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これで、1章が終わりな感じです。
ブクマありがとうございます。
これから頑張ります。
「あら、みんなおかえりなさい」
「ユイナさん、ただいま」
「咲夜」
「うわっ、美希?」
ユイナさんの宿に戻ってきたらユイナさんから暖かい言葉をもらう。そして美希が僕たちの方向に飛び出してきて、そのまま咲夜に抱きついていた。ちっ、このリア充が。まあでも、こうして無事に救うことができてよかったよ。
『相変わらず小さい男ね。嫉妬だなんてみっともない』
「あ、圭お疲れ」
「ついでのように言わないでくれる!?」
確かに美希からしたらついでなのかもしれないけどさ、ほら、僕と水希が最後まで付き添ったからさ。さすがになんかこう、一言ぐらいあってもよくないですか?
「ケイ様もお疲れ様でした」
「あ、うん。ありがとう」
「柏木にもユナがいるじゃないか」
「そうだね。ユナちゃん、ありがとう」
「い、いえ」
イフの言葉を聞いたからなのかユナちゃんが気を利かせて僕のことをねぎらってくれた。本当に性格もよくていい子だよ。こんな風に気を利かせてくれるだなんて優しい。
「結局俺には誰も言ってくれないのか」
「妾が言ってやろう。お疲れ様」
「私も言ってあげるわよ。お疲れ様、水希ちゃん」
「ありがとう……でもなんか虚しい」
「ん? 水希」
「お前も黙っとけ」
「は?」
なぜか水希に殴られてしまったんだけど。やっぱり僕も一言言ってあげたほうがよかったのだろうか。そんなことを思っていると、咲夜が思い出したようにユイナさんに尋ねる。
「ユイナさん、そういえば僕のクラスメイトたちは無事なの?」
「ええ、疲れがひどいからみんな部屋で寝ているわ……起きたらどこかの国にでも連れて行きましょう」
「そっか。お願い」
「咲夜はどうするんだ?」
ユイナさんの言っていることはもっともだ。ここでずっとユイナさんが世話をするっていうのはなかなか難しいし、この世界でいきていくためにはどこかの国の庇護下に入るのが一番大切だからね。でも、それだとどこの国に連れて行くのがいいのだろうか。それに、そうすると、咲夜の今後が気になる。
「それだけど、教えてくれないか? 柏木くんたちの今の状況を」
「そう……だな。とりあえず座ろっか」
間違いなく長くなるし座っておいたほうがなにかと都合がいいかもね。僕たちはとりあえず席に着いた。そして、咲夜に僕たちがそれぞれ各自、自分たちのクラスメイトと一緒に二度目の異世界召喚を受けたこと、アリスにまた、魔王を殺す様に頼まれたこと、僕たちはそれを快諾してまずは仲間を集めていたことなどを話した。
「なるほどね。それで僕を助けに来てくれたんだ」
「お前の状況を聞けばどんな理由なんてあろうが助けに行ったよ」
「ああ、柏木のいう通りだ。別に俺たちの目的のために助けたんじゃねえよ」
「二人とも、ありがとう」
咲夜は素直にお礼を言う。さて、と。こうして無事に僕たちの目的を共有したわけだけど、これからどうしようか。
『え? 魔王を殺しに行かないの?』
「咲夜が囚われていた感じを見るに、どこの国も魔王退治を狙っているんだろ? 僕たちが殺すのは確定として、できる限り面倒なことにならないようにしたい」
「そうだね。他の国でも魔王退治のために動いているし、僕たちがさっさと殺すのも悪手じゃないかな」
『わかったわよ』
『イフ、もう少し堪え性を覚えなさい』
『はーい』
「それなら英雄の国に向かうのはどうかしら」
僕たちが悩んでいると、ユイナさんがそう助言をしてくれた。英雄の国、僕たちが以前に呼ばれた国。確かにあそこなら魔王退治の中心にいたとしてもなんらおかしくないんだけどね。
