幻想の都
ーー幻想の都
あの村を出てから一週間。
幻想種の住む都ももう、目の前。
都の入口で何やら検査を行なっているみたいだ。
二人のドワーフが検問を行なっている。
厄介な事だとまずいなぁー
「マカ、武器を出せ」
‼︎
とシュバルツに言われ、大鎌を出す。
シュバルツもハルバートを出した。
「行くぞ」
ルナを先頭に門に並んだ。
「こんにちは」
笑顔で挨拶をするルナ。
「おお、エルフのところの長か」
「どうも」
顔が広いんだ。
「それと……ん?
その武器は吸血鬼か?」
「珍しいな。
吸血鬼が地上界に来るなんて」
と言うドワーフ。
「ああ、あたしの調査を手伝ってもらっているんだ」
「調査⁇」
「詳しくは一般人には言えないんだけど……
今日ってラーマさんっているか⁇」
ラーマさん⁇
誰だろう⁇
「ラーマ様ならいるが……
書類は⁇」
ルナは手を合わせて
「また、忘れた‼︎」
と言う。
「ったく、いつも持って来いって言ってるだろ?」
「悪い……」
「しょうがない。
ここはルナちゃんの顔に免じて通そう」
「ありがとう!」
とあっさり、都の中に入れた。
「ところで何の検問をしていたんだ⁇」
「お前、知らないのか?」
二人のドワーフは、顔を見合わせる。
「これ手配書だ」
そこには、黒髪の男が描かれていた。
右の頬には刺青の様な模様が入っていた。
「怪しい人間を見かけたらしい。
この世界のどこかに潜んでいるって噂だ」
⁉︎
人間‼︎
「それって、いつから現れたんだ⁇」
「ちょうど、一週間ぐらい前だ」
私がここに来たのと同じ時期⁉︎
「分かった。
ありがとうな」
と言い、その場を急いで離れた。
「おい、人間がいるなんて聞いてないぞ!」
「あたしだって今知った。
それに、ここを通れたのはあたしのお陰だからな」
小声で言い争っているシュバルツとルナ。
「私以外の人間がいるの⁇」
「分からない。
いるとすれば……」
「……人間を滅ぼした歌う人間だ」
まさか⁉︎
でも、それって……
「それに、マカがここに来た日数と一致している。
もしかしたら、そいつはマカの気配を感じたんだろう」
私を殺しに⁇
探しているの⁇
「同じ者同士、惹かれ合うのだろうな」
もう一度、手配書を見る。
「そういえば、この頬の刺青は??」
これは、かなり目立つ。
「この頰の刺青は魔術印。
魔術が使えるものはアレを身体に付けている。
というより、浮き出る、と言った方がいいか?」
ルナが身体に魔力を込めると腕や顔に緑色の模様が浮かび上がった。
「これ、私にも出るの??」
「マカはまだ、魔力が弱いから浮かび上がらない。
けど、これから出てくるはずだ」
そんなのがあったんだ。
「この魔術印が全身から魔力を集めて来るんだ」
力を抜くと魔術印が消えた。
「じゃあ、魔術師の見分けはそれで分かるんだ」
「まあな。
でも、魔術が使えるのはエルフだけだからあまりそれを気にしないからな」
そうだった。
「それで、俺らはどこに向かっているんだ??」
「この都の長、ラーマさんのところ」
「ラーマさん??」
「確か、門番のドワーフにも言ってたな」
「あの人なら力を貸してくれると思う。
地上界には詳しい。
特に機密情報がな」
情報屋、ってところか。
何か心配だなぁー
でも、ルナがそう言っているんだから凄い人なんだろうけど。
付き合いも長そうな感じだったし。
「機密情報って事は何か対価が必要なのか?」
「対価なら準備してある!!」
えっ??
お金じゃないよね?
「マカ、お前だ!!」
えっ!?
「私!?」
「人間でしかも歌の力を持っている。
そんでもって、吸血鬼の武器も扱える。
こんなの滅多にいないからな!」
私、売られるの!?
「ダメだ!!」
といきなり、大声を出すシュバルツ。
「どうしたの??」
「あっ!!
いや………」
と言い、言葉を濁らせた。
それを察したルナ。
「実はな、思考を読む事の出来る魔術もあるんだが……
シュバルツ、今の続きを見てやろうか?
見なくても分からなくもないが」
とからかう。
少しシュバルツは顔を赤くする。
「……見なくていい」
「そうかそうか。
やっぱり、そうだったのか」
何かに納得したルナ。
「あたし達とは生きる時間が違う。
それを良く考えた上で結論を出すんだな」
「それは分かっている」
二人の話しについていけないマカ。
「マカ、お前はどうしたい?」
??
「このまま、この世界にいたいか?
それとも、元の世界に帰りたいか??」
「どうかな……」
もし、生き返ったとしても……
未練はないと言えば嘘になる。
せっかく、取り戻した日常生活。
人間との接し方も分かってきた。
自分の気持ちもコントロール出来るようになった。
だけど……
この世界も好き。
こうやって、自分の知らない能力に目覚めてそれを活かした生活。
人間はいない。
けど、やり甲斐は沢山ある。
「さてと、着いたぞ」
長い階段の先にお城があった。
昔の日本を思わせるお城だ。