03
「それではいってきます!」
私達は馬車の前に立ってお父様とリリーにいってきますの挨拶をしている。
「無理しないでいいよ。怪我しなければなんでもいいからね。」
いや、お父様適当過ぎませんか。
「4人ともこのお菓子、良ければ持っていって下さい。飴は日持ちしますから寂しいなった時に食べてリリーのこと、思い出して下さい。」
ああ、リリーはなんて天使なんだろう。
「お父様、リリー、そろそろいってきます。姉上のことは任せて下さい。後の2人は大丈夫そうですから。」
「お父様……僕の研究の成果、楽しみにしてて下さい…」
「お父様、心配しなくてもエドのことは私、リドが責任持って世話するから大丈夫。」
そうそう、リドはお母様に似てるし、いつもエドのことをフォローしてるから、本当に母親っていう感じがする。
そうこうするうちに馬車は出発して、学校に向かい始めた。
「お姉様は学院で気になる人とかいないの?」
「な、なに?急に。」
何を言い出すんだリドは。
「だって昨日急に婚約者探しに本腰入れないと、とか言うから、もしかして既に意中の人がいたりするのかな、って思って。」
「あれは、悪夢だ……」
ヘンリーが何か呟いた。なんだか皆を心配させたみたいだ。
「いや、あれはさ、いつまでも家にいたらお局様的な?嫁をいじめる姑みたいな?とにかくそういう存在になったら皆困るだろうと思って…」
「お姉様優しいから……そんなことしない。」
ありがとう、エド。いや、でも実際どうなんだ。何もせずに親の脛かじる姉って。私なら絶対嫌だけどな。
「姉上がそんなこと気に病む必要ありません。気になるのなら、僕らが結婚しなきゃいい話ですから。」
「いや、それこそ不味いよね!」
思い直してくれ、ヘンリーよ。我が家潰れるぞ。
「確かに跡継ぎなんて、親戚の誰かを引っ張ってくればいいからね。」
「それでも……いいかも。」
「皆今は良いと思えてもあと何年か後には絶対結婚したい相手とかできるよ。」
ここで説得しとこう!私も結婚に憧れあるし。
「それにね、私ももし私と結婚してもいいって人がいたらその人と結婚、考えるよ。」
「そうですか……。」
とりあえず納得してもらえたみたいだ。私はいやいや結婚しようとしてる訳じゃない。でも普通、相手ってどうやって探すんだろう。
それが分からないから憂鬱だ。
私って一生独身タイプの人間かも。
「あ、そろそろ王立騎士学校だよ、ヘンリー。」
本当だ。じゃあそろそろ私達も王立魔法学院に着くのか。
「「「行ってらっしゃい!」」」
「いってきます!」
ヘンリーは笑顔で手を振って降りていった。
ああ、忘れ物がないか不安になってきた。
次回はアイリーンの親友登場です