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ダイスで異世界  作者: kuro
7/10

14へは行かない

 幹人は牢獄の中でひとりうずくまっていた。


『あれー? 何で捕まってるんだい?』


「捕まるに決まってるだろ!? 町の人が取り押さえてくれたよ!」


『何だ、せっかく遠慮して終わるまで通信切ってたのに。ってことは未遂で終わったのか。大人の階段を上る機会が失われちゃったね、可哀想に』


「できなくて良かったよ! お互いトラウマになるだろうが!」


『強姦から始まる恋だってあるかもしれない』


「あってたまるか! 仮にあってもそれはどっちも頭がおかしいだろ!」


『こんなにも堂々と他人の正気を疑うだなんて……すっかり変わってしまったね。魂を汚染でもされたのかしら』


「現在進行形でお前の影響だよ! ……くそ、何で僕がこんな目に」


『まー、いいじゃない。これも経験だ。一晩反省して次に行けばいい』


「次なんかない。明日の朝、処刑だって」


『へ? ええ? ずいぶん大がかりなことになってるねえ』


「体が襲い掛かり続けるせいで、町の人までぶっ飛ばしちゃったからだよ。もし魔法まで撃ってたら、その場で冒険者に討伐されてた」


『そうかー。ざんねーん』


「その残念はどっちの意味なんだ。僕が魔法を撃たなかったことか? 冒険者に討伐されなかったことか?」


『しかしまあ、それならここでのんびりしている場合じゃないぞ。さあ、脱獄できるかチャレンジだ!』


「いらない」


『おいおい、死んでもいいのかい?』


「もう何回死んだと思ってるんだ。いっそその方がいいくらいだ」


『あらま。何か妙な方向に覚悟が決まっちゃったな』


「どうせ何言ったってダイス振るんだし、どうでもいい」


『ええ~、本当に~? 例えば地獄とか行っても後悔しない~?』


「地獄……地獄か。そっちの方が楽なんじゃないの。知らないけど」


『そうかそうか。じゃあ行ってみる?』


「…………」


 普段通りの幹人ならさすがにこの言葉には不審を覚えた。

 だが精神が摩耗し諦観に取り付かれた現状では、判断のために気力を振るうことすら嫌だった。


「行――」




『行――』


 幹人が自ら地獄へ堕ちようとする瞬間を、下級悪魔は見守る。

 だがまさにその直前。


 ドカンッ!


 轟音と共に空間が破壊され、邪魔が入り込んできた。


「見つけましたよ、クソ悪魔」

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