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姉が結婚するので家を出ます。  作者: 如月雨水
Stella miira 《不思議な星》
23/41

7

「まぁ、普通はそうだ」

即答の否定に落ち込むこともなく、オルフさんはさらりと言う。

「だが残念ながら事実で、愛し子の肉体は仮初のモノ。その器はいずれ愛し子の魂に耐え切れず限界を迎えて壊れる」

「壊れ・・・え゛?」

「我と空の聖女・・・シビル=デュオーとの間に出来た愛し子は、我ら2人分の力が魂の強度として現れたようでなかなか頑丈に誕生した」

魂の・・・強度?

オルフさんは・・・一体、何を言っているの?私、頭が痛くなってきた。と言うか、魂の強度って何?強度って。そんなの何かに関係あるの?・・・精神力?そんなに凄くないんですけど。図太さ?・・・あるかもしれない。

「あのままシビルが愛し子を産めれば問題はなかったんだが、忌々しいことに運命を見るノルニル、基、時の三神が横やりを入れてシビルに呪いをかけた。そのせいでシビルは愛し子を産むことが出来ず、仕方なく、白銀の乙女に助力を願って別の母体に愛し子を移すことにした。だから正確に言えば、愛し子は人間の血を引いてはいない。まぁ、人間の母体から生まれたから色素はそちらに引きずられてしまったようだが」

「母体に宿った肉体ごと別の母体に移したのか。よくもまぁ、荒療治なことを」

「魂が強靭だったから出来た力業だ、今代の魔王陛下」

「そうするとその娘は真実ぅ、初代魔王陛下と空の聖女の子供ぉ・・・と言うことかぁ」

「・・・ほぉ、それはまたスキャンダルだな」

「びっくなすきゃんだるよりびっくでおいしくめずらしいごはんがいいよねぇー」

「てめぇは黙ってろ!」


・・・当事者以外が、理解していますね。

私はさっぱりですよ。ええ、何を言っているのか理解できません。


「で、リィンを救うにはどうすればいい?」

「簡単なことだ」

勿体ぶるようにオルフさんが呟き、私に近づいてライさんから離した。と思えばくるりと身体を半回転させ、肩に両手を置いて顔を近づけてくる。

反射的に殴ってしまった。ごめんなさい。

「・・・愛し子」

「もっと力をこめても大丈夫だ、リィン。殺す気でヤレ」

哀愁を漂わせるオルフさんを指さし、殺害を命じるライさんに頬がひきつった。そんなことを命じられても・・・私の非力な力で出来ると?そもそもやらないよ?

「―――――――っリィン!」

え、今度は何?

ライさんが切羽つまった声を上げたと思ったら顎を掴まれ、ぐいっと強制的にオルフさんの方へ顔が向き――――え?

眼の前に広がるドアップのオルフさん。

あ、睫毛が長い。きめ細かい肌ですね、羨ましい。――じゃ、なくてえ゛?

「#%@+〇*◇@¥&%#Ψ!?」

驚いて息を吸おうとしたらにゅるり、と何かが口の中に侵入した。あ、これ私知ってる。前にライさんにやられ・・・・・・え゛!!?ちょ、待って待って待ってちょっと待ってっ!!何で私、オルフさんにキスされてるの?――だから待っててばっ!!

ひぃ、何かが口の中に入って・・・く、口の中が蹂躙されてるっ!!ぁううう・・・舌、舌に何かが絡まって・・・にょぎゃぁぁぁああぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ気持ち悪いぃぃぃぃぃいいぃぃいぃぃ!

おぅぅお!え?何、今度は何?何か飴玉、よりも小さいけれど似たようなモノが舌の上に・・・・・・うう、吐き出したい・・・吐き出したい、のに!吐き出すことすら許さないとは非道なっ。飲めと?飲み込めと言うのですかオルフさん!鬼、悪魔!人でなし・・・魔族だった。いや、そういう事じゃなくてだ!

ばしばしばしばしばしばし・・・何度もオルフさんの身体を叩いて、離せと訴えるが聞いてくれない。むしろ飲め、と言うように縦横無尽に口の中を何かが蠢く。の、飲むしかないのかっ!この・・・外道魔族!後で覚えてろよ!地味な仕返ししてやるぅ!!

