07
「大丈夫かな?」
優しげな殿下の顔を見て戸惑った。
睨んだこと、ばれてない?
もしかして殿下って視力が悪いのかな。もしそうなら、助かった!
そうじゃなかった場合なんて怖すぎる。
「も、勿論大丈夫でございます!寧ろなんだか活力が湧いてきたと言いますか……。いえ、本当にお気になさらず。」
取り敢えずへりくだっておいて、後は逃げるが勝ち、という作戦だ。
ささっと通り過ぎようとして固まった。
「君はケルピーが好きなの?」
んなわけあるか!
殺されそうでびびってんのに。寧ろ敵だわ!
「何故そのようなことをお思いになられたのでしょう?」
「だってケルピーの本を熱心に読んでたでしょう?」
「はい。でも、それは明日に実習を控えているからで……。」
なんだ。気になっていたのはケルピーの事か。
少しほっとしていると、
「ところで僕は何故睨まれたのかなぁ?」
は、話が戻ってしまった!! しかも核心を突く話題に。
どうしよう?誤魔化して逃げるか、本当の事を言って頭のおかしい危険人物と思われるか……
「あ、あの、いつもここで本を読んでいると後ろからおどかしてくる友人がいまして……いい加減しつこいぞという意味を込めて睨んだところ、まさかの人違いだったという……そういう訳です!」
我ながら上手い言い訳だ。よっ、天才!
「それって男?」
「は?」
まずい。殿下を相手に「は?」とか言っちゃった。
うーん、性別設定か。もしかして今、尋問中か?詳しく聞いて相手のボロを出す作戦か!
ここはアンナってことにして……
「女の子です。」
「それは良かった。」
何が良いのかよく分からないがお許し頂けたのか?
「それにしてもケルピーの実習か、懐かしいな。」
「まさか殿下の時からあるんですか?この実習危険度高くありません?だってケルピーの好物って人間の内臓ですよ!」
「うん、危険だったよ。僕の学年は特に悲惨でね、1人腕を亡くした奴もいた。」
「え………………」
この人本気で言ってる?
「でも流石にそこまでする熱意があると、先生も感動したのか学期評価は最高点だったよ。」
「そんなことが……。いや、腕を犠牲にすれば落第は免れるのか。」
「アイリーンさんでも落第なんてするんだ?」
「一度だけ1年の時に。」
あの時単位を落としたのも魔法動物学だった。
「ごめん、今の冗談なんだ……」
「え、嘘なんですか?!」
なんか殿下がすまなそうな顔をして謝っている。
「うん。そんなに本気で騙されるとは思わなくて。大丈夫だよ。学校のケルピーは学校内で産まれたものだから、凶暴ではないんだ。」
「なんだ~。」
冗談で良かった。
それにしても殿下も冗談とか言うんだな。
「あ、でも一匹真っ黒なケルピーがいて、そいつは気性がわりとあらめだから注意しておいた方がいいよ。」
「アドバイス、ありがとうございます。」
今までの話を総括すると、そんなにケルピーは危険じゃないってことなのかな。
良かった良かった!
「それでは、この辺で私は失礼させて頂きます。」
そう言ってお辞儀をする。
「そうか。じゃあまたね。」
こうして私は無事図書館を後にすることが出来た
またね?
あの人とまた会わなきゃダメなの?




