14へは行かない
幹人は牢獄の中でひとりうずくまっていた。
『あれー? 何で捕まってるんだい?』
「捕まるに決まってるだろ!? 町の人が取り押さえてくれたよ!」
『何だ、せっかく遠慮して終わるまで通信切ってたのに。ってことは未遂で終わったのか。大人の階段を上る機会が失われちゃったね、可哀想に』
「できなくて良かったよ! お互いトラウマになるだろうが!」
『強姦から始まる恋だってあるかもしれない』
「あってたまるか! 仮にあってもそれはどっちも頭がおかしいだろ!」
『こんなにも堂々と他人の正気を疑うだなんて……すっかり変わってしまったね。魂を汚染でもされたのかしら』
「現在進行形でお前の影響だよ! ……くそ、何で僕がこんな目に」
『まー、いいじゃない。これも経験だ。一晩反省して次に行けばいい』
「次なんかない。明日の朝、処刑だって」
『へ? ええ? ずいぶん大がかりなことになってるねえ』
「体が襲い掛かり続けるせいで、町の人までぶっ飛ばしちゃったからだよ。もし魔法まで撃ってたら、その場で冒険者に討伐されてた」
『そうかー。ざんねーん』
「その残念はどっちの意味なんだ。僕が魔法を撃たなかったことか? 冒険者に討伐されなかったことか?」
『しかしまあ、それならここでのんびりしている場合じゃないぞ。さあ、脱獄できるかチャレンジだ!』
「いらない」
『おいおい、死んでもいいのかい?』
「もう何回死んだと思ってるんだ。いっそその方がいいくらいだ」
『あらま。何か妙な方向に覚悟が決まっちゃったな』
「どうせ何言ったってダイス振るんだし、どうでもいい」
『ええ~、本当に~? 例えば地獄とか行っても後悔しない~?』
「地獄……地獄か。そっちの方が楽なんじゃないの。知らないけど」
『そうかそうか。じゃあ行ってみる?』
「…………」
普段通りの幹人ならさすがにこの言葉には不審を覚えた。
だが精神が摩耗し諦観に取り付かれた現状では、判断のために気力を振るうことすら嫌だった。
「行――」
『行――』
幹人が自ら地獄へ堕ちようとする瞬間を、下級悪魔は見守る。
だがまさにその直前。
ドカンッ!
轟音と共に空間が破壊され、邪魔が入り込んできた。
「見つけましたよ、クソ悪魔」




