花の魔術師
一瞬、光で目の前が見えなくなった。
次に目を開けた時には、別の場所になっていた。
ここは………
「おい、早く離せ!」
未だにアレクにしがみついているシュバルツ。
「あっ、ごめん」
違う所にいる事に気付きアレクから離れた。
「そういえば、ルシファーが最後に言ってたのって……」
「あー、アレは……」
するとそこに、夜叉が現れた。
しかも、かなりの数だ。
「久々に会った気がする」
「まぁ、今まで比較的に夜叉が出現しづらい場所を選んで来てたからな」
アレク、シュバルツ、マカは武器を構える。
だが、ルナは
「……ルシファーが言った言葉が気になるならあたしにやらせろ」
「でも、数が多いし……」
「フッ、このぐらい朝飯前だ」
そう言うのであれば仕方ない。
三人は後ろに下がった。
それを確認するルナ。
仲間に怪我をさせたくなかったので、使っていなかった。
特にマカには。
それだけ膨大な魔術。
ルシファーはそれに気付いていたのか。
あたしの本当の魔術を。
次々とルナに夜叉が近付いて来る。
「……咲き誇れ」
腰から剣を抜いた。
「ロータス!!」
炎で出来た大きな蓮が地面に生えた。
そして、それが夜叉を包み込む。
花が消えると夜叉も消えていた。
次にルナは腕を空に掲げる。
「降り注げ」
複数の火の玉が空中に浮かぶ。
「チェリーブロッサム!!」
腕を振り下ろしたのと同時に空から炎で出来た桜の花びらが夜叉に放たれた。
群れをなしていた夜叉もあと一体までとなった。
「咲き誇れ、アマリリス!!」
あっという間に夜叉が消えた。
「ルナ、その力……」
「炎の魔術師、花の魔術師と呼ぶ者もいる」
「お前、今までは手を抜いていたのか?」
「いや、そんな事はない。
ただ、こんなに大きな力の魔術を使ったら戦い慣れてないマカには悪いと思ってな」
そうだったのか。
気を遣っていたのか。
「あたしの魔術は炎の属性を得意としている」
「凄いよ!
こんな魔術が使えるなんて!」
「マカの魔力や歌に比べたら大した事ない」
「そんな事ないよ。
綺麗だった!」
その言葉に少し照れるルナ。
「よし、これからは遠慮なく使うから気を付けろよ」
「うん」
ただ、戦うだけの魔術とは違う。
私の知っている魔術はただ、雷をだしたり水を出したりして攻撃などをするだけのもの。
さっきみたいに形を成した物で攻撃が出来るなんて思っていなかった。
凄いなぁー
夜叉が倒し切った所で休憩がてら、これからの計画を立てる事になった。
「遺跡かぁー」
遺跡を探せって言われても……
と悩んでいると
「そういえば、古くなった遺跡みたいなの通らなかったか??」
と言うシュバルツ。
「多分、都に行く前だ」
となるとアレクは知らないな。
遺跡なんて通ったっけ??
「ほら、アレだ。
古びた石碑のあった……」
思い出したルナが
「アレは廃屋だ。
昔は村だった」
あっ、アレか!
「音が聞こえた石碑だね」
「それももしかしたら、マカにしか分からない魔力なのかもしれないな」
なるほど。
そういう考え方もあるのか。
「でも、あそこに戻るには遠すぎる」
確かにあれは気になる。
悩む四人。
行先が決まらない。
「へぇー、遺跡かぁー」
!?
ここには四人しかいない。
しかし、聞いた事のあるここにはいない五人目の声が聞こえる。
「イサミ!」
黒いフードを外す男。
「やぁ、久しぶりマカちゃん」
ニコッとした顔をするイサミ。
「どうしてここに…」
驚いた顔をしるマカ。
「君達の話しは噂で聞いているよ。
何でも天界に行ったとか??」
四人は戦闘態勢に入る。
「いいよ、闘いに来た訳じゃないし」
えっ??
「ただ、君に伝える事があったからね」
私に??
マカは武器を下ろした。
いざとなったらヴァイスがいる。
私は視線を影に送った。
「なるほどねぇ〜
使い魔を使役出来る程になったのか」
気付いていたんだ。
確かイサミも恐らく魔術の類のものは使える筈。
この前の時はそうだった。
今なら分かる。
あれは魔術だと。
歌も歌えるしそう考えるのがいいだろう。
私と同じなんだ。
「そのままでいいから話しをしよう。
今度は君の仲間にも話してあげるよ。
これは大事な事だからね」




