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異世界で奏でる幻想曲  作者: kuh*
異世界へ
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吸血鬼の王

ーー吸血鬼の古城


谷の洞窟の奥に吸血鬼の住む街が広がっていた。


ヨーロッパをイメージさせる建物、その中央にはお城が建っていた。


「ここが俺らの住処だ」


背負っていたマカを降ろすシュバルツ。


「凄い……」


アニメや漫画に出て来そうな世界。


小さな街の様になっている。


「それ程、吸血鬼の人口はいない。

群れるのを嫌ってるから」


このまま、成り行きでここに来てしまったけどいいのだろうか?


「魔術ならエルフのいる地上界に行った方がいいけど、君がここ魔界に来たのも何かの縁だと思う。

だから、王様に必要な事を聞いて来なよ」


と言うカイス。


「ありがとう」


確かにそうだ。


それも考えられる。


城の前までやって来た。


「じゃあ、シュバルツとアレクはここで待ってて」


「分かりました」


「はい」


何でも、城の中には上級吸血鬼でなおかつ序列に入る吸血鬼しか入れないらしい。


なので、カイスが同行する事になった。


どんな人なんだろう?


と思いながら、王の間と呼ばれる部屋に入る。


「失礼します、王様」


「し、失礼します」


私も後から小声で言う。


「話しは聞いている、カイス」


椅子に座っている一人の吸血鬼の男がいた。


テーブルにクッキーとお茶。


完全にお出迎えムード。


「座れ、カイス。

そして、異国から来た娘よ」


二人は椅子に座った。


「私の名はウルド・ラー」


赤い瞳によく似合う金髪の青年。


「話しは聞いたよ、マカ」


「はい」


ウルドはクッキーを一枚食べる。


「ここだけだからなー

この武器は」



黙々と隣でクッキーを食べるカイス。


「吸血鬼の使う武器だけは特殊なんだよ」


「特殊⁇」


一人の吸血鬼が小さなステッキを持ってきた。


「ご苦労」


それをマカに差し出す。


「君に相応しい武器を用意した」


これが⁇


それを受け取る。


すると、大鎌に変わった。


自分の身長よりも遥かに大きく、重い。


はずなのだが、全然重くない。


「吸血鬼の使う武器は、自身の身体能力を上げる力がある」


そうなんだ‼︎


あまりの軽さに振り回す。


「ちょっとマカちゃん、危ないよ」


隣にいたカイスが紅茶を飲みながら言う。


王様の前でくつろぎ過ぎでしょ⁉︎


大鎌かぁー


「君に相応しい武器だろ?」


ニヤッとするウルド。


鎌とマカをかけたのか。


名前を逆から読んだだけじゃん。


「この世界にはここしか、特殊な武器は無い。

悪魔や天使、エルフは実力で戦える。

吸血鬼もそうだが、なぜか私達だけなのだ」


「吸血鬼だけ……」


念を込めると小さなステッキ状態に戻る。


「なぜ吸血鬼だけが特殊な武器で、他の種族は一般の武器なのかは明らかになっていない」


なるほど。


そうなんだ。


「吸血鬼と言えば、人間の血を吸うって聞いた事あります」


「そこなんだ」


えっ⁇


「人間が絶滅した今、血が吸えない。

時間と共に渇きがくるはずなんだ。

しかし、それが無い」


「つまり、血を必要としていないと?」


「ああ。

それと武器が関係あるんじゃないかと言われているんだ」


血を吸わない吸血鬼か。


それじゃ、ただの鬼だね。


「だから私達はその武器を“血の武器(サングィス・テールム)”と呼んでいる」


血の武器か。


そんなのを私が使っていいのどろうか?


