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話を短く、かつ、展開を早く。とか考えていたらこうなりました。この章も残り二話。体調も戻ってきたので、ぽちぽちと完結に向かって進んでいきます。
誤字脱字が多い作品ですが、お付き合いください。
「死ぬかと思った、死んだと思った、死を覚悟したっ」
青い顔でがくぶると身体を震わせ、ライさんの身体にしがみついて生きている事実に泣きそうです。いや、もう泣いてたやるっ。
遥か上空、私達がいなくとも浮かぶ魔王城を見上げて・・・・・・私、よく、あそこから落ちて生きてるな。改めて恐怖に震えた。生きてるって素晴らしいね。
「俺がいるのに死ぬはずねぇだろう」
「心が死にます」
「心も護るから、安心しろ」
優しい、慈愛に満ちた表情で言われて――ときめなかい。
護るならやらないでください。口から出そうな言葉をなんとか呑み込み、頬を引きつらせる。状況が違ったらときめいたのに、残念でしかない。本当、残念だ。がっかりだ。
「・・・なんの用だ」
うわ、エステルの声がかなり不機嫌。
「邪魔しに来たなら帰れ、それか死ね」
「・・・悪いがぁ、今は相手をしている暇はないぞぉ」
「相手をしてもらうつもりはない。ただ」
バルバゼスとエステルに向けて、ライさんが笑った。
それはもう、ぞっとするほど綺麗で悪寒が走るような笑みを浮かべて。・・・鳥肌立った。
「面倒ごとを省略しに来ただけだ」
「はぁ?」
「そろそろ・・・ああ、来たな」
「?・・・はぁ!?」
眼が飛び出る程、バルバゼスが驚いた。
うん、私も眼が飛び出るかと思った。だって・・・本当に飛ばしてきたんだもん、ルキの方にいた時の三神に憑かれた皇帝陛下。
・・・空を飛ぶ、皇帝陛下。
「う、わぁ」
頭から地面に突き刺さり、無様にも両足をばたつかせ両手で地面から頑張って頭を出そうとする・・・皇帝陛下の姿をした時の三神。
これ、本当に時の三神?
とてもじゃないけど、神とは思えない。てか、思いたくない。・・・わぁ、ド派手な着地音ですね。土煙で前がみぇねよ!あと振動で倒れるかと思った!!
「・・・けむ」
咳き込んだライさんが、風の魔法で視界をクリアにしてくれた。・・・ああ、空気が美味しい。
「なんでまた、そんな掴まり方。どうせ掴まるなら、腰か首にしてくんねぇか?」
「・・・っは!いつの間に座ってたんだろう、私」
また、ライさんの足にしがみついてたことに吃驚!・・・失礼しました。
「これは、いったい、どういうつもりなのかしらねぇ!」
「っひ、る、ルキ・・・顔が、怖いよ?」
「結局、森の聖女しか殺してないのよ!アタシ、まだ、半殺しにもしてないのよ!欲求不満で爆発しそうっ!!」
紅潮した顔で、身体をふるふると震わせるルキは・・・正直、ただのエロい人にしか見えない。無駄に胸があるから、余計にそう思ってしまう。けどまぁ、ここにそんなエロさに反応する男はいない。
代わりにエステルがルキを殴ってた。流石です。
「面倒ごとを省略ってなぁ、おい・・・ただ集めただけだろうがぁ!!」
吠えるバルバゼス。
ごもっともです。
「あとすこしでうで、たべられそうだったのにぃ~」
「いま喰えばいいだろうが!」
喚く魔王にただ笑うだけのライさんは――――額に青筋を浮かべていた。こわ。
ひぃっと戦き、顔ごと視線をそらした私の耳に打撃音とか聞こえません。斬撃とか聞こえませんから。あ、ユフィ―リアさん達が来た。てか、現れた?
・・・ライさんの影から現れたルシルフルの頭が、容赦なく踏まれた。哀れ。
「さて、戦力的にはこちらが優位」
演技かかった動作で両腕を広げ、ライさんが笑う。
「手早く片付けようか」
タイミングを計ったように太陽が雲に隠れ、隙間から光明をこぼす。まるで舞台のスポットライトのように光がライさんを照らす。物語の一ページにありそうな絵面だ。作為を感じる。
同時に、意味の分からない奇妙で、気味の悪いモノを感じた。
何か、そう、何か・・・私にとってよくない何かが起きるような――――。
「そう簡単にはいくか・・・!」
聞き覚えのある、懐かしい声にこれか!と絶望しかけた。
「勇者である俺がいる限り、魔族は滅ぶ定め!悪は正義に負けるのが必定だっ!
