黄金の世界で
ここは………
目の前は真っ暗だった。
確かイサミに……
お腹を触る。
傷は無い。
夢だったのだろうか?
痛みはなかった。
一瞬だった。
そうか。
私は死んだのか。
といとう、本当に……
何も出来ないまま。
世界が変わってもダメだったのか。
結局は私は、真っ当な人生を歩めなかったのか。
もっと色々とやりたかった。
やりたい事が沢山あった。
あの世界を元に戻してあげたかった。
歌を届けたかった。
皆に幸せになってもらいたかった。
ルナにもっと魔術を教えてもらいたかった。
アレクにもっと戦い方を教えてもらいたかった。
……シュバルツともっと一緒にいたかった。
元の世界でもあの世界でも未練ばかり。
何だろう。
あまりにも悲し過ぎて涙が溢れてくる。
どうして私の人生は……
私、ばかり……
そう思えてしまう。
そこへ一筋の光が差し込んだ。
??
光??
何だろう??
光と共に一人の女性が降りてきた。
天界で見た天使の様に白い服に綺麗な女性だ。
翼もある。
「……天使??」
「あら、可愛らしい子がヴァルハラへやってきたわね」
ヴァルハラ??
北欧神話に出てくるアレ?
目の前が一瞬にして黄金色の世界になった。
黄金の光の粒が舞っている。
「戦士の魂は私達に導かれここヴァルハラへ辿り着く」
もしかしてこの人……
「ワルキューレ……なの??」
「そうよ。
または、生きる者と死ぬ者を決める者」
「私はヴァルハラなんて所に来るような戦士じゃない」
「いいえ、この世界でも前の世界でもあなたは運命に抗いながら生きる様は戦士の様だったわ」
そうは考えた事がない。
「遅れたわね。
私はスクルド・ワルキューレよ」
スクルド・ワルキューレ……
そういえば……
「私、ワルキューレって名前の人をもう一人知っています」
「あら、マカちゃんの知り合いに?」
「はい。
シュバルツ・ワルキューレです。
……吸血鬼ですけど」
スクルドはマカの肩を掴む。
「それは本当?」
スクルドはガッカリした声で言う。
「あの子、吸血鬼になったのね。
……我が一族から吸血鬼が出ただなんて」
シュバルツとは関係があるようだ。
「シュバルツは私の孫よ」
!?
えっ!?
孫!?
「でも、マカちゃんはシュバルツとどういう関係なの??」
「私の……好きな人……です。
てか、付き合って??ます」
「まぁ!!
素敵じゃない!」
えっ、そうなの??
「そういうの興味無いのかと思ってた。
良かったわ」
と喜ぶスクルド。
「じゃあ、シュバルツは吸血鬼にされた訳ね。
……誰に??」
笑顔だけど完全に怒ってる!!
「カイス……です」
「あっ、察し」
なるほど。
あの吸血鬼のおかしさは、色んな所で広まっているのか。
「ワルキューレの一家に産まれたシュバルツ。
何故か男の子が産まれて来たのよ。
ワルキューレの役目は女しか出来ないから、女の子しか産まれない筈なんだこどね」
そんな事が有り得るんだ。
「だから、家を出ていったのよ。
あれから大分、経ったけど……
どうであれ、元気で良かったわ」
そうなんだ。
でも、私は……
「私は何もしてあげられませんでした。
こうやって死んでしまってし……」
「いいのよ。
それはそれで。
今からでも遅くないよ」
と落ち込むマカを慰めるワルキューレ。
「えっ、でも……」
私は死んでるし……
「さぁ、目を開けて。
あなたはここで死ぬような人ではない」
⁉︎
それって、生きろっと⁇
ワルキューレに生きろっと言われた。
という事は……
「この世界の行方をあなたに託します」
マカは静かに目を開ける。
そこには、この世界へ来て出会った仲間の顔があった。




