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異世界で奏でる幻想曲  作者: kuh*
異世界へ
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円舞曲(ワルツ)

渋々と条件を受け入れてくれたエルフの女。


「本当に……歌えるのか⁇」


「うん」


私は『エーデルワイス』を歌った。


これはミュージカルの挿入歌。


白い小さな高貴な花。


私もこの曲が好き。


そういえば、水の歌もこれと同じ拍子だった。


三拍子のワルツ。


まるで踊りたくなる様な。


リズム感のある曲だ。


ピアノがあればもっとワルツが弾けるのに。


歌い終わるとあちこちで拍手。


エルフの女も涙を流して歌っていた。


では、もう一曲。


さっきのグラスを使って奏でるのは、同じミュージックの挿入歌の『ドレミの歌』。


皆と一緒に歌っている風景が思い浮かぶ。


歌い終わるとエルフの女が言う。


「あなたは一体……」


「私はマカ。

人間だよ」


その言葉に周りが騒めく。


「絶滅したはずじゃ……」


「それは……」


「俺が説明する」


と言い、今までの経緯を話すシュバルツ。


「……そうだったのか。

あたしはここの長。

名はルナ・スクルド」


「宜しく」


二人は握手をする。


「まさか、本当に“歌姫”がいただなんてな」


これで和解……かな。


「それで、マカはここに来たのか。

確かに、この世界では歌は魔術だ。

それも古の」


古の魔術。


「だが、基本は変わらないはず、

魔術にはそれぞれ、属性がある。

水、風、火、地の四大元素が元となっている。

恐らくその“水の歌”もそうだろう」


となると、あと風、火、地の魔法があるのか。


「そんで、その“黄泉がえりの歌”は無闇に使わない方がいい」


「何で??」


「そりゃ、死者が蘇るのなら皆が使いたがる。

あたし達の魔術で蘇生なんてやったら殺される。

禁忌を犯したも同然だからな」


そうか。


これが禁忌の魔法なのか。


私は楽譜を眺めた。


「多分その、楽譜があたし達でいうところの魔法陣。

それがあればマカは、魔術……つまり歌が歌う事が出来る」


色々と分からなかった情報が手に入った。


「そうだ!

そういえば、楽器を探しているって言ったな」


「うん」


「これを使ってもいい」


ルナが魔法で運んできたのは、埃を被ったグランドピアノだった。


この世界にグランドピアノ!?


「魔術で直したけど……

あまりいい音が出ない」


マカはピアノの椅子に腰をかける。


音階を一通り弾いてみる。


新品の様な綺麗な音が出た。


「凄いな!!

マカはこれも弾けるのか!?」


と目を輝かせるルナ。


意外と素直な子なのかも。


そうだなぁー


少し考えてから鍵盤に手を置く。


弾く曲は『仔犬のワルツ』。


このエルフ達には、ワルツが似合う。


沢山のエルフが音に誘われてやってきた。


良かった。


シュバルツもそれを聴いている。


「凄いな、お前。

こんなに沢山の人を集めて」


「凄くないよ。

私の上はいくらでもいる。

それに比べたら私なんてずっと下の方」


「音楽の世界も大変なんだな」


大変というよりも努力の様な気がする。


プロのピアニストは、沢山の努力をしてきているはず。


そして、ピアノが大好きだと言う気持ち。


そのぐらいしか私には分からない。


弾き終わると周りから拍手喝采。


もっと、ピアノを練習しておけば良かったな。


こんな形で使うとは、思っていなかったし。


「マカ、いいか?

魔術は知られている物がほとんどだが、中には知られてはいない禁忌の魔術がある。

“黄泉がえりの歌”の様にな。

だから、気を付けろ。

使いところを間違えるな」


「ありがとう。

気を付ける。

それと、ピアノも宜しく。

使えるみたいだからまた、ここに戻ってくるね」


「いつでも来い。

待ってるからな!」


と言うルナ。


だが、他に何か言いたい事を言い出せないでいる。


「なぁ、もしもでいいんだが……

あたしも……連れて行って来る無いか??」


と言うルナ。


「魔術は基本を覚えれば威力も上がる。

歌の力もそうだと思うんだ。

だから、教える!」


何とも頼もしい。


魔術の得意なエルフが一緒に来てくれるとは。


だが、ルナはここの長だ。


「大丈夫??

ルナが抜けたら……」


「大丈夫!

それは心配いらない」


「そうだとも」


家の中から年老いたエルフの老人がやって来た。


「ルナの祖父だ。

わしが代わりにいる。

ルナに……歌とはどんなものか教えてやってくれ」


「じいちゃん……」


涙ぐむルナ。


「シュバルツ、どう?」


「俺は構わない。

何より、戦力が増えるからな」


人柄とかよりもそっちか。


「私は歓迎だよ」


「やったーー!!!」


と大きくジャンプをするルナ。


「歌も教えてくれるか!?」


「もちろん!」


ルナは一度、家に行き旅の支度をしにいった。


その間、ルナの祖父がはなしをしてくれた。


「ああ。

確かにわしの親父、ルナのひいおじいちゃんが歌う男を見た」


男なんだ。


「これは聞いた話しじゃ。

ある事から人間を嫌い、憎み、恨んだ。

それで、歌で人間を消したと」


その言葉にドキッとする。


あれ??


それって……


「だが、こうとも言っていたのじゃ。

一度、この街に来て歌を歌ってくれた」


あの時の『エーデルワイス』か。


「それは優しい歌だったと。

心が穏やかになる。

そんな男が人間を滅ぼすなどありえないとな」


……そうか。


「お待たせ!」


ルナが着替え、荷物を抱えて来た。


「気を付けるんじゃぞ。

特に夜叉にはな」


これで二人から三人。


「マカ、これからどうする??」


「シュバルツ、地上界には何がある??」


「幻想種の住む都がある」


幻想種かぁー


会ってみたいなぁー


「あたしは良く行くぞ」


「どんなところ??」


「生き物だらけだ!!」


生き物は嫌いじゃない。


「じゃ、そこに行こう」


おじいさんのあの言葉……


男の歌う人間。


人間を嫌い、憎み、恨んだ。


私と一緒だ。


元の世界にいた時の。


今は分からないけど。


それまでは、普通だったのなら何かあったのだろう。


三人は幻想種の暮らす都を目指した。


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