祝福《クレイオ》騎士団
三人はショッピングモールの中に入った。
色々なお店を周りつつ、職場へと向かう。
あの頃と変わった様子はない。
同じ風景。
すると、一人の男性がこちらに気が付いた。
「待ってたよ」
「こんにちは。
お疲れ様です」
この人はこの店の店長。
「元気そうで良かった」
「ご心配をかけてしまいすみません……」
「大丈夫だよ」
シュバルツとアレクは、店を見ている。
二人には珍しいものしか売っていないからね。
「ところで、相談なんだけど……」
「はい」
店長と二人で話しているところを見ていた一人の女性が近付いてきた。
「桜庭さん!」
先輩の和泉さんだ。
「行方不明って言ってたけど大丈夫だった!?」
「はい、なんとか」
「良かった!
ところでさ、ここに戻って来ない?」
えっ??
困った顔の摩訶を見て店長は、和泉に言う。
「今から話すところだったんだよ」
「‼
そうだったんですね!
それで、どうなの?」
そう言われると思わなかったので、迷う。
けど、私は人間じゃないからここには居られない。
「仕事も中々忙しくて。
人手が足りないんだ」
そうなんだ。
「せっかくなんですど、すみません」
「そうだよね。
もし、気が変わったら言って」
と言い、店長はレジに入った。
和泉さんにお菓子を渡す。
「いつでも遊びに来て。
来たらサービスするから」
と言い、レジに戻る和泉。
一人、知らない人がいた。
新人さんかな??
と思いながら、アレクとシュバルツの元へ戻った。
「いいのか?」
「うん、帰ろう」
と振り返ろうとしたその時
「お姉さんっ!!
危ないっ!!」
と言う男の叫び声が聞こえた。
気が付いた時には、腹に包丁が刺さっていた。
周りからは叫び声が聞こえる。
「あっ………‼」
包丁で摩訶を刺したと思われる男が赤い手を震わせながら、後退りをする。
摩訶の腹から血が流れる。
「おい、摩訶!!」
膝を床に着く摩訶を支えるシュバルツ。
だが、包丁を刺したと思われる男を二人は捕まえようとしない。
それに、摩訶が死なない事は分かっていたから。
「お、俺は……」
「アイツを捕まえろ!!」
別の男が血だらけの男を取り押さえる。
「きゅ、救急車を……」
震える手で電話をしようとする女。
「呼ばなくていい」
と言うアレク。
「えっ!?
でも、包丁が刺さって出血……」
騒ぎをききつけてやってきた店長と和泉、他の店長。
「ゲホッ……」
咳と共に大量の血を吐く摩訶。
お腹に刺さった包丁を抜く。
もちろん、これを抜いたら死ぬ。
普通の人間なら。
カラン
包丁を床に投げ捨てて、立ち上がる。
お腹に手を当てる。
傷は修復している。
「桜庭さん!!
今、警備員さんに連絡して警察を……」
「……大丈夫です。
傷はないんで」
摩訶は取り押さえられた男の元に近付く。
すると、男は暴れだし靴の隙間にしまってあった拳銃で摩訶の顔と右腕、左脚にを撃つ。
それでまた、悲鳴が上がる。
傷から血が出るが一瞬にして消える。
それを見てその場にいた人が全員、震える。
人間じゃないのが分かるから。
異常だと。
「おい、アレクどうするんだ?」
「……くそっ!!」
これを見られた以上まずい。
全員、殺すにも数が多過ぎる。
それにこれは、ただの通り魔だったのか。
退却をしようとしている三人に男は言う。
「やはり、あの方の言う通り悪魔がいた!!
化け物が!!」
あの方??
「これは序章に過ぎない!
この世に潜む化け物を殺す為の!!
俺はここに誓う!!
我らがカイザー、水野勇美の名の元!!」
勇美!?
「祝福騎士団に栄光あれ!!!」
と叫び、カリッという音がした。
!?
気付いた時には、男は倒れていた。
恐らく、自害したのだろう。
毒を仕込んでいたのか。
周りの人間は、更に悲鳴を上げる。
ここにいられるのも時間の問題か。
新しい情報も手に入れられた。
早く立ち去ろう。
「桜庭さん!」
和泉に呼び止められる。
「……私はもう以前の私ではありません。
なので……」
もう、関わらない方がいいと。
摩訶は後ろを向いたままそう言う。
「さようなら……」
「摩訶……」
「……行くぞ」
三人はその場を離れた。




