夜叉の脅威
都に行く途中、ある村にやって来た。
全体は静まり返っていた。
……嫌な気配。
凄く不安な気持ちになる。
「ここは……村だった」
と言うルナ。
過去形⁇
つまり、今は村じゃない?
「どう言う事だよ?」
「三年ぐらい前に他の地に移住した」
「どうして?」
「夜叉だよ。
夜叉に狙われて」
それで移住したのか。
その時、何かに反応するシュバルツとルナ。
「マカ、武器を構えろ」
とシュバルツに言われ、小さなステッキから大鎌に変える。
ルナは構えの体制に入る。
シュバルツの手元にハルバートが現れる。
「後方支援は任せて!」
「マカ、少し後ろに下がってろ」
「うん」
周りを見渡す。
ふと、思うルナ。
「あれ⁇
マカって人間なんだよな?」
「そうだけど……」
恐る恐る聞くルナ。
「じゃあ、実戦は……」
あっ、そうだった。
「初めてだね」
とキッパリ言うマカ。
撃沈するルナ。
「マジか……
まともに戦えるのは、シュバルツとあたしだけなんだね」
「……申し訳ない」
「でも、吸血鬼の持つ武器は特殊と聞く」
「ああ。
身体能力は普通の人間よりマシだ」
えっ⁉︎
その事をあまり、重要視していないシュバルツ。
「あたしはマカ中心に守るからシュバルツは、自分の身は自分で守れよ!」
「分かった」
すると、正面の地面から夜叉が出てきた。
「よし、このレベルなら二人でどうにかなる」
と言い、夜叉に突っ込むシュバルツ。
待って、二人⁇
私、戦力に入ってないの⁉︎
「シュバルツに攻撃、防御上昇を付加‼︎」
シュバルツの全身が赤くなる。
「これがエルフの付加魔術か」
と言い、夜叉を斬る。
だが、惜しくも体にかすっただけ。
夜叉の攻撃がマカの方へ来る。
「二人同時に付加は……てか、追いつかない!!
マカ、避けろ‼︎」
とルナに言われ、それをジャンプでかわす。
体が軽い。
ジャンプも高い。
家の屋根までひとっ飛びだ。
「……凄い」
本当に特殊な武器なんだ。
「よし、今だ」
シュバルツは背中を向けている夜叉に一撃。
見事、真っ二つに斬れ夜叉が消えた。
私は家から降りる。
「どうやら、アイツがこの辺りを荒らしていたのかもな」
他にはいないのかな??
「マカ、その“水の歌”も魔術として使える。
詠唱……歌うに時間がかかるが、いざとなった時や近距離で戦えない時はそれを使う事!」
とルナに説教をされるマカ。
「そうだ、マカ。
さっきはたまたまかわせただけ。
だと、思えよ」
二人して厳しいなぁー
しょうがない……よね??
「もっと練習します」
と反省するマカ。
そして、三人は廃墟となったこの村を捜索する事にした。
何もないなぁー
と思いながら、探していると……
♪~♪~♪~
何かのメロディーが聞こえた。
聞き間違いかもしれないが、何かが聞こえた。
そっちの方へ進んでいった。
村の中心まで来た。
そこには、石碑があった。
これは!!
そこには、楽譜が描かれていた。
だが、途中が切れて読めない。
本当、始めの一小節ぐらい。
何なんだろう??
そこに立つマカを見つけるシュバルツ。
「歌……なのか??」
「うん。
だけど、ほとんど読めない」
これは諦めるしかないか。
「諦めるからいいよ。
もしかしたら、知ってる人もいるかもしれないし」
「いいのか?」
ルナも石碑の前に来た。
「確かにここも昔からある村だ。
歌を知っている可能性はある」
いつかその人達に会えればいけど。
でと、何でメロディーが聴こえたんだろう?
自分の場所を知らせる為??
それだけでも、凄いけど。
「まぁ、この世界にこれが読めるのはマカしかいないし、害はないだろう」
「確かにな」
あとはここの村の人に会うしかないのか。
「でも、ここからか分からないけど音が聴こえたの」
「もしかしたら、石碑がマカに存在を教えたのかもしれないな」
と言うルナ。
「そんな事があるのか?」
「分からん‼︎
そう仮定してもいいだろう。
理由はどうであれ。
それに、マカにしか聴こえてないみたいだしな」
三人はここを後にする事にした。
都までの距離はまだ長い。
三人が村を出てしばらくすると、そこに謎の男が現れた。
ボロ切れのローブを着て、フードで顔を隠している。
「……ふん。
この世界に音楽は必要無い」
と言い、手で石碑を触るとそれが砕けた。
「異世界から来た女か」
この世に音楽も人間も必要無い。
感情を持つ生物など必要無い。
自分一人が……
自分一人だけが残っていてば充分だ。
歌の力なんて使わせない。
あと少しで完成する。
そしたら、この世界ともお別れだ。
それまでの間せいぜい、楽しむがいい。