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異世界で奏でる幻想曲  作者: kuh*
動乱祭り
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真理の先へ

それぞれのフレームに映像が映った。


それは、摩訶の想い出。


それを一つ一つ観る。


白いフレームには、摩訶の想いが。


摩訶が元の世界にいた時。


ピアノを弾き、良く歌を口ずさむ。


明るい何処にでもいる人間の子。


そして、突然の事故死。


シュバルツ、アレクとの出会い。


それが上司に対する姿勢なのかと思わせる、カイスがウルドに対する態度。


ルナとエルフの村。


幻想種のいる都。


使い魔のヴァイス。


そして、勇美との出会い。


の映像は、映って直ぐに消えた。


シュバルツの後ろ姿しか見えないが、イラついている様だ。


「うん?」


それに気付くルナ。


余程、見たくない映像がある様だ。


二人だけ……いや、三人の秘密だろうか?


その後は、天界へ行き今いる世界までの旅。


黒いフレームには、摩訶の心の闇が映る。


人間関係が上手くいかず、やがて精神病に。


“人間なんて嫌い”


“こんな人間だけの世界では生きたくない”


“こんな世界にいるぐらいなら死にたい”


だが、家族や友人の悲しむ姿が想像出来る。


その想いが強く死ぬ事を諦めた。


その気持ちを再び起こしたのが勇美からの裏切り。


同じ気持ちだと思っていたのに、利用する為の演技だった。


過去の話しには嘘はないが、全て仕組まれていたのだ。


その想いからだ。


“人間のいない世界に生きたい”


“誰もいない世界に行きたい”


“あっ、自分で作ればいいんだ。

何もない世界を一から作り直せば”


そんな考えが……


いや、思考がおかしくなっている。


そこで記憶が消えていた。


浮かび上がっていたフレームが消えると同時に黄金の空間も消え、元の風景に戻った。


「うっ……ぐすん、っ……」


シュバルツの腕の中で摩訶が泣いていた。


髪が紅から元の黒髪へと戻った。


「私っ……私は……」


そのまま、泣き崩れる。


元に戻った。


あの禍々しい殺気が消えた。


「……摩訶、分かっているな?」


優しい口調で話し始めるシュバルツ。


「沢山の……人間を……犠牲にした……

数え切れない……償いきれない程の……」


そうだ。


私は沢山の命を奪った。


取り返しのつかない事を。


「ああ、そうだ。

だが、お前はそれを償わなければならない」


頷く摩訶。


「この事は忘れずに」


また頷く。


「無かった事にしてはならない。

自分の過ちを」


それなら……


「……皆が望むなら死んだっていい」


そう言う摩訶の言葉にシュバルツは、首を振る。


「お前は死なせない」


「えっ……」


「お前は吸血鬼だ。

死ぬ事は出来ない」


確かにそうだ。


なら、一層の事封印して何処かに閉じ込めても……


「だから、何千年もその罪を追って生きろ。

人間を見るたびに自分の犯した罪を感じろ」


その方が辛い……か。


周りを見渡す。


何もない黒い世界。


建物は崩壊し、生き物の気配は無い。


傷だらけの仲間。


いや、もう仲間とは呼べない。


自分にはそんな資格がないから。


「摩訶………」


「……うん」


シュバルツは、摩訶を抱きしめる。


「俺はずっと側にいる。

何も無くなっていい世界なんて……

そんな事はもう言うな」


シュバルツ……


「そうだぞ、摩訶!

あたし達は仲間であり、親友だろ!」


と言うルナ。


「そうだ。

摩訶が困っているなら助けるし、力にだってなる」


「ルナ……アレク……」


「摩訶ちゃんは、いい仲間に恵まれたね」


「皆……私……」


また、大粒の涙を流して泣く摩訶。


「摩訶は摩訶だ。

こんな事があって離れて行く訳ないだろ?

皆でこの先も乗り越えて行けばいい。

仲間と共に」


知らなかった。


こんなにも自分が愛されていただなんて。


そうだよ。


この世界にも私の大切な……


私が死んだら悲しむ人がいるんだ。


ここがもう私の世界なんだ。


摩訶は涙を拭いて立ち上がる。


こんなのじゃ、罪滅ぼしにはならないけど……


私が出来る事はこれしかない。


摩訶は大きく深呼吸した。


届けるのは全世界へ。


摩訶は歌を口ずさむ。


「そこは常闇。

沢山の黄金の光の粒の世界。

彷徨う魂よ、蘇れ。

黄泉から目覚めろ。

そして再び歩みだせ」


レクイエムを。


辺り一面黒かった世界が一気に黄金の光の粒が舞う。


まるで、金色に光る麦畑の様に地面も金色に輝く。


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