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白石玉子の思い出「おいもっ」

 一学期の期末テストの最終日、机の中に折りたたんだルーズリーフに書かれた手紙が入ってた。

 

 話したいことがあるので放課後体育館の裏に来てください。

かならずひとりで来てください。 斉藤踏歌より


 青空、入道雲、体育館の裏、遠くから部活の声が聞こえる。


「白石さん」


 後ろから声をかけられて振り返る。斉藤さんがいた。


「話ってなに?」


「あ、あのね、ちょっとこっちきて」


「どこ?」


「こっちこっち」


 すぐそばのフェンスの近くまできた。私は斉藤さんを見る。斉藤さんは目をそらす。なんだろう。


「………あのね。………………あ、そうだ。白石さん最近みんなから『玉子さん』って下の名前で呼ばれてるよね!クラスに馴染めてきたんだね!よかったね!」


あ、斉藤さんそんなこと気付いてたんだ。


「うん、ありがとう。話ってそのこと?」


「あ…、違うの…、あのね…、私ね…」


斉藤さんは私に背を向けてフェンスのほうを向いた。フェンスの下には大きな草が生えてる。バッグからなにか赤いものを取りだす。ん?シャベル??そして足元の草を指さして言った。


「私ね、春にここにおいも植えたの!今からいっしょに掘ろ!おいもっ!」


「おいもが植えてあるの!?すごい!私おいも掘りするのが夢だったの!!」


「ほんと!?良かった。前に白石さんおいもが好きって言ってたからきっと喜んでくれると思ったの」


 斉藤さんはそう言ってスコップを私に差し出す。私は斉藤さんのもとにかけよってそれを受け取る。


「じゃあ私が蔓をひっぱるから、白石さんはおいもをどんどん掘ってくれる?」


「うん、まかせて!」


 斉藤さんが足元の蔓を引っ張ると、土の中からおいもが出てきた。


「きゃー!おいもっ♡おじゃが♡わあーおっきーい♡♡」


 つい語尾にハートマークが付いてしまう。普段の私のキャラが崩壊してるような気がするけど、おいもの前ではそんなことどうだっていい。

 おいもはどんどん出てくる。もうシャベルは置いて手で掘ろう。指や手の平が土で汚れてるけど、そんなことぜんぜん気にならない。次々出てくるおいもに私はただ夢中になっていた。


 そのあと2人でほったおいもをグランドの脇の水道で洗って、斉藤さんの用意してたコンビニの袋に入れる。たくさん採れたのでコンビニの袋から二個転げ落ちた。私はそれを両手で持つ。


「白石さん、学校の敷地内で勝手においも育てたのバレたら怒られちゃうかもしれないから、誰にも言わないでね」


「うん、2人だけの秘密ね。私おいも掘りができるなんて思わなかった。生きててよかったー」


「ほんとおいも好きなんだね。良かった、白石さん誘って。私の家でおいもふかして食べよ」


「うん!」



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