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朝起きて、腕のあちこちが痛くてだるかった。
どうやら昨日のお茶会の疲労が一日ではとれなかったようだ。
今日の授業が全部座学でよかった。
これでまた、ケルピーとかだったら死んでるところだ。
「アンナ~。もう無理。疲れた。」
「だらしがないわねえ。あれくらいの社交で疲れるなんて。普段から引きこもっているからよ!」
そんなに言わなくても。
私だって情けないとは思いますよ。
でもつらいものはつらいのだ。
「今日は早めに帰って早めに寝なさい。帰ってきたら美味しいクッキーあげるから!」
「やったー!」
私は疲れているときにハイになる性格なのだ。
余計に疲れそうだが、元々疲れているのだからあまり違いがわからない。
重い足を引きずって教室へ向かった。
頬に何か違和感を感じて目を開けた。
あれ?ここはどこだろう。そして今は何時?
「起きたのか、アイリーン。」
「元々起きてます!」
うそです。多分寝てたけど……。
誰の声だろう?
最近よく聞く声な気がする。
「あれ?レイだ。」
「やっと気づいたか」
「なんでレイが私の頬を触ってるの?」
「それはアイリーンの寝顔があまりにも可愛くて………じゃなかった、アイリーンを起こそうと思ってつついていただけだ!」
「起こしてくれたの?ありがとう。」
「新婚の夫婦のやり取りみたいですごくいい!ああ、早くアイリーンの夫になりたい!」
「そんな風に言われると照れくさいよ。」
「おいお前ら、今が授業中だってことを忘れたわけじゃないよな。」
あれ?第三者の声が……。
この声ってメチャクチャ怖いと有名な通称グリズリー先生の声じゃない?
ってことは私、授業中に寝ちゃってたってこと?
まずい。怒られる!
「まあ、今回はいつもの真面目な態度に免じて雑用で許してやるが次はないぞ?」
「はい。」
「ちょっと待って!いくら先生とはいえ、放課後に女子生徒と二人きりは、だめだ。先生の好きなニャンちゃんの……」
「待て!それ以上は言うな!わかった。シュタイナーの雑用はなくすから。それでいいだろ?それにしてもお前は恐ろしいやつだな。教師のことまで詳しいなんて。」
「俺を舐めないほうがぞ。俺はこの学校の殆どのやつの弱味くらい握れるからな。」
よく分からないけど、どうやら先生はただで私を許してくれるらしい。
「おお、チャイムがなった。皆各自解散!」
先生はそう言うや否やそそくさと出ていってしまった。
「レイはさっき先生になんて言おうとしたの?」
「ああ、あれか。あの先生ニャンちゃんっていうマスコットキャラクターが好きで、そのグッズを集めてるんだ。」
「ええ?!あんな強面で?」
「そうだ。本人は隠したがってるみたいだけどな。」
「そうだったんだ……。」
そんなことで脅されるなんて先生もお気の毒に。
「そこまでしなくても、雑用くらいやっても良かったのに。」
「ダメだ。アイリーンが他の男と二人きりの空間にいるなんて耐えられない。アイリーンに好きかもと言ってもらえた今、俺に不可能はない!」
「そうは言っても……。それにあの事は忘れて!思い出すと恥ずかしいから!」
そう言ってレイを見ると急に真面目な顔になった。
「いや、忘れない。あの時俺は天にも昇る気持ちだったんだ。もう一度、今度ははっきり好きだと言ってもらうまで俺は頑張るからな。」
レイのそのまっすぐな気持ちに私は目を反らすことが出来なかった。




