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久しぶりの投稿となり、すみません。また、ブクマありがとうございます。
「それじゃ、準備はいいか?」
『そうね、時間まであと1分よ』
僕と、水希、美希そしてイフリートがいるのは獣の国の王宮の城門前。僕の『焔』と美希の『天の世界』を複合させて蜃気楼を生み出して、あたりの人からは一切僕たちの姿が視認できないようにさせている。そしてイフリートが作戦決行の時間を教えてくれる。
「結局脳筋プレイか」
「俺たちに作戦なんていらないってことだろ」
思わず僕がもらしたぼやきに水希が返してくる。ユイナさんが提案した作戦はかなりシンプルだ。時間になったら……というかあと少し。
『始まったわよ』
イフリートの声とともに王宮の裏側から爆発音が聞こえて来る。アリスがうまいこと暴れてくれているだろう。今の時刻は夜。咲耶達は休んでいるだろうから向かうのは当然王宮にいる兵士達。つまり、今警備はかなり手薄になるというわけだ。
「囮作戦を使うのはいいけど、結局これから正面突破でしょ?」
「まあ、俺たちの合ってるって」
「圭、いきましょ」
「了解」
音が聞こえて騒がしくなったタイミングで僕たちは動き出す。どうせなら扉ごと消し飛ばすというのもアリだったかもしれないけどせっかく囮になってくれているわけだし、ここは、
「俺がやるよ『狭間斬り』」
水希の剣技で扉の一部を丸ごと消し飛ばす。こっちの方が静かに中に入ることができるんだよね。削り取られた場所から僕たちは王宮の中へと侵入していく。
「適当に『焔』で覆っておくよ」
「雑すぎない!?」
「これ以外なにができるんだよ」
「ちなみにどれくらいで消えるんだ?」
『1日は持つわね』
「ならいいか」
咲耶を捕まえて無理やり働かせていた国だ。情けなんて一切必要ない。一部が壊されていることに気がつかないで過ごしてここから攻められてしまえばいい。
「さすがにすぐに気がつくんじゃない?」
「そうか? まあ普通に燃えているからね」
隠している必要も全くないわけで遠慮なく燃やしている。端から見ても異常なのはそうだけど、まあ扉をジロジロと見ている人がいなければ気が付かれにくいだろうな。それにそこまでここは人……獣人か? がいるわけじゃないし。いつまでも扉に粘着してはいけないと思ったのか、美希が切り替えるように提案する。
「さて、と。中に入りましょうか」
「そうだな。イフ、案内お願い」
『わかってるわよ……こっちね』
イフはこないだここに潜入しているので咲耶たちがいるところがわかっている。イフの案内で僕たちは咲夜のいるところへと向かっていく。アリスが暴れているからそっちに兵士達は向かっているわけだけど、まだ残っている獣人も当然いるわけで、
「む、ふしんsy」
「黙ってて『焔』」
「静かにしててね『天の世界』」
まあ、すぐに僕の焔と美希の風によって全部吹き飛ばすのだけどね。僕たちの存在を他の獣人たちに知らせようとしても焔が口を覆うので思うように話すことができず、風によって天井に激突させられるのですぐに意識を失う。それにしても美希のやつ、かなりの速さで風を上に運んでいるんだけど……やっぱり怒らせたらやばいな。
『あ、ここをまっすぐ向かっていったら咲夜たちはいるよー』
「了解」
しばらく進んでいると、イフがそう教えてくれた。どうやら地下の方に向かって進んでいるみたいで、僕たちは一瞬だけ顔を見合わせて、すぐに突っ込んでいった。
「き、きさまら、どうやってここに侵入した!」
「うわっ、予想より多い」
咲夜たちを閉じ込めている牢の前には20人弱の獣人たちがいた。まあ人間をこうして捕らえているわけだし警備がそこそこいるのは予想していたけど、まさかここまで多いとは思っていなかったな。
「え? 柏木くんに斎藤くん……それに美希?」
「あ、咲夜」
「咲夜だ」
騒ぎが起こっていることに気がついていたのか、咲夜は地下への出入り口の方に視線を向けていた。だからか、すぐに僕たちの存在に気がつくことができた。
「美希、ここは俺と柏木に任せて咲夜を頼む」
「わかったわ」
「お前ら、何勝手なこと「『焔』」ぎゃあああああ」
