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再召喚された勇者達は世界を滅ぼす  作者: 歩海
第1章 再召喚そして再集合
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「ここ、どこ?」

『オリスピアよ。少なくとも地球じゃないでしょ?』

「そういうことを聞きたいんじゃないんだよね!」


 アリスと再会? してからしばらくして。とりあえず行く先々で魔物を討伐しては人々を助け、代わりに食料や情報などをもらいながら、ゆっくりと人の国へと進んでいたけれど、それで万事うまくいくなんて都合のいいことが起きるはずがなく、僕たちは迷ってしまった。


「なんで精霊が二人いて、迷うんだよ」

「お前らもう少し協力的になってくれよ」

『つまらない』

『最近アリスとずっといたから鈍ってるのよねー』

「シルフィはともかくイフはなんて言い草だよ。お前わかってんじゃねえか」


 相変わらずのマイペースな精霊たちを見て、さすがに項垂れてしまう。てか、イフ。お前シルフィの半分でもいいから契約主への対応を考えて欲しいんだけど。


『何か言った?』

「言ってません」

「お二人は本当に仲いいのですね」

「だよな。あ、あの山って人の国の国境じゃないか?」

「おお、そうだな。ではケイよ。ゆくぞ」

「わかったよ」


 そのままアリスと並んで歩いていく。なんだかんだで彼女と一緒にいることが多いんだよね。同じ精霊使いということもあるし、僕としても話しやすい。


「む? 向こうにおるのは人間じゃないか?」

「え?」


 そして、アリスが目の前を見て、不思議そうにした。その言葉に反応して見てみたら、確かに数人、こっちに向かってきているのが見えた。あ、これってもしかして


「国境警備隊的なやつ?」

「あーありえそう」

「ど、どうしますか?」


 ユナちゃんが不安そうに聞いてくる。でも、それに対しての答えなんてあらかじめ決まっている。僕も、水希もそれからアリスもすぐに答える。


「全部倒す」

「気絶させる」

「殺す」


 ちょっと待て。今一人やばいやつが居たんだけど。僕はその発言をしたアリスの方を見る。アリスはいたずらが成功したかのような顔をして、


「冗談だ。妾とて無駄に人との軋轢を生みたいとは考えておらぬ……耐えるのは我らだけで良い」

「アリスさん」

「エルフの子よ。お主が何を考えてこの旅を共にしているかは知らぬ。だが、決してここで経験したことを口外してはならぬ」

「アリスって見た目以上に達観してるよな?」

「50年前もそうだったよ……多分父親の影響だと思う」


 急にシリアスな展開になるのはやめてもらえないかな。アリスとユナちゃんの中はそこまで悪くはない。魔族とエルフで少し心配したんだけど、それは杞憂だったみたいだ。ただ、アリスの精神年齢がかなり高いと思う。……自分で言っていて思ったんだけど、僕よりも長い期間生きているんだよね。アリスは若干気まずくなった空気を直すかのように、続けて言う。


「向こうの出方次第ではあるが……まあ、友好的には見えぬな」

「だよね。ユナちゃんと水希は下がってて」

「かしこまりました」

「ユナ、こっち」


 二人を下がらせてから僕とアリスで前に出る。僕の目でも何人いるのかはっきりと見ることができる距離まで近づいてきていた。その数は4人。男二人に女二人。あ、僕たちと人数的には同じなのか。そして、女の子の一人が僕たちに向かって宣言する。


