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斉藤踏歌の思い出「菫」

 斉藤踏歌は思い出す。自分にとって白石玉子は他のひととは違うのかもしれないと感じた日のことを。




学校の花壇の草むしりみたいなだるいことなんでやんなきゃいけないんだろと、いやいや草むしりをしていたら、となりにいた白石さんがつぶやく。

「なんでこの花じゃいけないんだろう?」

 花壇には薄むらさき色の小さな花を咲かせた雑草が生えてる。これのことかな?

「なんで自然に咲いてる菫はダメで、買ってきたマリーゴールドならいいんだろう?」

白石さんがまたつぶやく。

 ただの雑草かと思ってたけど、これが菫なんだ。名前は知ってたけど、私、菫が実際どんな花なのか、そういえば知らなかった。

 なんとなく大きな花かと思っていたけど、実際の菫はうっかりしたら見落としてしまうくらい小さかった。というか私はいままで気付かずに きっと何度も菫を踏みつけて、そのことに気づいてもこなかったかもしれない。

 そして菫を踏みつけたまま、花壇に整然と植えられたマリーゴールドをきれいだなんて思ってたんだ。花を見てきれいだと思う自分は心がきれいだなんて、無意識だけれど今思えば確かに感じていた。菫を踏みつけてるくせに。

 

 そんなことを考えていたら、私は白石さんの言葉になにも言えなくなる。次の言葉を待ってるのに、白石さんはもう何も言わず、草をむしってる。

 そうだよね。世の中のことを「おかしい」とか「へんだ」と疑問に思うことがあっても、納得いかない気持ちのままそれを受け入れるしかないってことだらけの中を私たちは生きてるよね。そうしてるうちに「おかしい」って感じてた気持ちはいつのまにかどこかに行っちゃって、そのうち何も感じなくなる。おかしいと感じてたことも当たり前になっちゃうんだ。

 白石さん、白石さんもそういうの嫌?でもそれを口にできなくて聞けない。

 

 白石さんのことまだよく知らないけど、白石さんといるとときどき体が熱くなる。

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