白き狼
途中、廃墟となった街で休憩をする事になった。
とても静かだ。
「あともう一息か」
私は魔術が使えるがただの人間だ。
吸血鬼やエルフの様な体力はない。
つまり、私の為の休憩である。
その時間も無駄にする事なく、ルナに魔術について教えてもらう。
「使い魔??」
「ああ。
式神……とも言う」
「それって作れるの??」
「使い魔の場合は召喚だ。
ちなみにその不死鳥はラーマの使い魔だ」
そうだったんだ!!
ホロッと鳴き、私の頬に体を擦り付ける不死鳥。
「使い魔は時に術者に力を与える事が出来る」
使い魔って言われると何となく、悪魔のイメージしか出てこない。
「マカは魔力があるから召喚出来るだろうな」
使い魔かぁー
魔術師って感じでカッコイイなぁー
「まず、召喚陣だな」
ルナは地面に召喚をする為に必要な魔法陣の描き方を教える。
「これ自分の血で描くんだからな」
!?
血で!?
「代償……って言えばいいか?
それが必要なんだ」
なるほどね。
「暁もそうやって産まれたの??」
「暁??」
と言うシュバルツ。
「あー、さっき不死鳥に名前付けた」
赤いから暁だ。
単純過ぎるけど。
「そうだな。
だいたいの使い魔はこれで召喚する。
あとはどのような使い魔がいいかだな。
だいたい、主人に似たのが出てくるって話しだけど」
主人と似たのか。
「マカは人間だし、多くの血は流せないから他に何か必要だな」
「他に??」
「もっと魔力の上げてくれるものだ。
触媒だな」
触媒??
「召喚したい使い魔に縁のある物を使うとかな。
とりあえず、これを渡す」
と言い、ルナに小袋に入った毛を渡された。
「これ何??」
「召喚したら分かる。
魔法陣を描いたら詠唱とその触媒、最後に自分の血を一滴だけ垂らすんだ」
言われた通りに魔法陣を描いた。
そして詠唱。
「我を護りし者。
汝は我が元へ」
毛を真ん中に置き、血を一雫垂らす。
「契約を結びし者よ。
召喚に応じ、我の前に現れよ」
すると、光に包まれる。
その中から一匹の白い狼が姿を表した。
!?
「我が名は“フェンリル”。
ロキと女巨人アングルボザとの間に産まれた三兄妹の一人」
神々に災いをもたらすとされていた。
ラグナロクにて最高神であるオーディンと対峙して飲み込んだとされている。
巨大な怪物だと北欧神話にはそう伝えられている。
だが、現れた狼は巨大ではない。
普通の狼と変わらない大きさだ。
「娘、お前が俺の主か?」
私は頷いた。
「そうか」
「使い魔と術者は魔力により繋がっている。
マカの想いは使い魔にも共用されるからな」
「エルフの言う通りだ。
マカ、お前が何者なのかも分かる」
そうなんだ。
「じゃあ……」
フェンリルは私が何を言いたいのかを理解したらしく
「……分かった。
それが我が主の最初の命令だな」
フェンリルは静かにその場に座る。
そして、マカはフェンリルにそっと近寄り優しく撫でた。
「ふふっ」
モコモコしてふわふわして可愛いなぁ〜
「おい、終わったか?」
見張りをしていたシュバルツとアレクが戻ってきた。
マカがフェンリルと戯れる姿を見て言う。
「ルナ、アイツ何しているんだ?」
「まぁ、しばらく放っておこう」
と言い、マカを見ているルナ。
「マカ、俺に名前をつけろ」
名前??
「それがお前との契約の証になる」
「分かった」
どんな名前がいいだろう。
「ヴァイス」
「………白か」
「うん」
見た通りけど。
すると、ヴァイスは光り額に青い模様が浮かび上がった。
マカの右手の甲にも同じ模様が浮かび上がった。
「これで契約成立だ」
「よし、休憩はいいか?」
と立ち上がるルナ。
「そろそろ行く。
無事に召喚も出来たしな」
「うん!」
「何かあったら呼べ。
俺はお前の影にいつでも居る」
と言い、足元の影に潜んだ。
また一人、新たなる仲間が出来たのであった。




