子守唄(ララバイ)
次々と崩壊した建物が修復されていく。
上空には青空が。
木々は生い茂り、道も元に戻る。
死んだはずの人間が息を吹き返す。
「凄い……これ程の力が……」
と感動するカイス。
「やっぱり、摩訶ちゃんにあの楽譜を託して正解だった」
歌い終わると摩訶は言う。
「完全に生き返った訳じゃない。
体がバラバラなのは………
あと、あの黒いものに呑み込まれた人間は、ね。
アレに呑み込まれたら私の魔力になるから」
私は沢山の人間の命を吸収してしまった。
さっきの歌でその魔力を使い切った。
「これはどういう事だ?」
そこへウルドとワルキューレがやってきた。
ワルキューレは摩訶を見る。
「良かった、無事で」
と言い、微笑む。
「終わったなら帰るぞ、カイス」
「何で僕なんですか?」
「お前は関係ないからな。
それにやる事がある」
と言い、ウルドに連れ去られるカイス。
二人は歪んだ空間へと消えた。
「摩訶、こちらのあなたの家族は無事よ」
「⁉︎
本当に⁉︎」
「ええ。
でも、この世界には記憶操作を入れて今回の件は無かった事にするって。
だから、摩訶ちゃんの事も……」
そっか。
まぁ、しょうがないよね。
「その事は任せます」
そう。
今の私の居場所じゃないから、ここは。
「あなた達も早く戻って来なさい。
やる事がまだ、あるから」
と言い、ワルキューレは雨を降らせた。
この雨を浴びれば記憶が……
少しの間だけど来れて良かった。
皆は忘れるかもしれないけど私は忘れないから。
四人はビルの上から街を見下ろす。
ありがとう、そしてさよなら。
摩訶はこの世界に贈る。
静かで心地よいメロディーの子守唄を。




