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これからも頑張ります。
「『火』」
「『焔』」
「お、俺の魔法が吸収された?」
福本が放ってきた火魔法は僕の焔の玉で全て吸収する。同属性の魔法なら基本的に強い方に吸収される。つまり、福本よりも僕の方が魔力が強いということだ。
「柏木、これ俺も必要だった?」
「うーん、いらなかったかも」
「ふざけんなよ」
この様子を見て、水希が思ったことを聞いてきた。いや、僕だってこんなに圧倒的になるなんて思わなかったよ。もう少し手応えがあると思っていたんだけどね。期待外れか?
「久留米!」
「『土壁』」
「『水球』『風』」
「お?」
久留米の魔法で地面から土の壁が出現する。土属性というだけあって地面から飛び出るようにもできるのか。そしてその反動で高山が上空へと飛ぶ。そして水を生み出し風でその水を一点に集め巨大な水の球を形成する。
「あら、そんな使い方もできるのね『天の世界』」
その生み出された巨大な水の塊を美希が操る風で霧散していく。
「嘘だろ」
「ふーん、圭の予想通りね。強敵との戦いが足りてない」
「でも今の人、複数の属性を操っていたし普通に強いよ」
美希に壊されたことで、高山はパニックになる。着地も失敗したみたいで(一応美希がフォローとして横に飛ばしたので大怪我にはならなかった)倒れている。その様子を見て、美希が冷めた感じで突き放す。でも、咲夜は別の意見を持ったみたいで、高山たちのフォローを口にした。
「ああ、だからこうして叩き潰すんだ」
「私怨混じってない?」
『けーは最初にこいつらに馬鹿にされてたもんねー』
「今それを言わないでくれよ……『焔』」
焔を展開して高山たちが飛ばしてくる魔法をことごとく潰す。ただ単純に飛ばしてくるだけなので焔を広げて巨大な盾のようにするだけで全部防ぐことができる。そしてイフ……さすがにちょっと黙っていてくれたらありがたかったよ。
「ふざけるな『水矢』」
「『焔』」
焔の形を矢に変えて、迎え撃つ。全く同じ形状にしてぶつけあう。またしても僕が勝利し、いくつかの焔の矢が高山たちのところに向かっていく。
「うわああ」
「あいつ、あんなに強かったのかよ」
「柏木、そろそろいいか?」
「あー、高山は僕が倒すから他三人をお願い」
「じゃ、戦況を2分割してあげるね」
美希のその言葉とともに、地面から風が巻き起こって、高山以外の三人が少し離れたところに吹き飛ばされる。そしてそこに水希が接近する。あいつ、頼むから適度に心を折る感じで戦ってくれないかな。一気に勝利しても意味ないからな。
「柏木! てめぇ」
「そういえば決着がついていなかったね」
最初にユナちゃんを賭けた勝負。あれはトロールやらドラゴンやらが出てきて……イフにかき乱されて中途半端に終わってしまったけど、それをふと、今思い出した。
「あの時の勝負の再開といこうか!」
「黙ってろ、よくわからない魔法を使いやがって」
「これが僕の力だけどね」
高山と言い合いながら焔を生み出して飛ばしていく。数はそこまで多くないからある程度は裁くことができるだろう。実際、高山は水の球をいくつもいくつも作り出してなんとか対応している。
「くそっ、火は水で消えるんじゃないのかよ」
「強すぎる焔は水を蒸発させるんだよ」
「くそがっ」
さらに焔を追加して、高山めがけて飛ばしていく。水希たちの方をみれば水希がいい感じに他の奴らをあしらってくれている。まあ、咲夜もいるし大丈夫だろう。
「ほらっ、頑張らないと」
「てめぇ、おちょくるのもいい加減に」
「ほらほら」
「てめぇ」
できる限り余裕の態度で戦う。勝負において褒められた姿でないことは自覚しているけど今だけは見逃して欲しい。
「ふざけんじゃねえぞ!」
