04
現在私は、学校の寮の、自分の部屋でのんびりしている。
王立魔法学院は全員が寮に入る訳だが、ほとんどの生徒が二人部屋だ。
この学院のモットーが学びに身分は関係ない、ということにも起因する。
但し例外もあって、一国の王女や、王子だったりすると、安全性を考慮して一人部屋になる。
その他には、からだが弱いとか幼い子供が一人では心配だとかいう家の子供が、使用人を部屋に置くために一人部屋になったりもする。
まあ、料理は基本的に食堂で食べられるし、洗濯も、学校の事務員さんがやってくれるので、部屋の掃除さえすればあとは勉強に集中できる。
当然私にも、同室者がいるわけで……
「アイリーン!宿題見せて‼」
「今から?!」
この、突然部屋に飛び込んできた人物こそが、同室者で親友のアンナ・バルドーだ。
アンナはバルドー伯爵家の三姉妹の末っ子で、末っ子らしく図々し……ではなく、明るくて活発な性格である。
見た目は鮮やかな赤髪が美しく、瞳の色は薄めの水色。ドレスの色が、選べないと本人は嘆いているが、羨ましい組み合わせの色でちょっと羨ましい。顔も可愛いっていう感じだ。小動物っぽいってこういうことかと、ちょっと納得してしまった。
「アンナさあ、頭はいいのに課題とかギリギリまでやらないよね。あと、人のもの写すのに結構堂々としてるというか……。」
「只でとは誰もいってないよ。私が休暇中に仕入れたとっておきの情報と引き換えにさ!」
アンナは情報通でもある。何処からどうして知ってきたんだと思うような情報を知ってたりする。そんな人と同室ってちょっと不味いんじゃ、と自分でも思うのだがそこは敢えて気にしない。
「とっておきってなんなの?」
「それはね……アイリーンの主席がひっくり返るかもしれませんって情報!」
「はっ?どういうこと?」
結構意外に思う人もいると思うのだが、私は学年主席だ。
それは我が家の特色とも関係してくる。
シュタイナー伯爵家はあまり財力がないが、あるもので有名だ。勿論賄賂じゃない。学問だ。
そのため、うちの図書館はこの国一の規模でシュタイナー家の子供は小さい時から本を読んで育つ。
代々主席をキープというわけではなく、確かエドとリドも主席ではなかったような……
「なんと2学期からうちらのクラスに新しい生徒が編入してくるの。それが超天才児って有名な人でね、なんでもまだ11歳とか。」
「11歳って4年生は無理だよ。だって入学が11歳からなんだよ。」
「いや、それが、うちの学校には飛び級制度があるの知ってる?」
「!!!」
知ってるもなにも、うちの学校は勉強が、結構キツイ。飛び級制度があったことは知らなかったがあったとしてもしようなんて誰も思わないだろう。
「まさか入学して、3カ月程度で飛び級して4年に上がってきたの?!」
「そうらしいね。」
「そりゃ私が学年主席なんて無理だわ。」
「アイリーンは主席に拘りがないからねぇ。」
確かに私は主席に拘っていない。では、なぜ主席がとれるほど勉強しているのかと言われると……
「アンナも知ってるでしょ。うちのお父様が研究しか興味なくて領地経営に向いてないって。」
そう、うちが没落しないためである。私が特に興味を持っているのが商業分野。魔法を学ぶんじゃないの?と思うかも知れないが今最も注目されているのが、魔道具というもので、魔法が使えなくても魔法が使える人と同じようなことが出来るという画期的なものだ。
魔法を学ばないと魔道具のアイデアを練ることが出来ない。
研究はお父様の得意分野だからそれを私が売れるように導くつもりだ。
「確かに。アイリーンのお父様って変人だもんね。」
「まあ、それはいいとして、その編入生が、何者なのか、どうせアンナなら知ってるんでしょ?」
「まあね!」
でも本当にその子何者なの?
「アイリーンは勿論ミュラー公爵家は知ってるよね。」
「そりゃ勿論。なんたって怒らせたらいけない貴族ナンバーワンで、確か今の当主が、財務大臣の超切れ者っていう……まさかっ!」
「そう、そのまさかだよ。編入生の名前はレイモンド・ミュラー。ミュラー公爵家の一人息子で次期当主だよ。」