「そうじゃな。咲夜のクラスメイトを送るついでに向かうのもありだな」
「なにかあるのか?」
「ん? お主ら知らぬのか? シャルミナでは魔王討伐のための養成学校を作り上げておる。そこで勇者を見つけるとか言っているらしいぞ」
「そ、そうなの?」
シャルミナ、英雄の国の本当の名前。まあ、それは置いておいて、魔王退治のための養成学校ってなに? そして勇者を見つけるって……まさか僕たちと同じように英雄を見つけようとしているのか。まあ、クラスメイトたちみんな能力値だけ見たら本当に優秀だからなぁ。僕たち以上の存在が現れていたとしても何もおかしくない。
「そして咲夜のクラスメイトたちを送り届けるのは確定なんだね」
「ま、さすがにここまでしちゃったんだし途中で放り投げるのも後味が悪いし、いいんじゃね?」
「みんな、ありがとう」
「咲夜は気にしなくていーの」
「「気持ち悪」」
「え?」
「「なんでもないです」」
美希がものすごくやわらなか声色で慰めていたからつい本音が溢れてしまったんだけど、すぐに切り返されてしまった。水希と全く同じタイミングだったのは少しだけ面白かった。そして謝るタイミングも同じ。
「あんたたち相変わらず仲良いわねぇ」
「面倒くさいだけよ」
「少しで良いから優しさを分けてくれ」
「あんたたちに分ける優しさなんてないわよ」
「ははは」
わかってるって。それでも、僕たちが本当にヤバイ時は助けてくれるだろうし。
「それじゃあ次の目的地は咲夜様のクラスメイト? を送りながら英雄の国に行く、ということですね」
「そうだね」
ユナちゃんが軌道修正も兼ねて僕たちの次の行動をまとめてくれる。その言葉に僕たちはなんも反対もない。英雄の国に行ったとして、どうなるのかといえば……まあ、それはその時ということで。
「行って具体的に何するの?」
「理想は僕たちが魔王討伐のパーティーですってことにするのが良いんだけど」
「それか誰が勇者に選ばれるのか見極めてそして先に魔王を殺す」
『結局そこは力づくなのね』
『こいつらはいつもそうよ』
イフに呆れられた声を出される。そしてついでにシルフィにも僕たちの本性がバレてしまったみたいだ。まあ、別に隠していたわけじゃないし問題ないけどさ。
「あの、咲夜様も魔王を殺すことに抵抗はないのですか?」
「うん? そうだね。柏木くんたちが決めたっていうのもあるし、これで解決するのなら、僕は殺しに行くよ」
「解決、ですか」
「うん」
「咲夜」
「……わかってるよ」
咲夜は解決と言ったけれど解決しないことは僕たちが今現在進行形で痛感している。だからそれ以上は何も言わせなかった。
「ま、今日は咲夜ちゃんも助け出したし、ゆっくりしていったら?」
「そうじゃな。カストルたちもすぐに負けるほどヤワじゃないし……そもそもお前たちぐらいの力は持っておるからな」
「え? ケイ様たちと同じくらいなのですか?」
「妾は両方の力を知っておるが……ケイたちの力はあれが全力か?」
「一応まだ上はあるよ」
いつでも本気で戦っているわけじゃない。それに、全力を出してしまったら疲れるからね。水希は多少本気だと思うけど、僕はまだ……二つ? いや、一つか。上があるし。美希も武器を持っていないからね。
「え? まだ上があるのですか?」
「そうよ、こいつ意地が悪いから隠してるのよ」
「疲れるだけだって」
『そうね、私も嫌ね』
「は、はぁ」
ユナちゃんに驚かれたけどすぐに美希が冷たく突き放す。意地が悪いって……なんども言うけどあれ本当に疲れるんだよね。でも、ユイナさんの言っているように今日は咲夜を取り戻すことができたことを喜んで、ゆっくりと休もう。
二度目の召喚で紆余曲折はあったけれど、こうして4人揃うことができたわけだし、それは絶対に喜ぶべきことだろうから。




