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「「「「アルバート殿下?!」」」」
うわー。本人来ちゃったよ。
私は笑ってませんからね、怒らないで下さいね。
心で祈りながら殿下の言葉を待っていると、やっと殿下が口を開いた。
「なんだか僕がアイリーンさんに振られるみたいな話が聞こえてきたんだけど、どういうことかな?」
殿下、目が笑ってません。しかも話がバッチリ聞こえていたようだ。
「本当のことだろ?これ以上アイリーンに付きまとっていると後から要らぬ恥を掻くぞ?ストーカー王子とかな!」
「いくら可愛い従弟でも、許せることと許せないことがあるよ?それにストーカーは一体どちらだろうね。こっそり物陰から何年間も見続けるなん……」
「うわあっ。それ以上言うな!ア、アイリーン、今のは違うんだ。俺は決してストーカーなどしてないんだ……。」
周りのクラスメイトはおろおろしていて誰もこの高貴な人たちの醜い言い争いを止めることができない。
なんかこれ以上この言い争いを聞いていたら恐ろしい新事実とか発覚しそうで怖いんですけど……。
「まあまあ、取り敢えずお二方ともストーカーではないということでよろしいですよね?っていうかそうだったら困るし。」
「起こらないでくれ。俺はただ、アイリーンに変な虫が付いたら困るからとだな。」
「ちょっとレイは黙ってて。これ以上しゃべると墓穴掘るよ?」
そう言うとはっとしたふうにレイは口に手を当てた。
その仕草が可愛くてついつい頬が緩んでしまう。
「それでアルバート様、何かご用があっていらしたのでは?」
私が気をとり直してそう尋ねると、殿下はニヤリと笑った。
早くも嫌な予感がするのですが。
「実はね、今度の週末に親しい者たちを呼んだお茶会があってね。そのお茶会に君を招待したいんだ。」
「それはダメです‼」
「それは何故?」
その空気!既に断れる空気じゃない!
「私には社交性というものが著しく欠落しているからです。親しい者たちって、王族の方々とか上位貴族の方々とかですよね。そんなのムリですよ。」
「大丈夫。今回のお茶会はね、婚約者がいない僕に痺れを切らした母上が僕のために用意した席なんだ。」
「いや、それは最早お見合いではないですか‼私が行ったら睨まれちゃいますよ。」
「そんないかがわしい茶会にアイリーンを行かせる訳にはいかない。それにアイリーンがやな感じの女にいちゃもんつけられたらと思うと行かせられない。」
よく言ってくれた!私は絶対にお茶会になんか行かないもんね。
「でも既に母上が招待状を送ってしまったんだよね。」
なんと、王妃様が?!それ、百パーセント断れないやつじゃない!
「……是非伺わせて頂きます。」
「物わかりが良くて助かるよ。」
これから最低限のドレスを揃えなくちゃいけないのか。家は貧乏なのに……。
お父様、ごめんなさい!新しい実験器具は諦めて下さい!
「アイリーン、本当に行くのか?」
「まあ、招待を受けた以上は行かないとね。」
暫くレイは黙ったままだったが、何か決心した顔で私の肩を掴んだ。
「わかった。こうなっては俺にも止められない。助っ人を用意するから、いびられる心配はない。あと一応アイリーンが浮気してアルバートの婚約者にならないようにっていう下心もあって助っ人を用意する訳だが……。ドレスは俺が用意する。それからお茶会に行くことは絶対にヘンリーに言っておけ!」
「わかったけどドレスはいいの?」
「俺の髪の色と同じだ。こんなこともあろうかと、既になん着も作ってあって……。違うからな!ストーカーしてないからな!」
「ハイハイ、その事はもういいです。」
「信じてないだろー。」
本当にレイには感謝しなくちゃ。いつも何かをしてもらってばかりで。
レイが困ったときには絶対に私が助けようと心に誓った。