「――――ん、んぐ・・・っ!!」

覚悟を決めてごくり、と何かを飲み込んだらようやくオルフさんが離れてくれた。そのことにほっとするより早く、文句を言おうとしたんだけど・・・はて?

何だか世界が回っているよう・・・な?

あ、違う。

世界じゃなくて、眼が回ってるんだ。

自覚した瞬間、意識が遠のいて――――――――――。








ぱちり、と眼を開けたら見知らぬ天井と見知らぬ部屋だった。どこ、ここ?

やけにふかふかな、まるで偉い人が寝るような高級な感触がするキングサイズのベッドから上体を起こし、周囲を見渡してみる。

5つある本棚にぎゅうぎゅうと詰められた、難しそうな本の数々。床には幾何学模様が描かれた落ち着いた色合いのカーペット。そこに寝転がる用なのか、大きなクッションが1つと小さなクッションが3つ。窓に近い場所に黒い布地のソファ。そして私が寝ているベッドのみ。あ、天井にどこかで見たことのある鳥のレリーフが・・・あれ、ライさんの懐中時計にあったやつに似ているような。そしてブラケットとペンダントタイプのライト。やはり芸のある細工だ。・・・どれだけお金を注ぎ込んだんだろう。

のそのそと四つん這いでベッドの上を歩き、ここがどこか考えた。・・・客室、ではないことは判る。客室に本棚はないはずだし。

じゃあどこだ?首を傾げて、よいしょ!っとベッドを降りようとして。

「眼が覚めましたか?」

「ぅぎょあ!?・・・・・・・・・いたい」

床に落ちた。

わぁ、カーペットがふかふか。でも顔面が痛い。鼻、赤くなってるだろうなぁ。

「人間特有の遊びでしょうか?危ないのでやめた方がよろしいとかと」

「遊びじゃな・・・えっと、あの」

鼻血が出てないことを触って確認し、顔を上げればそこにいたのは・・・・・・だれだっけ?

「魔王陛下の忠実なる肉奴隷、ユフィ―リアです。お忘れですか、リィン様」

「そ、そんなことは」

「そうですか。それでは魔王陛下がお待ちですのでこちらへ」

眼をそらしたことも、どもったこともスルーされた。

のそのそと亀のように身体を起こし、これまた亀のように歩き出す。ユフィーリアさんは文句を言わず、扉の前に立って私が来るのを待っている。・・・あの、ユフィ―リアさん。

ぴたりと足を止め、頬を引きつらせる。

「扉の向こうから、物凄く寒気がするんですけど・・・その先は北極か南極ですか?」

「いいえ、普通の執務室ですが」

「・・・じゃあ、視覚できる冷気の正体は」

「死にはしませんので安心してください。もし、凍傷になったとしてもわたくしが治しますので問題はありません。さぁ、覚悟はよろしいですか?」

「覚悟って・・・っ!!ああ、扉を開けないでっ」

ユフィーリアさんがゆっくりとドアノブを回し、制止を聞かない振りをして扉を開けた。ひどいっ!!


扉を開けた先は、ブリザード吹き荒れるある意味、修羅場でした――――。


ではなかった。

「・・・あれ?」

おかしいな、と首を傾げるけどやはり何もない。凍死する!と感じた寒気も、視認できた冷気すらない。・・・あれー?

見覚えのある応接室にいるのは、ソファに座るオルフさんと姿が見えなかったエステルとルキ、そしてライさん。

・・・あれ、さっきの応接室にそんな仕事をするような机、あったっけ?なかったな。うん、じゃあここはあそことはちが・・・・・・・・・そう言えば、ルナディアが私は陛下の執務室にいたって・・・。

「あの、ユフィーリアさん」

「ただのメイドであるわたくしのことはどうぞ、肉奴隷と」

「ここ、応接室ですか?」

「執務室と先程、申し上げましたが?それよりもどうぞ、わたくしのことは肉奴隷と」

「執務室ってこんな風になってるんですか?」

「他は知りませんが、魔王城はごらんの通りです。ですからわたくしのことは」

「しつこい変態!」

無視してスルーして、知らない振りをしているのに何度も言わないでくれないかな!!

