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群青  作者: むぎ
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episode01

深夜、玄関を開く音でばちりと目が覚めた。

上半身だけを起こして様子を窺っているとガタガタ、ゴソゴソと寝室の外から物音が聴こえてきて、彼が帰ってきたのだと確信した。



「………おかえり」

「うお、びびった。起きてたのかよ」

「目が覚めただけ。また寝るよ」

「そ。俺シャワー浴びてくるから。おやすみ」



寝室へ入ってきた翔がびっくりしたように声を上げて、わたしが起きてると気づいたからかすぐに部屋の電気をつけた。眼鏡とマスクを外して綺麗にセットされた頭をぐしゃぐしゃと崩しお風呂場へ向かった翔が着替えを持っていってないことに気付いた。いっそ気づかなければいいものを律儀に気づいてしまう自分にため息をついて、タンスから翔の着替えを持ってお風呂場へ行く。



「翔、着替え置いとくよ」

「おー、さんきゅ」

「わたし寝るから、お風呂の電気消し忘れないでね」

「ん、おやすみー」



曇りガラス越しに響く翔の声はテレビの中にいるときより少し低い。きっとあれだ、世の中のお母さんが電話に出るときは声が高くなるように翔にも無意識にテレビやメディア用の声があるのかもしれない。



三年前、友人に誘われた飲み会で出会った翔は駆け出しのアイドルだった。当時はまだメジャーデビューなんてしてなくてあまり有名ではなかったけれど、それでも、たくさんのファンに支えられてアイドルをしてる翔はきらきらしてたし、そんな翔にわたしが惹かれたのも事実で。どこでどうなってそうなったのかはわからないけれど、奇跡的になぜか翔のほうもわたしに興味を持ってくれてなんだかんだと付き合うことになって、気づけばもうすぐ三年目だ。





「……また脱ぎっぱなし」



脱衣所に脱ぎ捨てられた翔が着てた服を見つけてため息が溢れる。すぐそこに洗濯カゴがあるにも関わらずそのへんに服を脱ぎ捨てる翔の癖にも、三年も経てばもう慣れっこだった。テレビに映る田邊翔の世間やファンの人たちの中のイメージは綺麗好きで美意識が高くて可愛い…こんなところだろう。


実際は服はすぐ脱ぎっぱなしにするし、お風呂の電気は消し忘れるし。唯一、世間のイメージと合ってるところがあるとするなら女子並みに美意識が高くてスキンケアだけは怠らないってところくらいだろうか。



まあ、意外とだらしない翔の本性を知ってるからと言って翔の本当の気持ちを知らなければなんの意味のないのだけれど。

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