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再召喚された勇者達は世界を滅ぼす  作者: 歩海
第1章 再召喚そして再集合
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「ピスケル」

「ええ、そこにいるレオリアと同じ、魔王様に仕える騎士の一人よ」

「マジかよ」

『これは少し予想外だったわね』


 イフの言う通りだよ。幹部クラスが一人ではなく二人いるなんて。まあ、それで窮地に陥るということではないけど、油断はできない。


「『焔』」

「ピスケル! お前水属性だろ。なんとかしろ」

「わかってるわよ。さっきのあんたたちの試合を見ていたからわかるわ」

「ならいい『風』」


 レオリアの魔法が僕に向かって飛んでくる。さて、同じ風属性だし美希に相手をお願いしたいのだけど……っていないし。あいつどこに行った?


『圭、来るわよ』

「わかってる『焔』」


 風に対して焔を合わせる。これで、全ての攻撃を受けきることができた。


「ピスケル!」

「はいはい『水龍』」


 水の塊が僕に向かって襲ってきて、焔を消していく。焔は全て消えたけれど、同時に水の塊も全て蒸発させることに成功した。


「なんで……」

「『不知火』」


 観客たちが避難しているので、僕としても本気で戦うことができる。具体的に言えばこの辺りを焼け野原にすることができるってわけだ。


『いや、それダメでしょ』

「うぐっ、炎に焼かれる」

「おい、しっかりしろって」

「僕から視線を逸らしていいの?」


 不知火に気を取られていたのでその隙にレオリアの近くまで接近して、そしてそのまま思いっきり殴り飛ばす。さっきも一発入れていたし、これで2発目。かなり効いていると思うのだけど。


「大変、『水の癒し』」

「回復魔法を使えるのか」


 だとするとちょっと面倒だな。回復魔法の使い手がいるとどうしても長期戦になってしまう。普通なら回復魔法を使うやつから狙うのが定石ではあるけど属性の相性は最悪。倒すことができるけれど時間は確実にかかってしまうだろうな。


『あんたも回復魔法覚える?』

「必要なかったからね。それもいいかも」


 全員が使えれば互いにフォローしあうことができるから理想的ではあるけど、それでもパーティーに一人いれば十分だからね。それに、最悪なくても問題ない。


「傷を負わずに倒せばいいだけの話だからね」

「てめぇ。俺たちを相手に無傷で済むと思っているのか。舐められたものだな」

「別に、舐めてるわけじゃないよ」


 あたりを見渡す。避難は充分に済んでいるけど多分まだ近くにいるよね。そこまで窮地に陥っていないからあの魔法を使うのは避けたい。


「『焔』」

「くそっ、『風』」

「逃がさないよ」


 レオリアに接近する。複数人と同時に相手にするときは一人ずつから倒していくのは定石。それに、こうして接近すれば他の仲間は手を出すことが難しくなる。実際、今もピスケルは二の足を踏んでいる。


