恋の記憶
「それぞれの旅への決意を受け取った。
これより天界の入口を開ける。
ルシファー様がお待ちです」
残像が消え、大きな門が現れた。
ここが本当の天界への入口。
まだ私達は玄関にいたのか。
「マカ、あたしはさっきの宣言通りだよ」
「そうだ」
と言い、マカに近寄るルナとヴァイス。
「俺もだ」
と言い肩を組んでくるアレク。
そんな様子を嬉しそうに見ているシュバルツ。
自分には皆の様に明確な目的は無い。
世界の為とか村の為とか仲間の為とか。
大きな理由は無い。
アレクの様に仲間を護れるほどの力は無い。
だから、せめて一人でも。
マカを護りたい、と思った。
笑顔が好きだから、歌う姿が好きだから、彼女の全てが好きだから。
人間と吸血鬼。
誰も想像も出来ない組み合わせ。
「おーい、シュバルツー‼︎」
シュバルツに手を振り呼ぶアレク。
「おい、アイツ何やってるんだ?」
と言うルナ。
「シュバルツー‼︎」
手を振りジャンプをして笑顔で叫ぶマカ。
シュバルツは一歩前に出る。
「俺、マカが好きだ」
と言い、マカに抱きつくシュバルツ。
「私も好きだよ、シュバルツ。
それに、私が初めてここに来て助けてくれたのがシュバルツで良かった。
今は本当にそう思う」
その隅で
「えっ、マカも?」
と言うアレク。
「あたしは密かに相談を受けていたけど」
「俺はシュバルツから相談を……」
「いや、バレバレだから。
相談しなくても良かったんじゃないのか?」
「いつから知っていたんだ?」
「幻想の都を出てから」
ルナはマカから相談を受けた時の話しを始めた。
それは、二人で魔術の特訓をしている時だった。
運良くシュバルツはアレクと稽古をしている。
「マカ、ちょっと休憩するよ」
「うん」
一緒に行動しているし、こんな機会ない。
「ねぇ、ルナ」
「どうしたんだ?」
マカは俯いている。
「体調が悪いなら……」
その言葉を遮る。
「違うの‼︎
そうじゃなくて……」
みるみると赤くなっていくマカの顔。
「んで」
それを悟ったルナ。
「ふぇ⁇」
返事にもなってない。
あのマカがこれだけ動揺している。
「まぁ、シュバルツの方だろうね」
「⁉︎
どうして分かったの‼︎」
分かりやすい反応だなぁ〜
と少し面白がるルナ。
「いや、アイツのアピールも分かりやすいからなぁー」
また、俯くマカ。
「初めて会った時からなんだよ」
「なるほどね。
何で?」
初めて会った時の事はだいたい聞いている。
「確かに初対面で可愛いとか言われるのはちょっと……
でも、本当は初めての世界で一人きりで寂しかった。
自分が死んだとなれば尚更。
心細かったんだ。
けど、何者かも分からない私を助けてくれた。
警戒もなく。
私にはそんな事出来ないから。
……他人を信用出来ないから。
だからそういうところに惹かれたのもある、かな。
それと、人間じゃないから安心したのかもしれない」
人間じゃないから?
少し疑問に思う点はあったが。
いや、問題点はある。
「マカ、良く考えろ」
「何?」
「奴らは吸血鬼だ。
んで、マカは人間。
あたしも長く生きているが人間と吸血鬼なんて一緒にいた事がない。
吸血鬼からすれば人間は獲物、人間からしたら吸血鬼は捕食者。
それでいいのか?
喰い殺される日が来るかもしれないんだ」
マカは不思議そうに言う。
「それは大事な事?
私はもう死んでるようなものだし、死んだって構わない」
そう言ってしまうマカはもう、生き方を忘れてしまっているなだろう。
誰だって好きな人とは一緒にいたい。
自分を犠牲にするのがマカだったな。
「それに人種が違ったって何も変わらないよ」
と言うマカ。
全てをアレクに話したルナ。
「と言う事だ」
「確かにマカを見てると時々思う。
自分より他人を気遣うところが」
「ああ。
だから、これをきっかけにな。
シュバルツを好きなった事によって失いたくない気持ちもあるが、自分も生きて一緒にいたい、と思える様になってもらえればいいんだけど」
「そうだな」
二人を見守るアレクとルナ。




