02
「姉上、まさか結婚して家を出て行くおつもりですか?」
「そりゃそうだよ。」
貴族の結婚というのは、そんなにすぐには決まらない。平民で言うところのお付き合いが婚約に当たる。違うのは婚約があまり覆らないというところぐらいか。だから婚約は慎重に行われる。
だいたい15歳から上位の方の貴族のの婚約が始まり私たちのようなどうってことない貴族は16歳から始まる。男の場合はそこまで焦ることがないが女の場合には出産も考えないといけないのでその年齢が目安となるのだが……
「まさか君たち、私が行き遅れるとか思ってた?」
「全然そんなことありません。姉上はずっとうちにいていいんですよ。いや、むしろお嫁になんていかなくていい!」
「姉上が結婚……寂しいです。」
「うちが一番安全だよ?」
うん、結婚やめようかな。こんな可愛い子たちを置いていくなんて無理だ!
「そんなこと言われたら、結婚出来ない!やっぱ婚約者探すの、無理しなくていいや。」
我ながら結構単純なやつである。
「それがいい!家族一緒が一番です!」
「ヘンリーは私に甘すぎるよー」
そろそろリリーのご飯ができる頃だ。
リリーは次女で私の妹であり末っ子だ。本を読むことが大好きで、いつも家の図書館にいる。
9歳にして女子力が高くて、家族が全員揃う時にはご飯も自分で作って振舞ってくれるのだ。見た目はヘンリーにそっくりで茶色いふわふわした髪に緑色の瞳。まだ10歳なのにしっかり者だ。
「そろそろ夕食の時間じゃない?」
「リーちゃんってほんとにご飯食べるの好きだよね!」
リド、呆れてるのかな。
名誉の為に、いっておくが私は長女なのでしっかり者だ!
広間に行くと使用人の皆が料理を並べているところだった。
リリーの料理は美味しいだけでなく、ちょっと変わっている。なぜかというと全てリリーのオリジナルのレシピで作っているからだ。異国の本を読み、その本に出てくる料理を参考にしているらしい。
「わぁ、今日は海鮮なんだね!この魚1匹丸々使ってるの、斬新だねー。」
「このお料理は東洋の国の文献に出てきて……王妃様が所望したっていうもの。」
さすがリリー。そんなもの再現したのか。
「あれ?お父様は?」
「多分研究室。」
我らがお父様は研究一筋のかなりの変わり者である。基本的に服装や髪型に無頓着。パーティーのために正装した時にこんなイケメンが父親だったのかと驚いた。結構童顔だった。
このお父様、若い頃からイケメンだったのに、変わり者すぎて結婚してくれる人がお母様しかいなかったとか。流石お母様。
そんなお母様はリリーが生まれて割とすぐに亡くなってしまった。とても綺麗で儚げな人だった。
お父様を呼んできて夕飯を食べ始めるとすぐに皆んな食べ終えてしまった。
明日は早いからすぐ寝よう。
宿題のレポート終わってるかなーと思いながらベッドに入るといつの間にか眠っていた。