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異世界で奏でる幻想曲  作者: kuh*
異世界へ
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鎮魂歌(レクイエム)

しばらく進むと人影が見えてきた。


それと、さっきまでの街の風景とは違い廃墟が広がっていた。


それには見覚えがある。


私達が普通に暮らしている家。


そう。


住宅だ。


荒れ果ている事から誰も住んでいない事が分かる。


本当に人間がいないの⁇


「おい、シュバルツどこまで行っていたんだ?」


一人、男が近づいて来た。


そして、一緒にいるマカに気付く。


「そいつ、何だ⁇」


「ああ、さっき街のベンチにいるのを見つけた」


「見かけない服装だな」


ですよね。


「でも、吸血鬼だ」


怪しむ男の吸血鬼。


「だが、おかしい。

いくらなんでもこの“魔界”で武装しない吸血鬼がいるはずない」


うん⁇


“魔界”⁇


「はじめは俺もそう思った。

だからカイス様の所に連れて行こうと思ったんだ」


「ほう……」


シュバルツの言葉を疑う男の吸血鬼。


どういう事⁇


シュバルツの言葉もだけど……


何かあるのだろうか。


「……」


しばらく黙り混んでから叫ぶ。


「おい、お前ら!」


他の吸血鬼がこちらを向く。


「後から行くから先に戻ってろ」


ゾロゾロと他の吸血鬼の集団がどこかへ去って行った。


物凄い速さで。


一瞬にして消えた。


「……さて、説明してもらおうか」


と言う吸血鬼の男。


「コイツは俺と同じくカイス様の眷族のアレク・フェンリルだ」


同じ眷族。


つまり、同じ血を分けた仲間って事か。


「おい、何勝手に自己紹介しているんだ‼︎」


と怒るアレク。


「あっ……私、桜庭魔訶です」


「聞いた事ないな」


「まぁ……」


それはそうだ。


「なぜ、お前はそのどこの誰だか知らない吸血鬼を拾ってきたんだ?」


「……それは」


アレクから目を逸らすシュバルツ。


何かを察したのかアレクは


「……分かった。

マカ……と言ったか?」


と言い、マカの方に向き直る。


「単刀直入に聞く。

お前は何者だ?」


私⁉︎


何者か……か。


その質問には、以前に何回も直面した事があった。


けれど……


ここは正直に答える。


ここが私のいた世界では無く、異世界でも。


性格上、嘘をつくのは嫌いだ。


「信じてくれ……とは言わない。

私は人間。

交通事故に合って死んだ。

けど、気付いたらここにいた。

吸血鬼になって」


二人は顔を見合わせる。


「つまり、こことは違う世界。

人間の大勢住む」


証明出来るものは無い。


「……それが事実だとして、証明出来るものは⁇」


「無い」


私は即答した。


「ふむ。

確かに服装からしてこの世界のものでは無い。

人間か」


と納得するアレク。


この人は、物事を冷静になって考える人だ。


「アレク、そういえばカイス様は⁇」


辺りを見渡すシュバルツ。


「そうだった。

お前が離れた後、“奏者”の気配がする、と言ってどこかへ行った」


「そっか」


「“奏者”って⁇」


二人は唖然とした顔をする。


「本当に何も知らないみたいだな」


ようやく、確信してくれたアレク。


「“奏者”は、その名の通り歌を歌う事で夜叉を倒したり、時には付加や回復なども行えるらしい」


つまり、魔術師ね。


「だが、この世界で魔術が使えるのはエルフ族のみ。

歌もこの世界の住人は誰も知らない。

知ってるとしても滅んだ人間だけだ」


人間だけしか知らないのか。


この世界には歌が無いんだ。


なんか寂しいなぁー


その時だった。


「あっ、二人ともここにいたのかい」


綺麗な長い銀髪の男の吸血鬼がやって来た。


「カイス様‼︎」


この人がカイス⁇


男の人なのに凄い綺麗な顔立ち。


「可愛い女の子連れてるね」


「えっと……」


戸惑うマカ。


「シュバルツが連れて来た“人間”と名乗る吸血鬼です。

桜庭魔訶と言うらしいです」


「君だったのか」


「えっ……」


「僕が探していたお姫様♪」


⁉︎


「私……ですか⁉︎」


「シュバルツ君は僕より鼻がきくみたいだね」


少し照れるシュバルツ。


「いや、たまたまで……

ほっとけないって言うか……」


そうだったんだ。


優しいんだね。


「でも、何で私が……」


「まずは自己紹介。

僕はカイス・セラピス。

上級吸血鬼の序列六位」


序列六位。


それだけ、強いって事だよね。


「それで、マカちゃん。

君は歌の力を信じるかい?」


「歌の力⁇」


そもそも、それって魔法だよね??


魔法が私に使えるはずがない。


「歌は……歌える。

上手とは言えないけど。

それでもいいなら……」


「それじゃまず、テストだ」


テスト??


一枚の楽譜を渡される。


変わった形をしている譜面だ。


小学生の頃、ピアノを習っていたからそれなりに楽譜も読める。


一瞬、この楽譜を見た時は分からなかった。


何が書かれているのか。


だが、今は何故か分かる。


歌詞は載っていないが頭の中に入ってくる。


私はその楽譜通りに歌う。


「そこは常闇。

沢山の黄金の光の粒の世界。

彷徨う魂よ、蘇れ。

黄泉から目覚めろ。

そして再び歩みだせ」


とても美しく綺麗なメロディーで歌う。


すると、マカの体が黄金の光の粒に包まれた。


えっ??


吸血鬼の姿から人間の姿になった。


な、何これ……


「それは“黄泉がえりの歌”」


黄泉がえりの歌??


「黄泉の世界から帰ってくるっていうね」


胸に手を当てる。


鼓動が鳴る。


生きてる!!


感動のあまり、涙が流れる。


「吸血鬼の姿はこの世界だと“死”の象徴だから。

恐らくその姿になったんだよ」


「これが歌……なのか??」


と言うシュバルツ。


「ああ。

初めて聴いた」


「さてと、それじゃあ行こうか」


「どこに??」


「吸血鬼の本拠地だよ」


私、食べられる!?


「大丈夫。

何たって、吸血鬼の一番偉い人が君を探していたんだから」


一番偉い人??


「マカは俺が背負って行く」


マカを背負うシュバルツ。


こうして、私の第二の人生が始まった。


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