「『風』いや……『疾走』」

「『焔』」


 レオリアの体が急に高速で動き出す。高速移動の魔法か。こっちも焔を足にまとわりつかせてブースターのようにする。それで、レオリアから話されることなく追走する。


「なぜ俺に追いつくことができる」

「年季の差?」

「お前人間だろうが」

「あはは」


 近寄りながら指を上に上げて焔でレオリアを貫く。貫かれたことでレオリアはバランスを崩し、地面に倒れこむ。


「くそっ」

「レオリア! 『水龍』」

「『焔』」


 ピスケルが放ってくる水の塊を相殺する。相殺するのがやっとというのは少しつらいな。もう少し僕に火力があればいいんだけど。


「! 『焔』」

「は?」


 焔をレオリアの周囲に張り巡らせる。倒れている状態の彼を覆うようにする。そしてその次の瞬間にあたりから大量の水や風の塊が飛んでくる。


「これは」

「魔族はくたばれ!」

「死ねよ」

「面倒なことになったな」


 さっきは突然のことで逃げることしか出来なかったが、冷静になった人たちが戻ってきたみたいだ。そして倒れているレオリアを見ると好機とばかりに狙っている。


「おい、火使いのガキ、なぜ守る」

「僕の相手です。他の人は手を出さないでもらえますか?」

「は? 何言ってんだよ」

「魔族は殺す。俺たちの村を襲ったんだ。死ぬ覚悟ぐらいはできてるだろ……そこの女もだ」

「えぇ……」

「お前はなぜ殺さなかった」

「誰も死なせたくない、からかな」

「甘いやつだ」


 そう言っているけど、ピスケルから僕に対しての敵意はほとんど感じられない。彼女の中で何かしらの心境の変化があったのだろうか。


「さっき見ていたが、アリス様と一緒だよね? それで取り返そうと思ったけど……あなたたちと一緒の方が安心よね」

「気がついていたのか」

「ええ」


 なるほどね。気がついていて、それで見逃してくれていたのか。アリスのことを様づけで呼んでいるあたりアリスに対してかなりの敬意を持っているのだろう。


「ああ、任せとけ。あいつも僕たちが守るから」

「まかせたわよ……この場をどうにかしたら、の話だけど」

「あはは」

「一応聞くけど私があいつらを殺そうとしたら止める?」

「目の届く範囲でしたらね」

「そう……危険な思想だこと」


 そう言ってピスケルは観客たち……村人たちの方に向かっていった。少しだけ見ていると殺してはいないみたいだ。


「おい、ピスケルはなんて」

「別に、この場から逃げたいだけじゃない?」

「ふざけんなよ。全員殺して」

「その前に僕が止めるから」

「ちっ」


 でも、なんとかしないとね。僕らに向かってありとあらゆる魔法が降り注いでいる。僕にもお構いなしに攻撃してくるって……なんていうか、容赦ないというか。今はまだ焔で抑えることができているけどこれもいつか限界がくるのかな?


『まあ、いくら一人一人が弱くてもこの数じゃね〜』

「どれくらいいるんだ?」

『うーん、少なくとも5、60人くらい? 今他のところにも救援が向かっているし』

「了解」


 なら、あんまり時間がかけられないってことか。どうしようかな。


「じゃあまずは、お前から死ねぇ」

「嫌だよ」


 レオリアが僕に向かって突っ込んでくる。それを避けてから返しに一発叩き込む。でも、横に飛ばしたらまずいよね。……いや、ピスケルの方角に飛ばそう。うん、そうしよう。


「何をごちゃごちゃ言っているんだよ」

「えーい」

『あ、方向が逆よ』

「え?」


 僕がレオリアを殴っている間に移動していたみたいで変な方向に飛ばしてしまった。これ、ちょっとまずくね? まあ、あいつは属性が風だから大丈夫だろ。ほら、実際に今も急に体が不自然な動きをしたと思ったらちゃんとピスケルの方に飛んで行ったし。


『いや、それ』

「ごめん、遅くなった」

「悪いな、柏木。一人にしてしまって」

「どこ行っていたんだよ」


 イフが何か言いかけたと思ったら、僕に声をかけてくる存在が二つ。美希と水希だ。いや、本当にどこにいっていたんだよ。


「ごめんね。なんとか取り戻したわよ」

「え?」

「これだよ」


 そう言って水希は手に持っているものを見せる。持っていたのは僕も見覚えがあるものだった。水希の愛刀、『叢雨』。疑っていたわけじゃないけど、やっぱり本物だったのか。


「なるほどね。それを取りに」

「ああ、そして、この状況……アリスに頼まれたから。今回は助けるぞ」

「ん?」

「俺たちに、殺して欲しいんだとさ」

「ああ、そういうこと」


 向こうを見れば、魔族の二人が応戦しているけど、かなり苦しめられているのが見えた。向かってくる魔法の数が多すぎて対処しきれていない。でも、この状況なら水希の能力が活きるだろうね。

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