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再召喚された勇者達は世界を滅ぼす  作者: 歩海
第1章 再召喚そして再集合
23/49

23


「お疲れ様」

「惜しかったですね」


 僕たちは帰ってきた水希を慰める。まあ、正直ちょっとだけ予想していたけど水希は負けてしまった。


「あー、負けちまったぜ」

「意外です。水希様が負けるなんて」

「まあ、水希だしね」

「今回ばかりはその通りだからなんも言えねぇ」


 ユナちゃんは本気で驚いている。でも、僕も美希も正直こうなることはわかっていた。水希も同じみたいで僕のからかいの言葉にも乗ってこない。


「ど、どうしてですか?」

「俺、魔法使えないんだよ」

「え? そんなことが」

「あるんだよ。こいつ筋肉バカだから」


 この世界に最初に召喚された時、能力値を割り振ってくれて言われた時、水希は魔力に一切振らなかった。もともと地球人の僕らは魔力が0なので水希の魔力は0だ。だから魔法が基本的に使えない。『力影』は水希の力と努力の賜物だ。あいつは刀を持って初めて強さを発揮する。ただ、この世界の仕組みとして、属性は与えられてるのだけど。


「戦いに行くのに強い方がいいだろ? そういうわけで『叢雨』が欲しいんだよ」

「そうだったのですね」

「そういうこと。じゃ、私行ってくるね」

「おう、頑張れよ」


 次が美希の試合みたいで美希は試合会場の方に行ってしまった。そしてそれに変わるように僕らに近づいてくる人がいた。確か……美希のクラスメイトで大濱って名前だっけ? その人が僕らに話しかけてきた。


「阿藤と本当に知り合いなんだな」

「あ、お疲れ様」

「ああ、いい試合だったね」

「おぬし、なかなかやるな。水希に勝つなんて」


 アリスが素直に褒めている。その言葉が意味するようにこの大濱という男の子は水希と同じブロックにいてそのブロックの勝者である。最後に水希と一騎打ちになってから、そして水希に勝利した。


「ありがとう。でも、どうして魔法を使ってこなかったんだ? そっちのやつみたいに多彩な魔法でくると予想してたんだけど」

「ま、色々あってね。それに勝負は勝ったものが全てだ。勝者がグダグダ言うのは筋違いだぜ」

『てかけーの魔法って実質1種類しかないでしょ?』

「え?」


 イフの言葉に大濱くんは本気で驚いたようだった。一つの魔法っていうかその効果が焔を自由自在に操るだから多彩なように見えることもあるんだな。


「次は決勝で当たるのかな? その時はよろしくね」

「よろしく……」

「ん?」


 それでも次に当たるのは間違いないわけだし、礼儀として挨拶をしたら大濱くんは何か言いたげな表情をしている。


「お前らが来てから阿藤が悩んでいるんだ。心当たりあるか?」

「あー、勧誘しているからか?」

「それだろうな。俺たちと来るか、ここに残るか悩んでいたし」

「は?」


 僕と水希の言葉を聞いて、大濱くんは少しだけ怒りの表情をした。


「なんでそんなことを言うんだよ」

「え? いや、普通に声かけただけだけど?」

「まあ、美希の心情を考えないで誘ったのは良くないと思うけど」

「美希って……なあ、お前ら阿藤のなんなんだ?」

「え? それ他のクラスメイトにも聞かれたけど、戦友だよ」

「戦友?」


 なんで美希のクラスメイトたちって僕たちの関係性を聞いてくるのだろうか。まあ、向こうからしたら突然現れたよく知らない人たちがクラスメイトと仲よさそうにしているってなれば快くないよね。


「戦友って……」

「なあ、少し黙っておったがおぬしはどうして美希の交友関係を気にするのだ? 美希の自由であろう?」

「それは……そうだけど」

「ん?」

「あー」


 今の反応でなんとなくわかった。どうやらこの大濱くんは美希に対して恋愛的な感情を抱いているのだろう。彼らの関係性がよくわからないからなんとも言えないけど、それでも僕らが言えることがあるとすれば


