再び
「マカ‼︎」
そこには涙を流すルナの姿。
「私……」
本当に生きてる……
お腹に手を当てる。
傷が無い。
「良かった‼︎」
マカに抱きつくルナ。
何処かの洞窟らしい。
「マカ、その……」
何かを言いずらそうにしているルナ。
言葉に詰まっている。
「それは俺が話す」
そこへシュバルツとアレクが現れた。
「マカ、単刀直入に言う」
いつもと違い真剣な表情のシュバルツ。
「俺はお前の血を吸って吸血鬼にした」
⁉︎
「マカをあの傷から救うには……それしか無かった」
傷が無いと思ったらそういう事か。
吸血鬼になって問題が生じる事は……
「太陽の下に出れない⁇」
「ああ」
「一生死なない⁇」
「ああ」
「人間には……戻れない⁇」
「……ああ」
「人間の血を……飲む化け物⁇」
「…………ああ」
そっか。
胸に手を当てる。
確かに心臓はもう動いていない。
恐らく“血の武器”を持っていれば血の心配はないだろう。
でも、人間がいたのならきっと自分も……
マカはシュバルツの手を握って言う。
「助けてくれてありがとう」
素直にそう思う。
「恨んでいないのか……?
勝手に吸血鬼にした事……」
「そんな事ないよ。
だって、それでも生きていられるから。
もう……死ぬのはごめんだよ」
そう。
二度目の死なんて。
「ヴァイスは⁇」
「アレはマカの使い魔だ。
マカが瀕死の状態になって消えた。
契約はしているからまた、呼び出せる筈だ」
と言うルナ。
マカは目を閉じる。
「お願い、ヴァイス。
もう一度、私に力を貸して」
すると、黒い影からヴァイスが姿を現した。
「ヴァイス、また会えて良かった」
「マカなら大丈夫だと思った」
白いフワフワの体を撫で、抱きしめる。
その横で口を開けたままのルナ。
「おい、どうした?」
ルナの肩に手を置くアレク。
「魔法陣を描かずに使い魔を呼び出した」
「それがどうした?」
シュバルツもやって来た。
ルナは二人に言う。
「あたし達、魔術師は魔法陣や詠唱を唱える事によって魔術が使える。
魔法陣や詠唱が魔術の威力を上げる補助的なものだ。
なければ、魔力の質が下がる。
だから、多くの魔術師は魔法陣や詠唱を使う」
「つまり、マカはそれを使わなかったんだな」
「……となると?」
思考が追いつかないシュバルツ。
「マカはそれらを破棄して使い魔を召喚した。
ベテランの魔術師でも出来るものは数えるくらいしかいないんだ」
「じゃあ、マカの魔術のレベルが上がったのか⁉︎」
ルナは考え込む。
「それだけじゃない。
マカの周りにが金色の光の粒が舞っている」
「金色の光の粒⁇」
と首を傾げるアレク。
魔術的なものなのかルナにしか見えていない。
「あたしも見るのは初めてだ。
だが、聞いた事がある。
“ヴァルハラで選別された生きる者にはワルキューレの加護である黄金の光の粒を纏う”と」
それを聞き、ビクッとなるシュバルツ。
「それはあらゆる能力を飛躍させる力があるらしい」
「じゃあ、マカはヴァルハラへ行きワルキューレから魂の選別を受けたのか?」
「ああ。
そう言う事になるんだが……」
その場から離れようとするシュバルツを睨むルナ。
「確か、ここにもいたな。
ワルキューレの名を持つ者が」
シュバルツは立ち止まる。
「確かにそうだな。
シュバルツ、お前は吸血鬼になる前は何をしていたんだ?」
「……昔の事だ。
忘れた」
ルナは剣を抜く。
それを見て慌てるシュバルツ。
「お、俺は、ワルキューレの一族だった‼︎」
「……やっと、白状したか」
剣を収めるルナ。
「いや、それは脅しだろ」
呆れるアレク。
「だが、ワルキューレは女だろ?」
「そうだよ。
だが、何故か俺だけ男で産まれた。
だから、出てきた。
そこをカイル様に拾われたんだ」
「そうえば、スクルドさん心配してたよ」
「本当かよー⁇
心配しなくても俺は……」
そこにはマカの姿があった。
「マカ⁉︎
起きても大丈夫なのか⁇」
「うん、前よりも体の調子がいいかも」
と言い、話しに参加するマカ。
「やっぱり、マカはワルキューレに会ったんだな?」
「うん。
ルナの推測通りだよ。
スクルド・ワルキューレに会った」
マカは意識を失っている間の出来事を話した。




