天界
真っ白な空間に白い建物。
あちこちに天使がいる。
あれは量産された機械の天使。
その他にも天界で暮らす天使の姿がある。
周りの天使は、私達の事を不思議そうに見ている。
この世界には、あまり外部から人が来ないのだろう。
しかし、アレだなぁー
「女の人しか居ないんだね」
「そうだ、マカ。
ここは女の人しか居ないんだ」
と嬉しそうなマカとルナ。
「いや〜
この世界は羨ましい」
「だよなー
男の目を気にしないで過ごせる」
女子トークを始める二人。
それについていけないシュバルツとアレク。
「あの二人、変なスイッチが入ったぞ」
「そうみたいだな」
触れると厄介な事になるかと思うので触れずにそっとしておいた。
しばらく道なりに歩くと白い大きな城が見えて来た。
ここが中心か。
入口には一人の天使がいた。
「私は四大天使の一人、ガヴリエル。
ルシファー様の元までご案内致します」
うわぁー
本当に羽が生えてる!!
「本当にここは、女の人しかいないんですか?」
「そうです。
男を入れるなど有り得ません」
と言い、シュバルツとアレクを睨む。
そっか。
種族によって考え方は違うだろうからな。
「………あなたは歌が歌えると?」
「まぁ、一応……」
「あなたは人間の気配よりも吸血鬼の気配に似ています。
そんなあなたが歌えるとは思いません。
しかし、入口で歌を歌って見せた、と」
何で私が吸血鬼の気配に??
確かに一度、なりかけたけど。
“血の武器”を取り出す。
それを見たガヴリエルはまた不思議そうに言う。
「人間であるあなたがその武器を持つ理由も分かりません。
本来、吸血鬼が持つ為の武器。
それを扱えるのも不思議です」
確かに私も思った。
でも、なんの問題も無く使えている。
「それに、“血の武器”は自らの血を与える事で更に力を与える事が出来る。
そんな事を人間が行えば直ぐに死んでしまう」
えっ!?
驚くマカの顔を見てガヴリエルは呆れる。
「それも知らずに使っていたなんて……
なんの為の仲間なのですか?
あの二人の吸血鬼は」
そんな事をウルドは言っていなかった。
言う必要が無かったのか、あえて言わなかったのか、黙っていたのか分からないけど。
きっとあの二人なら言ってくれる。
私に関わる事なら。
それも命に。
「まぁ、血を求めた事が少なからずあるのなら別の話しですが」
血を求める……??
「たまにいるのです。
吸血鬼でもないのに血を求める人間が」
それって……
マカは元の世界にいた時の事を思い出した。
私は以前、自傷行為を何回もしていた。
ストレスから解放される為に。
痛みを感じて生きている事を確かめる為に。
生きている自分が嫌になった時。
無性に血が飲みたくなった時。
流れる血を見て安心したい為に。
あの頃は流れる血をコップに貯めて飲んでいた。
私が一番最初に魔界に迷い込んだ理由ってもしかして……
その時、後ろにいたシュバルツに腕を引っ張られた。
そして、そのままマカを抱き締めた。
話しを聞いていたみたいだ。
「大丈夫だ、マカ。
俺らを信じろ」
「……うん」
……ありがとう。
「誰がなんと言おうとマカはマカだ。
それが吸血鬼だとしても人間だとしても。
それには変わりない」
そうだよ。
私にはこうやって思ってくれている仲間がいるんだ。
「おい、いつまでそうやっている?
ルシファー様の所まではもう少しで到着します」
四人は再び、歩き始めた。
そう。
私は私。
そんな答えは以前も出している。
もし、吸血鬼になったとしてもエルフになったとしても天使になったとしても。
自分は自分なのだ。
ただ、種族が変わっただけ。
少し生活が変わるだけ。
大きな扉の前まで来た。
二人の天使がそこには立っていた。
「ガヴリエル様、ルシファー様がお待ちです」
と言い、二人の天使が扉を開けた。
そこには、六枚の羽を持ったエメラルドグリーンの綺麗な長い髪の天使がいた。
あれが天界の支配者。
熾天使ルシファー。
他の天使とは気配が違う。
とても、威圧感がある。
「良く来たな、地上の者よ」




