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「ここが会場か」
「そうよ。あっちが受付。さっさと自分のグループを確認してきて」
美希と出会ってから三日後。僕たちは水希の愛刀が優勝商品として出されている大会の会場にやってきていた。そして美希の案内で受付を済ましているのだけど、
「なんか美希機嫌悪くない?」
「柏木……お前デリカシーないな」
「え?」
「あんたら二人ともよ! なんで三日しか経ってないのに面倒ごとを引き起こすのよ」
美希の様子がおかしかったので声をかけたら怒られてしまった。でも、正直これに関しては何も心当たりがない。強いて言うのなら魔物討伐の手伝いをしたぐらいだけど。
「それが問題なのよ。大分話題になっているわよ。最近山にいる魔物はいつの間にか討伐されているとか目の前で急に倒れたとか……あんたら本当何してるのよ」
「そんなこと言われても」
「俺たちは偽善者だから」
「はいはい。それじゃあ用事が済んだらここから出て行ってね」
『出て行くけどその時に美希の答えを聞かせてね』
「……わかってるわ」
美希がこれからどうするのかっていう話だよな。本音を言えばついてきてほしいけど、さすがにそれを決めるのは美希自身だ。だから何も言わないで受付のところに進んでいく。
「えっと、柏木圭さんと斉藤水希さんね……柏木さんがAグループで斉藤さんがBグループね」
「わかりました」
「なんだ、柏木とは別か」
「よかったね。僕に負けなくて」
「うるせぇ」
「二人とも静かに。これからルール説明があるんだから」
「「はい」」
それに、受付の前で騒ぐのも迷惑だからよくないよね。僕たちは素早く移動して、他の大会参加者のところに行く。みたところ100人くらいかな? それとももう少しいるのだろうか。
「それでは、ルール説明を行いたいと思います」
「あ、始まった」
向こうにステージというか、そんなところが用意されており、そこに中年の男性が登って声を張り上げた。いや、風魔法が使われているのか? 声を届かせるのは空気だから。
『いや、単純に大声をあげているだけね』
「そうなのか」
「静かに」
「すみません」
美希に怒られてしまった。魔法を何も使っていないのであれば僕が喋ることで聞こえなくなる可能性があるからね。僕としてもルール違反で失格とかにはなりたくないからね。
「全選手の受付が終了いたしました。各グループ40名によるバトルロワイヤルを行います。そして試合についてですが、原則武器の使用は禁止。事前申請がある者のみ審査の元許可します。魔法の使用は問題ありません。敗北の条件は、気絶するか指定された範囲外へ出てしまうことです。当然のことですが、急所への攻撃、および殺しは禁じ手です」
まあ、そこまでおかしなルールじゃないな。そして男性は続けて言う。
「そして、優勝商品ですが、50年ほど前に魔王を討伐した英雄が所持していたと言われるこの刀です。以上になります。質問がある方はお願いします」
「あ、すみません」
「はい、どうぞ」
「圭?」
質問があるので手を挙げる。こういうのはきちんと確認しておかないと後々面倒だからね。だから僕は手をあげて、質問する。
「範囲外へ出るというのは、空中でもダメですか? それとも地に足がついたらダメなのでしょうか?」
「えっと?」
「つまり空中で立て直して飛んだとしたらその判定はどうなるのですか?」
僕の質問の仕方が悪いのか、男性はかなり困惑している。いや、男性だけではない。周りの人たちも僕の質問の意味がよくわかっていないみたいだ。
「あー、圭。これは一度飛んだほうがいいんじゃない?」
「そうか? 『焔』」
焔を発生させて、そのまま足に集める。そのまま勢いよく地面を踏みならして飛び上がる。空中に行ったらそれからはちょっとだけ焔の量を多くしてあたりの空気を熱することで上昇気流を作り出し空中に居座る。
「こ、これは」
「あれは、魔法?」
「?」
あたりでざわめきが起こる。いや、なんで? 同じ魔法を美希も使えることができるし……ただ、僕の場合は細かな移動はできないんだけどね。美希の属性が風というだけあってこの手の魔法には雲泥の差がある。
「それは、あなたの魔法ですか?」
「そうですね」
厳密に言えば、この魔法だけの固有な名前はないのだけどね。でもそんなことを説明する必要はないと思うので僕は静かに肯定する。
「わかりました……風属性で似たような魔法があることは確認しています。そこまで長時間空中に漂うのは見たことがありませんが。いいでしょう。その魔法の使用を許可します。そして失格判定になるのは地に足が着いてからということにします」
「は、はぁ」
これってつまり飛行魔法を使える人がかなり少ないっていうことなのか? そりゃ僕だって美希と違って長時間は無理だけどそれでも発想があればいけると思ったんだがな。
『まあ、魔法のメソッドが作られて、型通りの魔法しか受け継がれなくなってオリジナルが減ったらこうなるわよ』
「そんなものか」
「他に質問はないでしょうか? では、ないならこれにてルール説明を終了とさせていただきます」
僕以外に質問をする人がいなかったのでこれで、説明が終わった。なんとなく注目を浴びたような気がしないでもないけどまああの場面で質問したらそうなるよね。
「続きまして、Aグループの試合を行いたいと思います。Aグループの出場者はこの会場に向かってください」
「あ、柏木呼ばれたぞ」
「おっけー。ちょっと行ってくる」
水希や美希に声をかけて僕は進んでいった。質問してからそこまで時間が経っていなかったからか、僕のことを指差して話している声がちらほらと聞こえてくる。大勢の前で自分の魔法を見せるのはよくなかったかな? いや、わかったところで本質は簡単だし別にいいか。
人混みを避けていくと。ステージというか、ちょっとだけ地面から盛り上がったところが用意されていた。あれがおそらく会場なのだろうな。そして僕はそこに登っていく。
「おう、お前すげえ魔法を使うんだな」
「あ、どうも」
ふと、いきなり声をかけられたのでその方を向いたら、筋肉隆々な男性が僕に話しかけてきた。
「あれを見せて観客を味方につけたのだろうが……悪いが刀は俺がもらうぜ」
「そうですか」
「おいおい、なんだよその態度は」
「『叢雨』の名前を知らない人に負ける気はないだけです」
さっきもそうだったけど、刀の名前までは伝わっていないみたいだ。でも、それならよく水希が使っていたってわかったよね。そして、筋肉の男性も僕が出した名前を聞いてもピンと来ていないみたいだ。
「むらさめ? なんだそりゃ……まあ、あの刀はなんかかなり強いみたいだけどよく知らないんだよな」
「ああ、あれだろ? なんかとんでもなく硬いけど何が強いのかよくわからないっていう」
「……」
「妖刀とかは他にあるからな。どうせ国のお偉いさんが箔をつけるためにでっち上げているだけだろ」
僕と筋肉の男性に割り込むように別の男性が入り込んできた。彼が言うように偽物なのか? いや、美希が確認しているのなら間違いないし、それに嘘だとしたらイフたちが何か反応してくれるはずだし。
「皆様、準備はよろしいでしょうか?」
そんなことを思っていたら、僕たちに声をかけられる。どうやら、試合が始まるみたいだ。
「では、只今より、Aグループの試合を開始します」
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