「悪いけど諦めたほうがいいぞ」

「ああ、お前に魅力がないとは言わないが相手が悪すぎる」

「ちょっ、なんで」

『え? むしろなんでわからないと思っていたの?』

「イフ、トドメ刺すのやめて」

「お前、いくら人間じゃないからって言っていいことと悪いことがあるぞ」


 イフリートの言葉に大濱くんはうなだれてしまう。さすがに可哀想になったので、僕と水希が慌ててフォローに回る。


「話を戻すけど、無理だよ。あいつ彼氏いるし」

「は?」

「お前とそんなに過ごしていないからお前の魅力とかわからないけど、あいつは相当だから超えるのは無理じゃね?」

「う、嘘だろ」


 僕たちの言葉に大濱くんはちょっとだけ絶望的な表情をしている。あ、うん。好きだった女の子に彼氏がいたっていうのでは相当辛いよね。僕はまだその経験がないけどきっとかなり精神的に来るのだろうな。……好きな子に振られた経験ならあるけど。


『美希って咲夜とまだ続いてるの?』

「続いているんじゃない? 別れたって話聞かないし」

『本当。いやぁ、続いているのなら嬉しいわね』

「だよな」

「咲夜って奴が阿藤の彼氏なのか?」

「そうだよ」


 そっか。イフもあいつらが結ばれた時にいたから知っているんだっけな。……個人的には触れられて欲しくない内容になるから僕としてはここでやめておいて欲しいのだけど。


『そういえば、けーも普通に美希と話せるのね。あんた振られてたでしょ?』

「え?」

「おい、イフ! やっぱり言いやがったな」

『あらごめんなさい』

「確信犯だろ!」


 その笑顔を見たら間違いなくわかりきっている顔だよな。確かに僕は以前の旅で美希のことが好きだった。まあ、あの時に女子が美希だけっていうのもあるし、好きになっても仕方がないよねって開き直る。


「はぁ、それは過去の話。今は普通に話せるって」

「まあ、柏木も素直に咲夜を祝福していたもんな」

『つまらないの』

「うるせぇ!」

「そうなのですね」


 恋愛的な内容まで面白さを追求するとかお前本当に暇なんだな。というか、どうしてそこでユナちゃんが反応しているんだ? そして僕たちの話を聞いた大濱くんは少しだけ肩を震わせた後。


「えっと、お前は今は阿藤のことをなんとも思っていないんだな?」

「信頼できる良き友とは思ってるよ」

「そっか……なあ、その咲夜って奴はどんな奴だ?」

「え?」


 まあ、そこは気になるよね。相手がどんな人かなんて。これに関して大濱くんと話していてからずっと思っていたことがある。


「「とりあえずお前とは正反対だな」」

「え?」


 咲夜ってどちらかといえば根暗な感じだからな。大濱くんは見た感じクラスの中でも人気者的なコミュニケーション能力が高い感じがするし。まあ、咲夜もコミュニケーション能力が低いのかと言われたらそうでもないのだけど、ただ引っ込み思案なのが災いして煙たげられているってところだろうし。


「なぜ、阿藤はそんな奴を」

「まあ、いいところもあるんだよ」

「あいつがいないと立ちいかなかったこともあったからな」


 そんなことを簡易的に話したら当然出てくる質問を聞く。でも、あいつがいたから僕たちは旅を続けることができた。それは紛れもない事実だしね。


「まあ、美希が選んだんだ。あいつはそういう奴だよ」

「……」

「事実が受け入れられないのもわかるけど……まあ、どんまい」


 僕たちはなんていえばいいのかわからないけど、とりあえず当たり障りのない言葉だけを大濱くんにかける。そして、大濱くんは他のクラスメイトに呼ばれたのかどこかに行ってしまった。


『幼馴染みが恋人って割と定番なんだけどね』

「ん?」

「へえ、そうだったのか」


 まあ、もしかしたら咲夜の代わりにあいつが召喚されていたらあいつが美希と付き合っていたのだろか。イフリートじゃないけれどこういうことがあるから、面白いんだろうな。


「お、お姉ちゃんの試合も終わったようじゃな」


 アリスの言葉を聞いて、僕たちはステージの方に意識を向く。向こうから、美希がやってきていた。

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