頭をぶつけたのに人のせいにするのですか?お父さんがそんな人だなんて少しショックです」
「ガーン」
父上は、そのまま石のように動かなくなってしまった。僕と母上は、笑いが堪えられず顔を後ろに向けてしまう。父上は、メイのことも僕と同様に愛が強い。だから、大好きな娘にそう言われたらショックだろうな。
「?。どうしたのですか、お兄様」
「何でもないよっ!ププッ」
「あっ!今笑ったなルカ。嫌いになっちゃうよ」
「いいですよ」
「えっ?」
父上は、言葉の意味が分からず数秒呆けた後、自分が何を言われたのかを理解してその場で白目を向いて気絶してしまった。
「あはははは!」
今日1番の笑い声を出した母上は、目に涙を溜めている。
「ひぃーひぃー、お腹痛い(笑)」
「お母さん何がそんなにおもしろいのですか?」
「メイは知らなくていいのよ」
「?」
「そんな事は置いといて、ご飯にしましょう」
母上は、そう言うとキッチンから沢山の料理をとってきた。
「今日は、ルカがスキルを貰う日だから豪華にしちゃた☆」
(いやいや、母上!?こんなに料理を作って大丈夫なのか!?明日から芋生活は嫌だよ?)
「わぁー!」
(まあ、メイが嬉しそうにしているだけでいっか)
「では」
「「いただきます!」」
まずは、焼き魚を食べてみる。
「うんー!ホクホクだー!」
「そう?よかった。まだまだいっぱいあるから沢山食べてね、ルカ」
「うん!ありがとう母上」
隣では、ヨダレを垂らしながらこちらを見ているメイがいる。
「メイ、どうしたの?食べないの?」
「えっ……今から食べます!」
パクッ
「お、い、しー!」
「それは良かった」
その後も父上だけを除いて楽しい朝食の時間が過ぎていった。
「もう食べられないー」
「僕も〜」
「はっ!」
テーブルの上にあった皿が空になったところで気絶していた父上が目を覚ます。
「母さん達?もしかして俺の分がない感じ?」
「そう言うと思ってとっておいたわよ」
「女神だー!ここに美しい女神がいるぞー!!」
でも、実際は違った。父上の前に出された皿は僕達が食べた後のカスしかなかった。実質ないのと同じだ。
「これはどう言う事だ?」
「それがねー、美味しすぎて全部食べちゃたの」
メイの可愛い回答で、また気絶する父上。誰か父上にでも恨みがあるのだろうか?
「ほら、ルカは早く身支度しなさい」
「分かりました」
僕は、顔を洗うため庭にある井戸に向かう。僕が井戸につき洗っている時、遠くから誰かの声が聞こえた。
「ルカーーーーー!とうっ!」
「うわっ!」
ポスッ
僕は、彼女が転ばないように全身に力をこめてキャチをする。
「ナイスキャチ、ルカ」
「ナイスじゃないよ、アヤ」
彼女の名はアヤ。アヤ・シュタルテ。子爵家の御令嬢だ。茶色の髪の色をして少しヤンチャなところもあるけど、それを忘れてしまうくらい美人だ。何でこんな身分が高い人がこんなボロ屋敷に来てるかって?
それは、まだ僕が小さい時、川で流されているアヤを見つけて助けたのだ。この時に、アヤの親達に頭まで地面をつけてお礼を言われた時は少しびびったけど。
そんなことがあり、今まで仲良く遊んできた。
所謂幼馴染ってとこ?
「今日は、スキルが貰える日だねーー」
「そうだね、アヤのスキルが気になるよ」
「そ、そう?」
アヤは少し頬を染め上目遣いでこちらを見てくる。
(ああー!やばい可愛いすぎる!落ち着け僕)
「ルカどうしたの?」
「い、いや何でもない」
僕達がそんな話をしていると、背後からもの凄い唸り声が………………
「今すぐお兄様から離れて下さい!このデカ牛!」
「デカ牛!?ちょとメイちゃん、言葉が汚いよ?」
僕の両側で鋭い睨み合いが続く。
(えっ?何この状況)
頭を?にするルカであった。
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