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ある夜会の時、俺は疲れきっていた。
下心丸出しの大人を相手にして、そのあとは更にその大人に言われて俺に気に入られようとする子供たちに囲まれて。
もういい加減うんざりだと思っていたときにこんな考えが浮かんだ。
相手は子供なんだから失礼な態度をとれば怒って俺など見向きもしなくなるだろうと。
早速実行に移すことにした。
「俺はお前たちのような不細工な奴等とは仲良くしないんだ。」
そう言った瞬間、場の空気は凍った。
男子は憮然とした顔をしていて、逆に女子はショックを受けたような顔をしている。中には泣き出すやつまでいた。
どうしたものかと困っていると、後ろから女の声がした。
「女の子は誰だってお姫様に憧れていて、男の子はそんな女の子を守れる男に憧れているとガリバー氏の著書に書いてあった。だから、いくら恥ずかしくても不細工なんて思ってもいないこと、言っちゃダメですよ。男の子は女の子を守ってあげないと。」
振り返るとフワッとした黄色のドレスを着て銀色の髪を結った女がそこに立っていた。10歳くらいに見える。
何より気になったのはその女の容姿だ。ドレスも相まって妖精のようだ。
「お前は?」
「アイリーン・シュタイナーです。」
「お前は俺を責めているのか?」
「そんなことありませんよ。」
その女、アイリーンはそう言って笑った。
思わず俺が見とれているうちに、アイリーンは俺を追い越し、泣いている女子の前に立った。
そして魔法で飴を出してその女子の前に差し出した。
「はい。今よりもっと綺麗になれる飴。元気出して!」
一気に女子の顔が明るくなった。
そして、アイリーンに見とれていた男子の一人がアイリーンに声をかけた。
「あ、あの!一緒にダンスをしませんか?」
俺はなんだか無性に腹が立ってアイリーンの手をとって歩き出した。
バルコニーまできて、手を離すとアイリーンと目が合った。
「俺と一緒じゃ嫌か?」
「そんなことないけど、私に何か?」
「なんで声かけたんだ?」
俺や他のガキのことなんかほっとけばいいのに。
「それは貴方が困っているみたいだったから。」
俺はこの女に悩みを打ち明けてみたいと思った。
「俺はいつもああなんだ。可愛い気がなくて、攻撃的なこと言ってしまう。」
何か言ってくれないかと待っていると、考えながらアイリーンは口を開いた。
「人って仲良くなろうと思った瞬間からもう、仲良くなれるんだと思う。だから心配しないで。」
不思議な気持ちになった。今までは人と仲良くなろうとか思ってなかったのに、急にアイリーンと仲良くする方法が気になり始めた。
「じゃあ俺がアイリーンと仲良くしたいって言ったら仲良くしてくれる?」
「勿論。友達だね❗」
ちょっとモヤモヤする。俺がなりたいのは友達じゃなくて……
「じゃあ結婚して?」
アイリーンは驚いた顔をしている。
「それは多分無理かな。」
「なんでだ?」
「私の家はあんまりお金持ちじゃないし、多分あと何年もしたら貴方も他に好きな人ができると思うから。」
「それなら平気だ。俺の家はお金ならあるし、絶対何年たってもお前のことが好きだ。」
そう俺がきっぱり言うとアイリーンは考え込んで、
「次に会ったとき、まだ私のことが好きで結婚したいと思っていたら、そのときは婚約する。」
よっしゃ!言質は取ったぞ。
浮かれてダンスに誘ったが後悔した。
俺の方が彼女よりも背が低かったからだ。
プロポーズするならせめて彼女よりも1ミリでも高くなってからにしようと密かに心に誓った。
彼女は間近で見ると本物の妖精のようで思わず何処かに飛んでいかないか心配になって手を強く握った。
「そう言えば、婚約するとか話しときながら肝心な名前を聞いてなかった。教えて下さい。」
そう言われて俺も名乗っていなかったことに気がついた。
「レイだ。家名は次に会ったときに教える。」
そう言ってちょっと格好つけて彼女と別れた。
アイリーンと別れた後、急いで両親を探した。
両親にシュタイナー家のアイリーンと結婚してくれると伝えた。
反対されるかと思ったがあっさり賛成された。
「ただし、お前が結婚できる年までお相手を待たせると、彼女は行き遅れになってしまう。だから絶対幸せにするという覚悟を決めてプロポーズしないと相手のご両親は了承しないとおもうし、僕たちも許さないけどいいかい?」
「勿論覚悟はある!」
「なら、頑張りなさい。」
こうして両親の許可も出たところで俺は5歳にしてアイリーンを全力で追いかけることにしたのだった。
ちなみに学校に入ったときにグリードをつけられたのは、暴走してアイリーンを困らせないためだ。
やっと念願の身長がアイリーンを越えたのでプロポーズしたのだが……




