航空旅行
どこまでも続く空を飛ぶ。
何も無い果てしなく続く青を。
「マカ、お前は話しに聞いた通りの人間だった」
えっ??
「吸血鬼の長ウルド。
奴から連絡が来ていた。
お前らが来るとな」
そういえば、言ってたな。
話しをつけておくって。
「やっぱり、ウルド様は話していたんだな」
と言うシュバルツ。
「それじゃあ……」
リツカは分かっていて……
「知っていた。
お前らが来る事を。
だが、他人の意見どはなく自分で見極めたかったんだ。
お前達の意思がどれだけ強いかな」
そうだったんだ。
「そうしたら、お前らは私の娘を泣かした。
それで分かったから十分にな」
「そういえば、あの楽譜……」
楽譜を貰うことになった。
「あれは私の夫の遺品。
イチカにとっては父親の形見」
!?
「そんな大事な物を……」
「いいんだよ。
私が持っているより役に立つみたいだからな」
大事にしなくちゃ。
「夫はな、人間が好きだったんだ。
乱獲事件が起こっていても。
幼い頃に人間から聴いた歌が忘れられなくて。
その時に貰った楽譜らしい」
思い入れのある物だったんだ。
「自分も歌えるように練習もしたとか……」
凄い!
「だが、乱獲された。
一部を見ていた奴によると人間に講義をしたらしい」
講義??
「人間とドラゴンが共存する世界をな」
人間とドラゴンの共存……
「訴え続けたが殺された。
そのまま人間に連れて行かれて。
講義をして訴えるだなんて、私の旦那らしい死に方だ」
「本当に人間が好きだったんですね。
……一緒に暮らしたいほど」
そう考えている人がいる。
思ってくれている人がいる。
本当にこの世界で人間の存在は大きかったんだ。
良い意味でも悪い意味でも。
滅亡してもなお。
それだけこの世界の住人に影響を与えているんだ。
「……そうだな。
今日、改めて思ったよ。
あんなに綺麗な歌を聴かせてもらって、嬉しそうな娘と孫を見ていて。
人間も私らと同じに家族を持ち仲間がいる。
大切なものに対する気持ちは変わらないって」
良かった。
そう思ってもらえて。
すると、空が少し明るくなって来た。
「あそこが天界の入口。
ここまで邪魔が無かった事を考えて間違いなく天界には行けるだろう」
あれが天界への入口……
雲の隙間から光の柱が数本見える。
「普段ならこの辺りは下級天使が見張りをしている」
天使にも位があるんだ。
「恐らく、何かを感じたんだろう」
リツカは少しスピードを上げる。
「上級天使である大天使ミカエラは天界の支配者だ。
奴がそう感じているのなら、な。
あたし達は歓迎されているなかもな」
「歓迎な……
されてればいいけどな、っと」
シュバルツとアレクは腕に紫外線防止の腕章を付けた。
「シュバルツ、何でそれ付けたの⁇」
「あ⁇
天界は地上よりも太陽の光がヤバイらしいからな」
なるほどね。
「おい、シュバルツ。
腕章の位置がズレている」
と言い、シュバルツの腕章の位置を変えるアレク。
「いや、俺はここがいいんだ」
「ダメだ。
そこだと……」
腕章の位置について揉め始める二人。
えっ、何やってるの……
そこ、こだわらなくてもいいでしょ!?
二人のやり取りを無視して、ルナと話す。
「天使は吸血鬼と同じく階級によって強さが変わるんだ」
「でも、今の話しからして……」
「熾天使が一番上の階級だ。
その後に大天使がくる」
確か、元の世界ではミカエラは七大天使といわれる中の一人。
そして……
「天使の中にルシファーっている??」
「いた、と言うべきかな」
過去形??
「ある日を境に姿を消したらしい。
それまでは、天界を統べる熾天使だった」
「ある日って……」
色んな場所で話しを聞いていて分かってきた。
だいたいそれは同じだ。
「人間が滅亡した日だ」
!!
やっぱり!!
全ての始まりはその日にある。
イサミが人間を滅ぼしたあの日に。
人間が消え、この世界には呪いがかけられる。
そして、夜叉と呼ばれる人間の怨念から出来たとされる怪物。
一体、あの日に何が起こったのだろう。
どこからバランスが崩れたのか。
全てはあの日が終わりであり始まりだったのだ。
私達のまだ知らぬ何かが。
天界への入口が徐々に近付いて来た。




