星空の下で
今夜は星空が綺麗だ。
四人は家の屋根の上に登る。
「じゃあ、あたしは出かけるからな」
と言い、姿を消した。
「……俺は一旦、小学校の方まで行ってからこっちに戻って来る」
と言い、アレクも行ってしまった。
残った二人は顔を見合わせる。
「俺らどうする?」
「……少しここにいてもいいかな?」
「分かった。
じゃあ、俺は……」
と言い、屋根から降りようとしたシュバルツのパーカーの裾を握る摩訶。
「……一緒にいて」
照れた顔を下に向ける。
「分かった」
その仕草がたまらなく可愛いと思うシュバルツ。
しばらく、星空を眺める二人。
私はBGM代わりにスマホから音楽をかける。
モーツァルト作曲『きらきら星変奏曲 K.265』
ピアノの綺麗な音色が聴こえる。
「この曲は星の曲なんだよ」
「いい曲だな」
初めに主となるメロディー。
次にアレンジされたメロディー。
曲調が変わってくる面白い曲だ。
「私、太陽のある青空の下にはいれなくても……
この満天の星空の下にいれて、星や月を眺められるから良かった。
それに人間の頃より視力も良くなってるから、綺麗に見える。
吸血鬼になって良かった」
シュバルツは、自分の勝手な判断で摩訶を吸血鬼にした事を後悔していた。
だが、さっきの言葉を聞いて少しホッとした。
「本当にごめん……」
「前にも言ったでしょ?
二度も死ななくて済んだんだもん。
ありがとう」
キラキラと輝く星々。
たまに流れ星が流れる。
「俺は勝手に摩訶を吸血鬼にして、無理やり血を飲ませた。
怒られても当然な事をしてきている」
それに、怒りで我を忘れてあんな事になってしまった。
吸血鬼になったばかりで力が上手く制御出来ないのだろう。
「それでもいつでも助けてくれたのはシュバルツだよ」
と言い、シュバルツの腕を組む。
「だから、ありがとう」
笑顔でそう言う摩訶。
月夜に照らされて更に綺麗に顔が輝く。
そんな摩訶を自分の元へ抱き寄せるシュバルツ。
嬉しくなって摩訶を強く抱きしめた。
「く……苦しいよ……」
「摩訶……」
と言われ、振り向くと摩訶にシュバルツはキスをした。
その後、額と額を合わせる。
「勇美は何を考えているんだ?」
「分からない……
けど、この世界を壊そうとしている」
泣きそうな声で言う摩訶。
「嫌だよ。
この世界が壊されるなんて。
そんなの許せない」
「ああ。
それを止める為にここに来た」
摩訶は頷く。
「私、向こうの世界も大事だけどやっぱり……」
摩訶はこの世界で生きていた。
俺らの世界よりもここが大事だと思うのは当たり前だ。
「両方とも救う、っていうのは無理かな?
……欲張り??」
「いいんじゃないか。
吸血鬼はそれぐらい強欲じゃないとな」
死ねない体なら、やればいい。
やれるだけの事を。
「そっか。
そうだね!」
二人は部屋に戻った。
その頃、近くの小学校の屋上で寝転ぶアレク。
そこへやってきたルナ。
「なんだお前、二人に気を遣って外にいたのか?」
「まぁーな。
結界は?」
「終わった」
隣に座るルナ。
「どうなんだ、摩訶の吸血鬼としての能力は?」
「アレは異常だ」
シュバルツは警察署で摩訶が暴走したと言った。
母親を人質に取られて。
「魔術はどうなんだ?」
「それも異常だ。
それだけの魔術を使っていれば、体内の魔力が減る」
魔力の衰えを感じない。
それも暴走しての魔力か?
もしかして……
二人はそれぞれの問題について考える。
「魔術については、アレだ。
摩訶の持っていた魔法石。
あれをもう少し調べてみる」
「任せた」
「吸血鬼の力はどうなんだ?」
摩訶が吸血鬼になっての戦闘は、それが最初だ。
「力を制御出来てない可能性はある」
だが、それだけが原因じゃない。
「正直、そこまで闘える吸血鬼は下級吸血鬼にはいない」
「いない??」
「つまり、階級の高い吸血鬼でない限りそこまでの身体能力はないんだ」
そう。
そんな闘いをする者は上級吸血鬼しかいない。
それも階級十位以内。
「まずは力の使い方から教えるか」
ある程度の戦闘は教えてある。
「さて、あたしはそろそろ戻る」
と言い、立ち上がるルナ。
「俺も行く」
「どちらにしろ色々と調整する必要があるな」
二人は摩訶の家へと戻った。