「止まりなさい! ここから先は人の国です。何故入ろうとしているのですか?」

「あー、武器を探しているんです。『叢雨』って言うのですけど」

「『叢雨』? 確か大会の優勝商品として出されていたと思うけど……それを手にして何をするつもりですか?」

「え? 大会の優勝商品!?」

「まじかよ。ならなんとしても行かないといけないな」


 後ろに避難していたかと思ったら僕たちの会話が聞こえる範囲にいたらしい。急に現れた水希にかなり不信感を抱いたようで、僕たちから一歩引いている。


「あー、あの武器元々俺のでね。だから取り戻したくて探しているんだ」

「嘘はやめてください。あれは50年前に英雄が使っていたとされる名刀という話です。みたところ私たちと同じくらいであるあなたが持ち主だなんてありえません」


 僕たちと同じくらいの見た目でも年齢がかなり違うことってあるんだよね。


「なぜそこで妾を見る」

「……ごめん」


 反射的にアリスの方向を見てしまったのは反省したほうがいいな。アリスのことを見た女の子は少しだけ驚いたように、


「金髪……しかも綺麗な人。あ、向こうの女の子は銀髪で……なんなのこの人たち。こんな人間がいるんだ」

「安佐さん、脱線してるよ」

「安佐?」

「これは……」


 多分だけど彼女たちは人の国に召喚された地球人で間違いないだろう。アリスたちを見ての反応とか呼ばれた名前の日本人感とか。これは、もしかしたらうまいこと潜り抜けることができるかもしれない。


「あー、阿藤美希あとうみきって知らない? いや、高木咲夜たかぎさくやでもいいけど。僕たち、そいつの知り合いなんだ」

「え? 美希ちゃんの?」

「お、これは美希のほうだったみたいだな」


 案の定、名前を出したら反応があった。そして、名前を出したことで彼女たちは僕たちが自分たちと同じ日本人であるということに思い至ったみたいだ。


「あの。もしかして皆さんって」

「あー日本人だな」

「妾はむぐ」

「ん?」

「あー外国人なんです」


 せっかくいい感じで進めそうだったのに、アリスが否定しそうになったので慌てて口をふさぐ。そして、ごまかすわけだけど……なんとか成功したみたいだ。


「そうなんだ。最近は国際交流を積極的に行っている学校も多いもんね」

「なあ、どうする?」

「うーん、わたし的にはある程度信頼してもいいのだけど今は美希ちゃんがいないのが痛いわね。美希ちゃんがいれば確認もできるし、それにそもそも負けないから」

「……」


 なんだろうな。この信頼感。ただ、美希がいないのはこちらとしても痛い。すぐに合流することができたらそれだけでかなり楽になるのにな。ただ、美希も美希でパーティーを組んでいるのはまずいかもしれない。水希とは違って勝手に抜け出すってのがしずらいだろうし。


「やっぱり気絶させて強行突破するか?」

「いや、美希の手がかりがある以上、再会を優先したい」

「それもそうだな。俺たちの目的を話すことができる数少ないやつだし武器だけに固執したくない」

「ま、であるな」

「強行突破ってこの人たち本当に阿藤の知り合いなのか? あいつにこんな野蛮な感じの友人がいるなんて信じられないんだけど」

「大濱くんが信じられないのもわかるけど……あ、もしかしてちょっと前に美希ちゃんが行方不明になっていた時の知り合い?」


 行方不明になっていた時。それはおそらく以前にこの世界にきた時のことだろう。ただ、それを伝えないほうがいいのかな? 美希がこの人たちにどんな風に説明しているかわからないから誤魔化しておこう。


「行方不明って言われても俺たちはあってるんだから行方不明もなにもなくないか?」

「あ、そういえばそうだね」

「僕たちは彼女の知り合いだ。証明しろって言われても無理だけど。知り合いであることは信頼して欲しい」

「……まるで先ほどの気絶とかの発言は信頼するなって言い草だな」

「本当に信頼できる人以外はしないほうがいいよ。この世界では特に」

「……?」


 わからないか。いや、わからないのが正しいんだ。僕たちみたいにこうして斜に構えてしまうのはきっと、同じような経験をしたことがあるものだけ。そしてそれは絶対に経験しないほうがいいと断言できる。僕たちの言葉を聞いた女の子は少しだけ悩んだあと、


「わかったわ。美希ちゃんに合わせて確認をとるからついてきてもらえる?」

「わかっていると思うがおかしな真似はするなよ」

「わかってるよ」


 完全には信頼してくれなかったみたいだが、それでも美希には合わせてくれるみたいだ。まあ、他の国の人間がいたら捉えるようにという指示が出ている可能性もあるけど、その時はその時だしね。

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