アルマの叫び

　
　――「生きろ」

　それが父の最後の言葉だった。

　――「生きて」

　それが母の最後の言葉だった。

　――「生きて、笑っていて」

　それが……私の最後の言葉だった。


　◇　◇　◇　◇　◇


『炎の悪魔』……かつてこの世界には、そう呼ばれ恐れられた猫の女がいた。

　くせのある長い黒髪、赤みの入った暗い灰色の毛を纏った華奢な猫の獣人、東南の民族衣装を模した土色と黒の服……そして、宝石のように輝く金色の瞳

　その女は全てを奪われた。
　悪意ある者達によって私利私欲の為に、理不尽に、暴力をもって奪われた。
　だから、女は決めたのだ……「奴らを全員殺す」と。

〝暴力には暴力を、破壊には破壊を、殺戮には殺戮を、悪には地獄を……〟

　その女はそうやって手足や口を真っ赤な血で濡らし、邪悪な笑みを浮かべて愉快に笑いながら悪魔の如く暴れ回った。その炎で悪しき者達を焼き殺して回ったのだった。

　故に人々は口を揃えてこう言った――「地獄からやって来た〝炎の悪魔〟」だと……。

　この物語は、炎の化身となった女の復讐の物語であり。世界を救う『物語のはじまり』である。