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レイと二人で昼食を食べに食堂に向かうと、食堂の前に待ち構えていたようにアンナが待っていた。
「そろそろ約束していたランチタイムじゃない?」
約束?何のことだろう。
不思議に思っているとアンナは私に近寄ってきてささやいた。
「ほら、この間レイモンド様に会わせてっていったでしょ?今日でいいよね。」
「ちょっと勝手に……」
私が注意しかけても、聞く耳を持たず、さっさと席を取りに行ってしまった。
まったく強引なんだから。
一応レイに紹介しないと。
「あの子はルームメイトのアンナって言うんだけど、今日は私たちと一緒にお昼ご飯を食べたいみたいで……いいかな?」
「いいぞ。俺もアイリーンの友達と話をしてみたいからな。」
良かった。
あとは二人が仲良くしてくれれば万事解決だ。
でも仲が良かったは良かったで妬けるかもしれない……。
ってそんなこと考えてる場合じゃなーい!
私は急いで二人を追いかけた。
「アイリーンは今日もそんなに食べるのか?」
「うん。食べるのが大好きだから。」
私の目の前には三人前のパスタが置かれている。
私は何より三度の飯が好きなのだ。
「私も最初にこの光景を見たときにはビックリしたわ。小柄な身体の何処にこれだけの食べ物が消えていくんだろうって今でも不思議だわ。レイモンド様はアイリーンのこんな所も好きなんですか?普通の男の人って大食いが嫌いだって言うじゃないですか。」
「他の男の事は知らないが、俺のアイリーンへの愛がそんなことくらいで揺らぐ訳がない。そもそも俺はたくさん食べる人が嫌いじゃない。俺の母も大食いだしな!」
「ええっ、そうなの?今度レイのお母様と一緒にお食事してもいい?私と同じペースで食事をしてくれる人が周りにいないから……。」
「なに?!ちょっと待ってくれ。俺もたくさん食べられるようになるから俺と一緒に食事に行ってくれ。」
「そんなに無理しなくていいよ?私はレイがたくさん食べる人じゃなくても好き……じゃなかった、嫌いじゃないから!」
「今まさに好きって言いかけて……」
「そ、そんなこと言ってないよ!」
危ない。うっかり口が滑ってしまった。
「あなたたち、結局のろけなの?こんなの毎日聞かされてるクラスの子が可哀想よ……。」
アンナはため息までついている。
全然のろけてないのに。
そもそものろけ話ばかりしてくるのはアンナの方じゃない。
たくさん食べたら疲労が取れた気がする。
これで午後からの授業はしっかり受けられそう。
私が着々と食べている間にも、アンナとレイは何やら話し込んでいた。
一体何を話していたのか、話終えたレイはすごく嬉しそうな顔をしていた。
「何が嬉しいの?」
何となく面白くなくて、気付けばレイにそう尋ねていた。
「ちょっとー。何々?嫉妬ですか?」
「嫉妬?!俺に嫉妬してくれたのか!」
「違うからね?ただ気になっただけで……。」
相変わらずアンナはいつもここぞという時に茶化してくる。
そしてレイは何故かさっきよりも更に嬉しそうな顔をしている。
「それが気になっている時点で既に嫉妬よ。認めなさい。」
「ちょっと、なに諭そうとしてるの?私は違うって言ってるじゃない!」
「ハイハーイ。わかりましたよ。」
うっ、その言い方は絶対に信じていない!
「おっ、そろそろ授業が始まるぞ。はいっ。」
ん?レイが私に手を差し出してきた。
「これって……?」
「エスコートだよ。ほら、教室まで行くぞ!」
「う、うん……。」
うそっ、何でレイが知ってるの?
密かに、私がエスコートされることに憧れてるって……。
ふと隣のアンナを見るとにやっとしてこちらにウインクをよこした。
私の秘密をばらしたのはお前か~~!
でもエスコート事態が嫌な訳じゃない。
おずおずとレイの手を取ると、その手がしっかりと握り返してくれた。
この出来事のせいか、この後の授業はソワソワして、なんだか落ち着かない気分だった。