爆音と共に現れた・・・見覚えがありすぎる3人の影。てか、元彼と姉と幼馴染だ。
センターにいるのは何だか歴史と由来がありそうな、いかにも勇者が持つに相応しい大剣を構え、無駄に白い歯をきらりと光らせた――――グレンシード。
格好いいと思っているのか、子供がよくやる勇者ごっこそのままのポーズを決めている。
あ、勇者ごっこじゃなくて実際、本当、悲しいことに勇者だった。
「この世界の平和は、俺が守るっ!さぁ――――リィンを解放しろ」
世界の平和を守る、と言っておきながら、私の解放ってなんかおかしくない?ねぇ、おかしくない?誰かツッコんでくれないかな。
「そうよ!私のリィンを返して!」
いつ、私は姉のモノになったんだろう。
グレンシードを蹴り飛ばし、私に近づこうとする姉を冷めた眼で見つめた。
「危ないから前にでないでくれ、フィン姉さん!」
無謀にも近づこうとする姉を必死に抑える、幼馴染。
・・・あんなにやつれた顔をしていたっけ?記憶にある姿とだいぶ違って、他人の空にかと思ってしまった。
「邪魔をしないで、エニマ!あそこに、すぐそこに私のリィンがいるのよ?!放して、放して頂戴っ!」
「駄目だ、フィン姉さん!アイツの傍には魔族がいるんだぞ?!そんなことろに、何の力もないフィン姉さんが近づいたら・・・すぐに殺されるっ」
手負いの獣でもないのに、そんなあっさり殺しは・・・。ちらりとライさんを見て、3人の魔王を見て、そしてユフィーリアさん達を見てから私は空を見上げた。
うっかり、で殺しそうな方が何人かいるわ。
否定できない事実に、口を閉ざしておくことにした。
「戦況は優位、なんて言ってたけどさぁ」
泥で汚れた頬を乱暴に拭い、命の聖女が笑う。
「勇者がいるこの状況でも、そんな戯言言えるかな?」
「戦力さから見て、余裕だろうが!」
オルデゥアが不敵に笑い、中指を突き立てた。・・・わぁ、どこの不良ですか。魔王なのに似合いすぎるよ、そのポーズ。
「本当に、そうかな」
「どう見てもそうでしょうが!七聖女もアタシとエステル、リィンがこっちにいるのよ?そっちは命の聖女、あんただけ。ねぇ・・・その不愉快な笑み、やめてくれないかしら?」
「何を言っているのかな?」
こてり、と命の聖女が首を傾げた。
その表情は本当に、ルキが何を言っているのか理解していない顔だ。だからこそ不気味にしか思えない。
状況を見て。
足元を見て。
2人の聖女がいないこと、気づいてないはずないよね?だとしたら馬鹿だ。盲目的馬鹿だ。
「煌、時、森と3人の聖女が死んだ。魔王もこちら側。勇者と命の聖女で何が出来る?」
エステルは見下すように言った。
「死んだ?・・・ああ、確かに森の聖女はそこの憤怒の魔王が殺したけど、煌も時も死んでないよ?ほら、肉体が再生してるから。魔王か勇者に殺されない限り、死なないからさぁ!」
・・・そう言えば、死なないとかなんとか言ってたような。
「なら、魔王がとどめを刺せば問題ない。――――バルバゼス」
「あ、それは遠慮しておくよ」
にこりと命の聖女が笑った。
何もせずに、にこりと、子供のような無邪気さで。
「・・・は、え?」
鉄の臭いして、何だと視線を巡らせたら誰かの首が飛んでいた。
くるり、くるりと宙を舞う頭部。切断面から赤い滴が落ち、空に撒いていく。くるり、くるり、くるり、重力に従って回る首が地面に落ちた。同時に、何かが倒れる音が聞こえる。
倒れていたのは、どうやらバルバゼスの身体らしい。
なら、宙を舞っていたのはバルバゼスの・・・頭?
「はい、強欲の魔王1名様死亡!」
「バ・・・ルバゼ、ス?」
ウエイトレスのような明るさで告げた命の聖女とは真逆に、エステルの声は小さく弱々しい。
よろり、覚束ない足取りで倒れたバルバゼスの元へ向かうエステル。それを眺めながら、ルキが楽しそうに笑って告げた。――残酷なほど綺麗に笑って、あちらが魔族のようだと思ってしまった。
「ちなみに言っておくけど、新しい魔王だとか言う3人も殺したから――――勇者が」
「ああ、嫉妬と色欲、傲慢の魔王だと言う魔族は殺した」
「・・・そんなことよりもリィンよ!リィン、こっちにおいでっ!!お姉ちゃんの所に戻ってきて!」
そんな・・・こと?
