脅威
三人は隣町の警察署まで来た。
入ったことないから緊張する。
三人は中へ入った。
一瞬、入口で何かを感じた。
立ち止まる摩訶。
今、何か違和感が……
「摩訶、行くぞ」
「うん……」
そのまま、立ち去る摩訶。
「おい、摩訶!!」
見えない壁で先へ進めないツヴァイ。
そう。
警察署の入口には、結界が張っていたのだ。
使い魔を遮断する為の。
ツヴァイは姿をその場から消した。
そうとも知らず、先に進む摩訶ら。
ある部屋に案内される。
「あつ、お母様はこちらのお部屋でお待ち下さい」
と言い、係の人に部屋を分けられた。
一緒に話しをするんじゃなかったんだ。
そして、少し広い部屋に案内された摩訶とシュバルツ。
「やあ、久しぶり」
!?
聞き覚えのある声!!
部屋の奥には椅子に座った勇美がいた。
警察官の制服を着ている。
「やっぱり、生きてたんだね。
それも吸血鬼になって」
と言い、シュバルツを見る。
「でもどうしてここに……」
「君を行方不明扱いにしたのは僕」
魔術を使ったのか。
「今すぐ帰して!!」
と言い、武器を構える。
「いや〜まさか、こんなにも簡単に引っかかるとは思っていなかった」
と言い笑う。
「それと、ここには君ら二人だけじゃない事も」
勇美が指を鳴らすと壁の扉が窓の様に開いた。
そこには母親の姿が。
係の人と二人だけ。
「こちらの様子は分からない仕組みになっている。
それと、あの係員も僕の手の者だから。
意味分かるよね?」
「……っ!!
卑怯者!!」
「何度でも言いなよ」
勇美に襲いかかる摩訶。
「まっ……待て!!」
シュバルツの声が届かない。
怒りで我を忘れてしまっていた。
大鎌で勇美に斬り掛かる。
だが、それを影を操って防ぐ。
「君もそんなに怒るんだね」
そのうち、摩訶へ何かを唱える。
魔術か!?
とりあえず、防御体制をとるシュバルツ。
「風よ、荒れ狂え」
室内を強い疾風が吹き荒れる。
シュバルツはハルバードを床に突き刺し、風に飛ばされない様にする。
「なるほど。
詠唱もいらなくなった……か」
勇美は摩訶を包む金色の光の粒を見る。
「ワルキューレの加護か」
摩訶は大鎌を勇美に向けて投げつける。
それを交わした勇美。
武器がなくなった事により、素手で闘い始める。
「吸血鬼になったから身体能力も上がっているのか」
膝で勇美の腹部を狙うが交わされる。
勇美は摩訶の両腕を掴む。
それを摩訶が掴み取り、入口のドアに投げつけた。
「おい、摩訶!」
シュバルツは周りにいる係員を相手にしつつ、摩訶に話しかける。
「くそっ、コイツらさえいなければ……!」
それに、見ている限り勇美は摩訶に攻撃をしていない。
あの時、摩訶を一瞬にして影で刺した。
それが可能な筈。
攻撃をしないということは、生かしておく理由があるのか?
最後の一人を斬った。
よし!
シュバルツは摩訶の応援に行く。
「摩訶、しっかりしろ!!」
だが、返事はなく勇美に攻撃をしている。
何か方法は……
と考えているとある案が浮かんだ。
この状況でそれは危険かもしれない。
だが、それしかない。
一瞬でも動きを止められればいいのだ。
シュバルツは様子を伺う。
摩訶に一番、接近出来る時を。
待つ間もなく、すぐにその時は訪れた。
勇美が摩訶に蹴り飛ばされた。
壁にぶつかり、倒れ込む勇美。
まぁ、死んでないだろう。
そこに摩訶が近付こうとしていた。
今しかない!!
ちょっと、強引だが仕方ない。
摩訶には後で怒られよう。
シュバルツは摩訶を背後から襲う。
床に押し倒される摩訶。
両腕を頭の上で押さえた。
暴れる摩訶。
「悪い、今はこれしかない」
と言い、シュバルツは摩訶の首筋に噛み付く。
ズルズルと血を吸っていく。
しばらくすると、動きが止まり意識を失った。
摩訶を抱きかかえ、部屋をでようとするシュバルツに勇美は
「いやー、止めてくれて助かったよ」
と言う。
「俺はお前を助けてない。
摩訶を止めただけだ」
「血を吸って気絶させるだなんて強引だなぁー」
「お前なら摩訶を殺せた筈だ。
なぜ、殺さなかったんだ?」
「それは教えてあげられない。
さぁ、早く帰りなよ。
摩訶の母親を連れて」
「そうさせてもらう」
と言い、二人は部屋を出て行った。
部屋から出てきた摩訶の様子を見て母親が心配をしている。
「摩訶!
大丈夫なの!?」
「心配いりません。
ちょっと、貧血起こして」
「やっぱり、吸血鬼だから血を飲まないとダメ?」
「大丈夫です。
ルナに見てもらえばすぐに元気になると思います」
と言うと、母親は安心した顔をした。
「それじゃ、早く戻った方がいいね」
「ええ。
でも、安全運転でお願いします」
と言い、車に乗り込んだ。
一度、吸ってしまった血は魔術では回復しない。
特に吸血鬼の場合は。
恐らく目覚めた摩訶は激しい吸血衝動になる。
血を飲まなければそれは抑えられない。
武器を手にしただけでは。
その時、普通の人間なら血を吸われれば死ぬ。
両親は避けなければ。
ルナもだ。
となると、俺とアレクで細心の注意を払って行う必要がある。
それと、これが摩訶の初めての吸血行動となる。
初めて血を飲む事になるだろう。
そして、完全な吸血鬼となる。




