18 レイモンドとヘンリーの密約
引き続きレイモンド目線のお話です。
「…………。」
あまりの残酷な事実に俺は言葉が出なかった。
アイリーンは自分を責める。そう考えていっていないだろうと言うことは容易に想像がつく。
それなのに俺が真っ先に思い浮かべたことは、この事をアイリーンが知ったらきっと俺と、いや、男と結婚なんてしたくなくなるだろうということだった。
自分の身勝手さに笑いがこみ上げる。
「あの男は俺の母に毒を盛ったんだ。さっさと婚約させろという脅しを込めてね。それからだよ、父が毒の研究を始めたのは。
あの時の父は今にもあの男を殺さんばかりだった。ただ自分が背負っている伯爵がそうさせなかっただけ。
こちらが何かしようとしても、もっとひどい目に合わされるだけだしね。あの男の目的はね、シュタイナー伯爵家を金銭的に追い詰めて、姉上を差し出させることなんだよ。僕は10歳の時にこの事実を知ってしまった。あとは、僕の一存でリドにも知らせてある。」
「俺はそんなことには絶対させない。アイリーンに手を出したら地獄を見せてやる。」
アイリーンのためなら俺は何だってできる。たとえ人殺しでも。
きっと俺と公爵はよく似ている。
ただ違う点は、奴はアイリーンを悲しませることをしてしまったということだ。
俺なら絶対にしない。
「そう。その目だよ。僕は姉上のためならなんでもすると誓えるくらいの強い想いを持った人を探していたんだ。姉上が変な男に引っ掛かったら将来公爵に引き離されて悲しむのは姉上だ……。だから僕とリドは姉上のファンクラブを作って他の男を牽制していたんだ。」
「なるほどな。あの変な名前のサークルの意味は分かった。一体何を総合的に製作しているのかと思っていたが……。」
「姉上の明るい未来を製作してるんだよ。」
「それは一理あるな!」
こうして俺は強敵とも思えた、アイリーンの弟と共同戦線を張ることになったのだった。
やはり、アイリーンと同級生になるために飛び級しておいて良かった。思わぬところで役立ち、予定より大分早く卒業できそうだ。
あとは俺が卒業するまで公爵が動かないことを願うばかりだ。
俺は部屋に帰るとまず、父に手紙を書くことにした。
卒業後すぐに公爵位を継ぎたいと。




