嬉遊曲(ディベルティメント)
「良くぞ、この天界まで辿り着いた。
そして、お前らの決意を受け取った」
ルシファーはマカに近寄る。
凄く綺麗な人。
「マカ、お前は自分の身を犠牲にしてでもこの世界を護るのか?」
「私の身は既に死んでいます。
あちらの世界では。
何も失うものはありません」
「そこにいる仲間もか?」
マカは返事をしようとしたが、躊躇った。
何故、躊躇った??
「……そうか。
まぁ、良い。
それでは、ここへ来た目的を答えろ」
「ここへは魔術を教わりに来ました。
魔術については何も知らないので……
それに、歌も魔術の一種ではないかと」
マカが言い終えた後にルナが
「エルフの持つ魔術とも違う。
そうなるとこの世界には、天使しか頼る魔術の才能の持ち主がいないからです」
と言う。
ルシファーはマカの服の袖を捲る。
「確かにかなりの魔術刻印の数だ。
それだけ魔術の供給が多い。
普通の人間なら耐えられなくなり死ぬレベルだ」
やっぱり……
人間ではない、のか。
「それに使い魔まで召喚している。
使い魔は魔力を供給し続けなければ、消えてしまうからな」
そこまで意識はしていなかった。
そうだったのか。
「その魔力は天使にも匹敵するもの。
何故、この様な魔力を持っているのか。
それは歌の力のせいなのか。
分からないな」
天使ですら分からないのか。
「お前の正体は何だ?
人間なのか吸血鬼なのか魔術師なのか。
いずれ、ハッキリさせる時が来る。
それを忘れるな」
そうだよね。
こんな中途半端じゃね。
「時にそれはお前の存在を示す。
この世界で生き続けるのであればな」
私は頷く。
「さて、話しを戻そう。
これを」
!?
ルシファーから一枚の楽譜を渡された。
「お前にならこれが分かるのだろう?」
読める。
それに音楽が頭に流れる。
「歌え。
歌の力を見せてもらおう」
マカは深呼吸をする。
「吹き荒れろ嵐よ。
吹き付ける風よ。
その力で空へ舞う。
風よ、風よ。
舞踊れ草や花よ
どうか、大空へ」
曲調の明るく、歌っていて楽しい曲だ。
「嬉遊曲……」
そう。
きっとそれが合う。
すると、突風が吹いた。
「なるほど。
風魔法か……」
これは風の魔法なんだ。
「その楽譜をやる」
!!
「あ、ありがとうございます‼」
「その代わりに頼みがある」
??
「お前が何者か答えを出した時にまた、ここに来るが良い。
その時は力を貸そう」
「はい、絶対に来ます!」
「それとここには魔術を教わりに来たと言ったな」
「そうです」
と言うルナ。
「私達、天使の使う魔術は天使以外に教える事が出来ない掟となっている」
えっ??
「力がありすぎるが故にな」
そういう事か。
「だから、教えてやれる事は進むべき道のみだ」
だから私に存在意義について聞いたのか。
「進めよ、幼き人間よ。
歩め、崩壊した世界を。
仲間と共に」
「……はい」
「私から話す事はもうない。
お前らならこの世界を救えるかもしれないな。
何も情報はあげられなかった」
「いいんです。
自分達でまた見つけます。
色々とありがとうございました」
「そうか。
……そうだ、一つあった」
帰ろうとした四人は足を止める。
「この世界は今、立ち上がろうとしている。
あの日から。
そして、探せ。
楽譜の遺跡を。
そこへ行けば進むべき道が分かる」
楽譜の遺跡??
「何処かに音楽について記された遺跡があるとされている」
そんな遺跡があるんだ。
「それと、ルナよ。
お前はもっと本来の力を振るうべきでは?」
その言葉ではっ、とした顔をするルナ。
「わ、分かりました」
「それではまたな」
四人は城の外に出た。
ここから地上に通じている洞窟へ行く。
どういう仕組みなのかは知らないが。
空と地上を繋ぐなんて不思議なものだ。
城から直ぐの所にあった。
中へ入るとそこには泉があった。
まさか……
「皆、泉の中に入れ。
あたしが転移魔法を唱える」
「それで地上に戻れるの?」
「そうだ。
あたしも話しでしか聞いた事ないからな」
「おい、それって……」
恐る恐るルナに聞くシュバルツ。
「ああ。
初めてだ」
「……大丈夫なのかよ!?」
「よし、シュバルツ。
お前は空から落ちて行け」
と言うルナ。
「……いや、いい」
と言い、アレクにしがみつく。
マジかよ。
四人は泉に入る。
不思議と冷たくない。
服も濡れていない。
「これ、どうなっているの?」
「魔術の一種だ」
ルナは片腕を上げる。
何かを呟いている。
転移に必要な詠唱だろう。
すると、泉が光を放った。
四人の姿は泉から消えた。