何を言ってるんだろう。と言うか、何が戻ってきて?馬鹿なの?私がどうして家を出たのか、考えたことある?両眼に涙を浮かべ、はらはらと綺麗な雫で頬を濡らす姿は女神のように美しく見える。
そしてそんな姉を、必死に抑える幼馴染。劇か何かにしか見えない私の眼は、どうかしてしまったんだろう。
「あ、ついでだから――っと」
「ぁ・・・」
命の聖女が無造作に右手を動かす。それで簡単に、始祖の吸血鬼の頭が潰れた。塾れたトマトのように呆気なく。
「あ、あああ、あああああああああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!」
「駄目よ、エステル!」
怒りに我を忘れたのか、血走った眼を命の聖女に向けて駆け出したエステルをルキが制止する。けど・・・間に合わなかった。
皇帝陛下に憑いた時の三神が、指を鳴らした。
いつの間に地面から脱出した!とか驚きことも出来ず、眼の前で起きた出来事に言葉を失った。四散するエステルの身体から、眼が離せない。
まるで爆発にあったようにバラバラになった身体。
だけど爆発なんてない。ただ、指を鳴らしただけで呆気なく、本当に、息をするように、瞬きしたらバラバラになっていた。べちゃり、嫌な音を立てて地面に落ちた肉片。元はエステルだったモノ。
「・・・あれじゃもう、生き返れないわね」
「そんな、あっさり」
「神を殺せるけど、同時にアタシ達も神に殺される存在なのよ!ああもうっ・・・エステルの馬鹿」
眼尻に見えた涙は、幻かと思うほどに一瞬で消えた。
「でも・・・その間にアタシが馬鹿な皇帝陛下を光の鎖で拘束。ふっふっふっふ・・・どういたぶって殺してやろうかしら。てか、もう殺していいわよね?」
「好きにしろ」
「あ、そっちの死にぞこないもちゃんと殺しておいてくれるわよね?」
「まぁ、そうだな・・・とりあえず」
ルキの言葉にうなずき、ライさんが右手で合図をするように動かした。
「数を減らすか」
「そうだな」
ここにいないはずの声が聞こえて、肉を切る嫌な音が一拍おいて聞こえてきた。訳が分からず首を動かせば、視界に映るのは艶やかな赤、赤、赤。
すでにバルバゼスと、始祖の吸血鬼、エステルの血で元の色が判らないほどに染められた大地に、真新しい赤が滴り落ちる。その赤が再生を始める時と煌の聖女の肉体に触れ、硫酸がかかったように煙を上げて溶けだした。あれはなに?
「おい・・・なにを、何をした」
呆然と、現実が信じられないと言うようにオルデゥアが誰にともなく呟く。
「何故、ツヴァイン達の身体が圧縮されているんだ!」
私の視界に映るのは、宙に浮く赤い箱。
その箱は3つあり、それぞれに見覚えのある模様が・・・いや、服の柄が見えて。身体を小さく纏められ、圧迫されるように圧死したのだと知った。
吐き気がする。溜まらず口を押え、眼をそらした。
「これで少しは見やすくなっただろう」
介入した声の主の姿は見えない。
だけど私はこの声の主を知っている。いや、私だけじゃない。勇者一行と命の聖女以外は知っている。だってこの声は――――。
「どう言うことか、説明してくれるわよね?オルフェウス=フェディル」
初代魔王陛下が、まさか同族を殺すなんて誰が想像できただろう。
「説明?」
「ひっ・・・!」
黒い靄を纏わりつかせ、命の聖女の影から姿を現したオルフさんの眼は死んだ魚のように濁り、宝石のような輝きが失せていた。今まで見せていた表情が嘘のようになく、仮面をかぶったような冷たい笑みを口元に浮かべている。
命の聖女の両肩に腕を回し、頬ずりするように頭にすり寄る。
まるで私にしていた行動のようで、なんとも複雑な気分になる。
「これは我の願いを叶えるための、生贄の儀式だ」
「生贄?」
「まぁ、その話をする前に・・・」
ごきり、嫌な音がした。
ああ、今日で何度、嫌な音を聞いただろう。思い出すのも嫌になってきた。口元を抑えたまま、私は手の握力だけで首を千切られた命の聖女を見る。
・・・過去とは言え、魔王だった者が手をかけても七聖女は死ぬのか。現実逃避のように考えて、頭を横に振る。今は、思考へと逃げない!