「!」
遠距離での魔法の打ち合いは不利だと悟ったのか、近づいてきて肉弾戦を仕掛けてきた。まあ、普通に近づいてくる前に攻撃して倒すことは可能ではあるけど、それをしても遠距離は負けたけど近距離ならって思ってしまうかもしれない。
「接近戦は苦手なんだけど」
「なら、死ねぇ」
「『焔』」
手に焔を集めてカウンター気味に繰り出す。そして高山がひるんだ隙に足を払ってもう一発叩き込む。
「がはっ、どうして」
「苦手だけど、お前よりもっと強いやつと戦ったことがあるだけさ」
水希に比べたら速度もはるかに遅いし力もかなり弱い。僕は足にしっかりと焔を集めて高く飛び上がると地面に倒れている高山めがけて振り下ろそうとして……横に流された。
『今、死んでたわよ』
「あ、やべっ、つい」
美希が僕たちの方を見ていて僕を横に流してくれたみたいだ。いや、本当に助かりました。おかげでまだ高山は生きているし。そして高山はそのまま起き上がる。
「おまえ、今、何を」
「いやー、すまん。あのままだと死んでてからさ」
「ということは見逃されたということなのか」
「そうだね……『焔』」
「うぐっ」
焔の球が高山の体を貫いていく。さて、これくらいでいいだろう。適度に死なないところにぶつけていく。
「がはっ」
「これでわかったかな? 僕たちとの差が」
「……」
高山が最後に倒れて意識を失う前に最後に通告する。少しばかりやりすぎな気がしなくもないけどこれぐらいでちょうどいいだろうね。水希たちの方を見たら久留米たちが倒れていてその周囲に水希たちが立っているのが見えた。
「そっちも終わった?」
「ああ、柏木も?」
「終わったよ。ありがとう」
「いいって。気にすんなよ」
水希たちのもとに駆け寄りながら僕は水希たちにお礼をいう。さて、どうしようか。
「私の魔法で回復でもさせる?」
「あーいや、いいよ。でも邪魔にならないところに運んでおきたいな」
「わかった。手伝うよ」
「僕も」
水希と咲夜が協力してくれて、三人で戦った場所の隅に運んでいく。これで、全部終わったかな? こいつらが起きた後にどうなるかなんてどうでもいいけど、それでも、クラスメイトとしての義理は果たせたと思う。
「お疲れさまでした、ケイ様」
「あ、ユナちゃんありがとう」
『さて、これであの人たちとの賭けはあんたの勝ちね』
「あー……そうなるね。あいつらが覚えているとは思えないけど。これでユナちゃんに突っかかってくることがなくなると思うよ」
「そう……ですね! ありがとうございます」
イフの言葉とそれを捕捉した僕の言葉を聞いて、ユナちゃんはかなり嬉しそうに言ってきた。まあ、これでこれからユナちゃんになにかちょっかいをかけてくることがあってももう大丈夫だろうね。
「あら、もしかしてユナちゃんのために戦ったの?」
「え? あー……」
「ケイ様」
「そ、そうだね。ユナちゃんのこともあってあいつらに戦いを挑んだんだ」
すぐに否定しようとしたけどユナちゃんがちょっとショックを受けた顔をしていたので慌てて言葉を止めて別の言葉を選んだ。これ絶対美希の罠だろう。ちらっと見たら笑っていたし。
「美希?」
「あはは。ユナちゃんいい感じだよ」
「なにが?」
「秘密」
いたずらっぽく笑っていても僕にはそれが不安しかない。二人で通じ合っているということは昨日の夜に話していたことだろうけど……はぁ、問い詰めても無駄だし諦めるか。
「さて、と。少し時間もあるしゆっくりするか」
「そうね」
『え? 次のドラゴンと戦わないの?』
「もう勘弁してください」
僕たちはそんなことを言い合いながら自分たちの部屋へと戻っていった。ドラゴンは……明日とか余裕があれば考えようかな。
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