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異世界で奏でる幻想曲  作者: kuh*
異世界へ
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地上界

ーー地上界


先程、地上界と魔界の狭間を渡って来た。


それといって境目は無く、崖に橋がかかっているだけ。


地上界に着いたと思ったら、明るくなっていた。


不思議な者だ。


誰でも出入りが簡単だ。


魔界とは違って暖い太陽が照り付ける。


「吸血鬼って日光が苦手じゃなかったっけ⁇」


「ああ。

これがあるから平気なんだ」


シュバルツの右腕に腕章があった。


「これは紫外線防止用の腕章。

これで日光は大丈夫だ」


そうなんだ。


「魔界に住む生き物は日光が苦手なんだ」


だから、暗くて月が出たままだったんだ。


赤かったけど。


「地上界は夜になれば月、朝になれば太陽が出る」


私のいた世界と何も変わりのない世界なんだ。


「んで、これからどうするんだ?」


「魔術について詳しく知りたい。

だから、エルフに会いたい」


と言っても、エルフの姿は見やたらない。


どこに行けば会えるんだろう?


「おっ!」


一人のエルフを見つけたが、こちらの顔を見た途端、逃げて行ってしまった。


そんな……


「吸血鬼ってあまり地上界に行かないからな。

皆、不審に思っているのかもな」


ウルド、肝心な事を教えてくれなかった。


まぁ、怪しい人がいたら隠れるよね。


「シュバルツ、歌は歌えないの??」


「はっ!?

歌える訳ないだろ!!」


歌は声があれば奏でられる音。


「ちょっと、私の後に続いて歌ってみて」


と言い、やってみた。


あまりにも表現出来ない程の音痴だったので、二重奏(デュエット)は諦めた。


てか、ただ言葉にしてそれっぽくしてる感じ。


やっぱり、歌を知らないとダメなのかな??


それに、音痴は治るって言うし。


後はピアノとか音のとれる楽器があればいいんだけど……


「この世界の一般的な楽器は何??」


「が、がっき??」


ダメだ。


楽器も知らないか。


あー、武器じゃなくて楽器がもらえればよかった。


でも、ギターは弾けないし。


独学でやったが手が小さく弦を抑えるのが大変だった。


なので、すぐに飽きてしまった。


どうしようかなぁー


と思い、ウロウロとしていた。


そうだ!


「ガラスのコップって無いかな??」


シュバルツはお店のある方を指差す。


綺麗な色のガラスだ。


「それ、八個買ってきて」


何で俺が……


と言う顔で、渋々買いに言ってくれた。


それを並べる。


木の枝をつ。


それを指揮棒の様に振る。


「流れろ、澄み渡れ、透き通り清やかな水よ。

蒼く流れる。

巡り、巡れ大地にしみ渡れ。

アクエリアスの加護をこの地に」


ウルドに貰った楽譜の歌を歌った。


コップに水が沸き上がる。


それを音を聴いて、量を調節する。


そして、それを枝で叩くと綺麗な音階を奏でた。


「マカ、一体何をやっているんだ??」


「リサイタルだよ」


と言い、きらきら星を奏でる。


コップの振動が水に伝わる。


涼しそうな綺麗な音が鳴る。


すると、徐々にエルフ達が近づいて来た。


「綺麗な音!」


「何なんだこれは⁉︎」


あっという間に周りには、エルフが集まっていた。


「ちょっと待った‼︎」


一人の女のエルフが大声を上げた。


「皆、家に戻って‼︎

コイツらは吸血鬼だ‼︎

私らを集めて食べるんだきっと‼︎」


「はぁ⁉︎」


と怒るシュバルツ。


「まさか‼︎

ここで演奏をしちゃいけないの⁇」


と聞くマカ。


「えんそう⁇

それは何だい⁉︎

それにあたしは見ていた‼︎

コップから水が湧いてくるのを」


歌を聴いてた⁉︎


「どんな手品を使ったんだ⁇

お前はエルフじゃない。

この世界にエルフ以外、魔法の使える種族なんていない」


開始そうそう厄介なのに会ったな。


周りに集まっていたエルフもいなくなっていた。


家から様子を伺っているようだ。


「私は魔術を教わりに来たの」


「エルフ以外が魔術を使う必要はない」


そんな!


「他の種族なんて武器を持って戦っていればいい。

だから、怒って滅亡させて人間はいなくなたんだ‼︎」


と大粒の涙を流しなだらか怒鳴るエルフの女。


怒った⁇


「ああ。

あの頃は戦時中だったと聞く。

戦争どころか世界そのものを歌で消したと言われている」


なるほど。


つまりこのエルフは……


「……人間が好きだったの?」


「好きとか嫌いとかじゃない。

人間の歌う歌が好きだったんだ」


人間に会った事のあるエルフ⁉︎


「ちなみに人間に会った事は……」


「無い」


無いのか。


「でも、歌を聴いた事がある」


歌を⁇


「今はいないひいじいちゃんが残してくれた遺産だ」


と言い、ポケットから小型のラジカセを取り出した。


「これは小型録音搭載機」


ラジカセじゃないんだね。


「魔術で音が記憶できる様になっている」


「へぇ〜」


そんな事まで出来るんだ。


「記憶した音よ出よ」


すると、小型録音搭載機が光り出し音楽が流れた。


その曲名は『エーデルワイス』。


男の人の声……


私もこの曲は好き。


曲が終わると、エルフの女は自慢げに言う。


「この世界に残っている歌はこれだけだ。

あたしが持っているこれだけだ」


そうか。


誰も知らないわけじゃないのか。


こうして代々、受け継がれているのか。


楽譜も歌も。


「この様に上手く歌いたいが歌えない。

歌い方を知らない。

だから……」


この世界の人は歌を知らないんじゃなくて歌えないんだ。


だから、音痴なのか。


とシュバルツを見る。


「何だよ?」


「何でもない。

もしかしたら、歌える様になるかもね」


「本当か⁉︎」


「努力次第だね」


でもここは異世界。


それかもしかして……


歌う事自体を禁じられている⁇


音楽も。


その一人の人間が歌で人間だけを絶滅させた。


訳あって。


絶滅させた歌と歌う事を封印する歌のミックス。


編曲あるいはリミックスの様な事が出来たのなら……


「ちょっと、いい?」


落ち込むエルフに訊ねる。


「魔法と魔法をくっつける事って出来る?」


「⁇

当たり前じゃん。

二重詠唱をすれば可能だよ」


まぁ、それは仮定としての話し。


封印が出来る歌だなんて聞いた事がないし。


今のところ。


「じゃあ、さっきの歌を歌ってあげるよ」


「えっ⁉︎」


と驚くエルフの女。


「但し、条件付きで」


「マカ、あの曲が歌えるのか?」


「シュバルツ、あれは私の世界では有名な歌だよ」


「そうか」


良く分からなそうな顔をしているが、納得したみたいだ。


「それで条件は?」


と訪ねるエルフの女。


「私に魔術を教えて」



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