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入浴室って、お父さんって・・・

作者: 上原碧桜

この小説は、ちょっと変わった視線からの物語です。

過保護に育てられた子供の信愛は果たして・・・??

【小説作品】入浴室って、お父さんって






入浴室と言う空間で、私がシャワーと共に泡と


戦っていました。私の名前は遠野莉子とおのりこ


そしてお父さんの名前が、えーと、えーと、忘れた(笑)。


何で忘れたんだろう。お父さんの名前は・・・・・・・。


「おい、莉子!早く風呂から出なさい」


お父さんが私に声を掛けてくれた。


「あぅ、今いいとこだったのに」


泡を作り出してプクゥーと膨らましていたものが


消えてしまった。でも、私はまだガキっ子だと言うことかな。


こんな入浴室で泡を作るなんてまだ少女なのかな。


分かんなくなっちゃう。


「お父さん、泡が消えちゃったじゃん」


風呂上りに私が言うと、お父さんが大袈裟に笑った。


「何で笑うの!!!」


「いや、俺の小さい時も泡で遊んでたからな・・・」


そう、私はお父さんの小さい頃に似てるの。


活発でいい子なのに、時にはやんちゃくれな場面もあり、


そういうところはお父さんにそっくりなのである。


私が入浴室で泡を作っているのは、いつものこと。


それを楽しそうに笑ってる私も不気味なんですけれども!


あっ、お父さんの名前やっと思い出した。


遠野覚志さとしって言うんだ。覚えておいてね。


そんなことは聞いていなくても、もう夜中の9時だ。


私は8時から風呂場に入っていて、それも1時間かけて


泡を作っていたと思うと、体を洗っていた時間と言うものは


遠い昔に忘れていた。


お父さんが、「お前はまだ小学4年生だ。これからが大人に


なれるときなんだぞ」といつもお父さんは優しく言ってくれる。


そんなお父さんが好きだ。


私の仕草は、頭をポリポリ掻くことが多いが、頭が痒いのは


当然だ。髪の毛にシャンプー浸けるのは、一週間に一回だけ。


私ってめっちゃ不潔やん。信じられない、と私が思う。


私が思ってどうするねんな(笑)。


私が顔を、顔を洗うやつ、なんだっけ。顔を洗う・・・


「洗顔剤だろ」そう、洗顔剤を頭に洗っちゃう惚けてしまう私。


お父さんが不思議そうにまた笑った。


「莉子、何で洗顔剤を頭に浸けるんや・・・頭冷やしてこい」


あっ、洗顔剤とシャンプーの違いがわからなかっただけだもん。


私、シャンプーも洗顔剤も、石鹸も、鈍感で一緒にして洗って


しまう。でもいいもん。洗うものはみんないっしょ!!


莉子って一体不思議ちゃん??


私が不思議ちゃんでもいいです。


9時を回ったところで、私は顔を石鹸で洗うと、歯磨きをしようと


して、石鹸で歯を磨いてしまった。


「そこは間違いないだろ・・・(笑)」


またお父さんが笑った。そんなお父さんと私の関係って好き。


いつまでもお父さんと一緒でいたい。


私はお父さんに甘えているのか、布団の中に潜るのだって


お父さんと一緒。やっぱり私は甘えっ子。だって一人娘なんだもん。


そりゃそうだ。莉子は小さい時からちょっとしたことでプクーっと


口を膨らませる癖があり、まだ小学4年生の8才であろうが、


私がまだ少女だってことをここに証明してやります。


プクーッと膨らます泡は、屋根まで飛んでいかなかった。




翌日、私がお父さんの体の上に伸し掛って寝ていた。


「莉子、お父さん重いんだけど・・・」


「むにゃー、私まだチャボに餌あげてないよ、むにゃむにゃ」


完全に鶏の夢を見ているな、とお父さんは思った。


ただお父さんが新聞を読んでいても、莉子を怒ったりしない。


何でか分かるでしょうか。体重16キロもある莉子が、俺の


上に乗っかかってるから苦しいのである。


「ちょっと重い、ぃぃだろー」


莉子が寝ぼけて、「まだチャボはいません」と言った。


「いい加減にしなさい。もう朝の7時だろ」


お父さんが顔を真っ赤にしながら、新聞がくちゃくちゃに


なってから、思いっきり莉子が寝返った。


「お、は、よ、う」


お父さんは呆れた顔をして、おはようの声を微かに聞いた


莉子の声に反応した。


新聞はくちゃくちゃになったまま、そのまま莉子の足が


新聞に絡まった。


ああー、新聞さんがくちゃくちゃになってしまったね。


莉子が新聞を読んでいるお父さんの上で寝ていたからだ。


何て寝相が悪い莉子なんだ、とお父さんはまた呆れ返った。


こうして、一日の出来事を振り返るお父さんと莉子でした。


いつもこうして二人は、覚志が莉子を育てて、8年。


まだまだ先が長いと思われるのであった。


この物語は、まだ序章に過ぎなかった。


これからがふたりの親子の戦いが始まったばかりだ。


何で戦う必要があるのかもふたりは笑う今日の姿でした。






終わり。



1982年5月、岐阜県生まれ、上原碧桜うえはらあおさく

代表作品としては、「快速名古屋行きは永遠に」、「青春「仲良し」」などが

あります。独創な世界観を生む人物で、ちょっと変わりもの、作者です。

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