僕たちに近づいてきた獣人を焼き払う。そのついでに牢までの焔の道を作る。獣人たちは焔が苦手なのか少しだけ離れてくれた。おかげで牢までまっすぐに進むことができる。
「ふ、ふざけんな。『水』」
「『水球』」
水属性の使い手たちが焔に向かって水をかけまくる。でも、少し遅いね。
「『天の世界』……牢を壊したわ」
「美希、この手錠を……魔法を封じられてる」
「わかったわ」
すでに美希が牢のところにたどり着いていて、檻を壊した。そして次々と咲夜を始めとする咲夜のクラスメイトたちがはめられている手錠を壊している。
「な、貴様、なんてk」
「だから僕の方を見なくていいの?」
向かってくる獣人を焔をまとわせた拳で殴り飛ばしている。隣を見たら、水希が持っている刀で峰打をしているのが見えた。
「めんどくさいな。柏木1秒持たせろ」
「わかってるよ『不知火』」
「え?」
「うわあああああああ」
僕は牢屋一面に火を放つ。咲夜たちの方はまあ、美希もいるしなんとかなるだろう。そして僕が広範囲魔法を放って獣人たちの気をひいているうちに、水希はカベを蹴って空中に躍り出ると、
「柏木サンキュー、『力影』」
刀を横に一閃する。刀から発生した衝撃波が獣人たちを襲う。僕の『不知火』と水希の『力影』。それを両方とも受けたことで、獣人たちは全員倒れてしまった。
「ふう」
「なんとかなったね」
「なったね、じゃないでしょ、このバカ!」
「痛っ」
僕の近くに美希がやってきて、一発殴ってきた。あ、はい。打ち合わせなしにあんな魔法を使ってしまったのは非常に申し訳ないと思うけど、でも結果的になんとかなったからよかったじゃないですか。
「私とそれから咲夜がとっさに防御したからなんとかなったけど少しでも遅かったら咲夜のクラスメイトたち全員死んでいたわよ!」
「は、はい」
「ま、まあまあ柏木くんも僕たちが反応するとわかって不知火を使ったんだしそこまで怒らなくても」
「え? そ、それはそうだけど」
咲夜、助かった。さりげなく近づいてきて美希に一言言ってくれたおかげで少しだけ意識がそれてくれた。それを見逃すわけにはいかない。
「それで、美希。作戦の続きをしよう。どれだけの数運べる?」
「はぁ……そうね。ひとまず女の子を優先しようかしら。みんな、私たちはそこにいる咲夜の知り合い。あなたたちを助けに来たわ」
「そ、そうですか。ありがとうございます」
咲夜のクラスメイトの中から一人美希に話しかけてきた。
「あれが九嶋和貴子さん。僕たちの委員長」
「なるほど」
咲夜が教えてくれる。そして九嶋さんは美希に言葉を重ねる。
「それで、その、私たちはどうすればいいのですか?」
「ああ、リラックスしてて、女子たちはいまから私たちが安全な場所に運ぶわ。男子たちはそこのバカとアホについて行って。こんなんだけど実力は折り紙つきだから」
「は? なんで女子だけ」
「私の魔力が持たないの……本当なら全員を運びたいんだけど」
「わかりました。私は残るから深田くんが代わりに先に行って」
「え? いいのか。ラッキー」
九嶋さんがそう言うと深田くんは嬉しそうに両手をあげる。しかしそうすると、他の男子たちが文句を言いはじめる。……なんだろう。見ていてとてもイライラしてきた。
『ダメよ。咲夜たちはいままで悲惨な目にあってきて、楽な手段があるならそっちに行きたいにきまっているのだから』
それは、そうか。僕たちの尺度でみてはいけない。それにきっと、僕も同じ状況だったんならば他の男子たちと同じようにブーイングをしていたに違いないから。
『ま、さすがにけーたちに負担をかけたくないので、私が力を貸してあげるわ。美希』
「え?」
『いまなら圭の魔力も加わるから……きっと全員飛ばせるはずよ。やってみなさい』
「う、うん『堕天使の誘い』」
美希が魔法を唱えた瞬間、僕、水希、咲夜以外の人が全員消えていった。美希の魔法が発動したのだろう。……でも、ちょっと待って。
「こんなことができるのなら最初から提案してよ!」
『え? いま思い出したのよ』
「まあまあ……それよりもあっちを考えようよ」
「……はい」
「だな」
イフに色々と文句を言いたかったけど、一旦我慢する。そう、地上への出口らへんに獣人の警護兵たちが少しずつ集まってきたからだ。