「本来なら吸血鬼以外には渡せないんだ。

もし、吸血鬼以外が持てば全身の血を吸い取り死亡する」


それを聞いてゾッとして手を離す。


「けど、どうやら大丈夫みたいだし。

やっぱり、ここに来たのも何かの縁があるのかもな」


「それを知っていて私に持たせたんですか⁉︎

殺す気だったんですか⁉︎」


「いいや。

ただ者じゃないのは分かっていた。

だが、この世界を巡るには武器が必要だろ?」


それって……


ウルドは一枚の紙をマカに渡す。


これ‼︎


楽譜だ。


カイスに渡されたのとは違う。


「それは私の家系に伝わる楽譜。

“清らかな水”という歌らしい」


と言うことは、水の魔法‼︎


「魔法についてはエルフの方が詳しい。

地上界に行くといい」


そういえば、気になっていたのが一つ。


「代々家系に伝わるってカイスも言ってたけど……」


シュバルツやアレクは持っていなかった。


何か関係があるのだろうか?


「元々、私の先祖は人間だ」


⁉︎


「それでいて、貴族だった」


お金持ち⁉︎


「吸血鬼には珍しくない話しだ。

なんせ、吸血鬼に血を吸われた者は吸血鬼になるからな」


そんな伝説もあったね。


「他に人間との間に生まれた者、人間が好きだった者もいる。

もちろん、嫌いだった者も」


そうか。


そうやって、受け継がれて来たのか。


「さて、マカ。

魔法の歌を歌う人間よ。

この世界には、他にも多くの楽譜がある。

それを探し出せ。

そうすれば、お前がここに来た意味も分かるだろう」


「でも、今はこの世界の均衡が危ないってカイスが……」


カイスはテーブルに顔を乗せてスヤスヤと寝ていた。


何、この話しを聞く気の無い態度。


「それは大事でもあるが、今は自分の事を考えろ。

歌を知らないこの世界に歌を届けてくれ」


この世界に歌を。


「夜叉の発生の原因は聞いたか?」


「はい、確かに人間の負の感情とか」


ウルドは頷く。


「その通り。

聞いた事がある。

人間は歌で楽しんだり、悲しんだりすると」


「それだけじゃなく、元気をもらったり、励まされたり!」


「だから、この世界も歌を通して残った人間の憎悪や悪い信念が消えるんじゃないかと考えている。

それはどの種族も同じ考えをしているはずだ」


だから、その力を手にした種族が繁栄をもたらす、って言ってたのか。


「鎮魂歌……つまり、レクイエムですね!」


「ほう……」


その言葉を知らないのか首を傾げるウルド。


「やれるだけやってみます」


「一応、君の戸籍はここにしておく。

その武器を持っていれば怪しまれる事はないだろう。

まぁ、好きな土地が見つかればそこに移籍すればいい」


「ありがとうございます‼︎」


「まずはやはり……」


「地上界に行きたいです!」


エルフ族に会いたい。


この世界の魔術について知る必要がある。


「だと思った。

カイスはこの通り無能だ。

実力はいいのだが……」


まだ、寝ているカイス。


「一緒に来たのは…アレクとシュバルツか。

アレクは一般吸血鬼のリーダーだ。

離す訳にはいかない」


そっか!


だから、私と初めて会った時に他の吸血鬼に命令を出していたのか。


「よし、シュバルツを連れて行け」


あの背負ってくれた吸血鬼ね。


「手配をしておく」


と言い、部下の吸血鬼に書類を渡していた。


「何かあったらここに来い。

今はここがお前の帰る場所だ」


「ありがとうございます」


カイスを起こす。


「あー、もう終わった」


と言い、欠伸をするカイス。


「ああ。

君が口を出さないからすぐに終わった」


と言うウルド。


「さて、行こうマカちゃん」


この人、何の為にいたの⁇


と思いながら、王の間を出た。


城を出るとそこには、シュバルツがいた。


「アレクは部隊の会議に行った。

……話しは聞いた」


「じゃあ、マカちゃんを宜しくね」


と笑顔で手を振るカイス。


「二人で仲良く♪」


呆れるシュバルツ。


「じゃあ、行って来ます」


と言い、二人は吸血鬼の古城を後にした。


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