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異世界で奏でる幻想曲  作者: kuh*
歌と魔術
27/52

再び

「マカ‼︎」


そこには涙を流すルナの姿。


「私……」


本当に生きてる……


お腹に手を当てる。


傷が無い。


「良かった‼︎」


マカに抱きつくルナ。


何処かの洞窟らしい。


「マカ、その……」


何かを言いずらそうにしているルナ。


言葉に詰まっている。


「それは俺が話す」


そこへシュバルツとアレクが現れた。


「マカ、単刀直入に言う」


いつもと違い真剣な表情のシュバルツ。


「俺はお前の血を吸って吸血鬼にした」


⁉︎


「マカをあの傷から救うには……それしか無かった」


傷が無いと思ったらそういう事か。


吸血鬼になって問題が生じる事は……


「太陽の下に出れない⁇」


「ああ」


「一生死なない⁇」


「ああ」


「人間には……戻れない⁇」


「……ああ」


「人間の血を……飲む化け物⁇」


「…………ああ」


そっか。


胸に手を当てる。


確かに心臓はもう動いていない。


恐らく“血の武器(サングィス・テールム)”を持っていれば血の心配はないだろう。


でも、人間がいたのならきっと自分も……


マカはシュバルツの手を握って言う。


「助けてくれてありがとう」


素直にそう思う。


「恨んでいないのか……?

勝手に吸血鬼にした事……」


「そんな事ないよ。

だって、それでも生きていられるから。

もう……死ぬのはごめんだよ」


そう。


二度目の死なんて。


「ヴァイスは⁇」


「アレはマカの使い魔だ。

マカが瀕死の状態になって消えた。

契約はしているからまた、呼び出せる筈だ」


と言うルナ。


マカは目を閉じる。


「お願い、ヴァイス。

もう一度、私に力を貸して」


すると、黒い影からヴァイスが姿を現した。


「ヴァイス、また会えて良かった」


「マカなら大丈夫だと思った」


白いフワフワの体を撫で、抱きしめる。


その横で口を開けたままのルナ。


「おい、どうした?」


ルナの肩に手を置くアレク。


「魔法陣を描かずに使い魔を呼び出した」


「それがどうした?」


シュバルツもやって来た。


ルナは二人に言う。


「あたし達、魔術師は魔法陣や詠唱を唱える事によって魔術が使える。

魔法陣や詠唱が魔術の威力を上げる補助的なものだ。

なければ、魔力の質が下がる。

だから、多くの魔術師は魔法陣や詠唱を使う」


「つまり、マカはそれを使わなかったんだな」


「……となると?」


思考が追いつかないシュバルツ。


「マカはそれらを破棄して使い魔を召喚した。

ベテランの魔術師でも出来るものは数えるくらいしかいないんだ」


「じゃあ、マカの魔術のレベルが上がったのか⁉︎」


ルナは考え込む。


「それだけじゃない。

マカの周りにが金色の光の粒が舞っている」


「金色の光の粒⁇」


と首を傾げるアレク。


魔術的なものなのかルナにしか見えていない。


「あたしも見るのは初めてだ。

だが、聞いた事がある。

“ヴァルハラで選別された生きる者にはワルキューレの加護である黄金の光の粒を纏う”と」


それを聞き、ビクッとなるシュバルツ。


「それはあらゆる能力を飛躍させる力があるらしい」


「じゃあ、マカはヴァルハラへ行きワルキューレから魂の選別を受けたのか?」


「ああ。

そう言う事になるんだが……」


その場から離れようとするシュバルツを睨むルナ。


「確か、ここにもいたな。

ワルキューレの名を持つ者が」


シュバルツは立ち止まる。


「確かにそうだな。

シュバルツ、お前は吸血鬼になる前は何をしていたんだ?」


「……昔の事だ。

忘れた」


ルナは剣を抜く。


それを見て慌てるシュバルツ。


「お、俺は、ワルキューレの一族だった‼︎」


「……やっと、白状したか」


剣を収めるルナ。


「いや、それは脅しだろ」


呆れるアレク。


「だが、ワルキューレは女だろ?」


「そうだよ。

だが、何故か俺だけ男で産まれた。

だから、出てきた。

そこをカイル様に拾われたんだ」


「そうえば、スクルドさん心配してたよ」


「本当かよー⁇

心配しなくても俺は……」


そこにはマカの姿があった。


「マカ⁉︎

起きても大丈夫なのか⁇」


「うん、前よりも体の調子がいいかも」


と言い、話しに参加するマカ。


「やっぱり、マカはワルキューレに会ったんだな?」


「うん。

ルナの推測通りだよ。

スクルド・ワルキューレに会った」


マカは意識を失っている間の出来事を話した。


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