「余計な奴は殺そうかい」
にこりと、愛想笑いのように笑って告げたオルフさんの言葉に、意味が解らなかった。いや、解るはずがない。余計な奴は死ね?何を言っているんだろう?生贄の儀式?何をしたいのかさっぱりですよ、私。願いを叶えるって、何を叶えたいの・・・?
困惑の眼をオルフさんに向けるけど、いつものように視線がこちらに向かない。
おかしい。
何かがおかしい。
けれど何がおかしいか解らない。
「おい・・・魔族が同族を殺して、どういうつもりだ?」
のけ者にされている気がしたのか、グレンシードが疑問を口にする。
・・・そう言えば、途中から存在を忘れていたような。うん、のけ者にしてたね。勇者一行!思考を明るくしてみたけれど、胸に蟠る不気味な不安が消えてくれない。
「その話をする前に・・・と、我は言ったはずだが?」
「だからと言って、問答無用で相手を殺すのはいくら魔族でもやっていいことじゃない!」
「・・・っは。正義の味方らしいことを言うな、流石は勇者。・・・と、言ったところかい」
ぽいっと、子供が玩具に飽きたように命の聖女の頭を放り投げ、宙に浮かぶ3っつの赤い箱を手元に引き寄せた。・・・何をするつもり?
「コレらには随分と時間をかけ、仕込みをしたからな。コレ1つあれば・・・ほら、魔王すら簡単に殺せる」
「ぅ゛あ゛・・・ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」
「オズ!」
「どう言う方法か、と聞かれると説明しにくいが・・・簡潔に言えば、硫酸のような魔法を使っている。と、言う事だ」
肉が焼けるような音がする。
痛みに悶え、逃れるように身体を激しく動かすオズの身体は赤くなった部分から爛れ、肉が溶け、骨が見えた。その痛みは想像に絶するだろう。足がもつれ、地面に倒れこむ。けれど倒れた場所が悪かった。血だまりの海。3人の血で汚れたそこに倒れたオズは、瞬く間に全身が溶けていく。
「――――――――――――――――――っっっっっ!!!!」
声にならない叫びに、姉さんが怯えたように身体を小さくさせた。
「水と闇の混合魔法、いや、新たに生み出した魔法だ。知りたいなら教えてやろうかい?」
「結構だ!」
「それは残念だが・・・ああ、肝心の内臓が溶ける場面が見られなかった」
心の底からそう思っているような溜息を吐き出し、オルフさんは地面に転がる命の聖女の頭を蹴り飛ばした。
「それより、いい加減に我の命じた通りに動け。哀れな人形」
誰のことを言っているのか判らないけれど、随分な言葉だ。
むっと顔をしかめた私に、オルフさんがようやく顔を向けた。にやり。不気味と形容できる笑みを浮かべ、ゆっくりと右手を持ち上げる。それにつられるように、残り2つとなった赤い箱が飛んできた。――私にではなく、皇帝陛下に憑いた時の三神と化け物のような神殿の時の三神へ。
「・・・え?」
あっけなく。
それはもう、こちらが驚くほどに簡単に消えた2人の時の三神に唖然とした。
「え?」
姿かたちなく、まるで最初から存在しなかったように消えた。ざわめいたのは皇帝陛下が消えたと動揺する勇者と幼馴染だけ。
私は消えた、という事実に驚いてそれ以上の反応が出来なかった。他は知らない。
「命令に背くならば、我が手を下すだけだ」
「・・・・・・・・・リィン」
今まで沈黙を保っていたライさんが、私を見下ろして静かに名を呼んだ。
「悪いな」
「ライさん・・・?」
もしかして、いや、もしかしなくても、哀れな人形と呼ばれたのはライさんなの?愕然と眼を見開き、縋るようにライさんの右腕に手を伸ばした。・・・するりと、身体ごと遠ざかり、ライさんが私から離れる。
それはつまり――。
「・・・ぁ」
「リィン!」
叫んだのは、ルキか姉か、それとも勇者か。
誰か知らないし、知ろうとも思わない。
私はただただ、胸に刺さった見覚えのある剣から視線を動かし、剣を握るライさんを見つめた。ああ――そんな悲しい顔をしてるくせに、私を殺すんだ。
どうせなら、笑顔が見たかったかも。なんて、馬鹿馬鹿しいことを考えて苦笑した。
ライさんが驚いた顔をして、口を堅く結ぶ。
霞む視界で見た最後の絵がそれなんて、何だか嫌だな。ゆっくりとまぶたを落とす。
重力に逆らわず地面に身体を倒す――のを確認するより先に、私の意識は黒く染まった。