「その程度の罵りでわたくしが満足するとでも!!さぁ、ここに縄があります。これでわたくしを縛り上げ、あられもない姿にしてわたくしを罵倒してください」

・・・・・・まぞく、こわい。

「アレは・・・変わり種のサキュバスか?魔界も変わったなぁ」

「被虐を好むサキュバスなんて珍獣ね!まぁ、アタシには敵わないわね!!」

「・・・ああ、そうだな。馬鹿に敵う珍獣はいないな」

「天才をつけなさい、天才を!」

がくぶると震えていたら、呑気な声が聞こえた。それよりも助けて。じりじりと距離を詰め、私に荒縄を差し出すユフィーリアさんが怖い。ぎらぎらと燃える双眸が怖い。荒い息を吐き出して「さぁ、さぁ!」と促す姿が怖い。・・・トラウマになりそう。

「やめろ、ユフィ。リィンが怯えてるだろうが」

救いの神ならぬ、救いの魔王!!

ぴたりとユフィーリアさんの動きが止まったので、これ幸いとライさんの傍に逃げた。残念そうな溜息とか「またの機会に」とか、そんなモノは私の耳には届いていない!・・・全力でユフィーリアさんから逃げようと決意する。

「眼が覚めたようだが、気分はどうだ?」

「良いように見えますか?」

「・・・ユフィのあれは病気だから気にすんな。それより、そこの変態にされたことで後遺症とか何もないか?」

ライさんの近くに来たのは失敗かもしれない。

がしりと頬を掴まれ、熱を測るためか額に額を合わせてきた。それだけならまだしも頬を掴んでいた右手が離れ、腰に回る。あれ?と思ったら左手が頭の方に来ていて、あれれ?と嫌な予感を覚えたらぐいっと身体が前に倒れた。あーれー、な気分。

ぽすり、と軽い衝撃と共に暖かいぬくもりが・・・・・・!!

「んな!ななななななななななぜにだきしめ!?いや、膝に乗せる必要が?!」

「そうだ、今代の魔王陛下。すぐに愛し子を我に返せ。愛し子は我とシビルの愛娘だ。娘を可愛がるのは父親の特権だ」

「その娘にキスした変態に、誰が渡すか」

こ、鼓動が・・・ライさんの鼓動がみ、耳に聞こえ・・・っ!

「え・・・そんなことをしたのか。それは最低な変態だな」

「これがドン引き!と言うやつよね!!・・・ないわー」

「白銀の乙女より授かった、本来の姿に戻す結晶は血縁者の体液を分け与えることで効果を発する。仕方がないことだ」

「その割に・・・満更でもない顔だな、おい」

「親子の愛情を示す、スキンシップだ。問題ない」

優しい手つきで髪を撫で、時に指に絡ませ、く、くち、口元に近づけて・・・何をなさる!!綺麗じゃないからその髪!洗ってないから汚いし何かばっちいものが・・・こらやめ、やめなさい!!

漸く硬直が解けた身体で、唸れ右手!とばかりにべしりとライさんの手を叩く。爆発しそうなほどに心臓が煩い。・・・もういっそ、爆発してしまえば静かになるかな?

「・・・それより、コレはその本来の姿に戻す結晶の後遺症か?」

ライさんの視線が私の頭に・・・や、頭だけど何かが違う場所に向いているよう、な?

「それが愛し子の本来の姿だ。・・・ああ、シビルに似てなんとも愛らしい」

うっとりとした表情をするオルフさんは、過去に想いを馳せているようで「シビルも昔は」から始まり「どんなシビルも愛している」で終わった。今なお、恋情を抱き、愛慕を持っているとは素晴らしいですね。

で、本来の姿って何?首を傾げたら、ライさんが頭を撫でた。

てっきりデコピンかと・・・。きょとんとした顔をしたらデコピンされた。ひどい。

「あー、確かにその姿はシビルにそっくりだな。色合いは」

「そうね!シビルの儚げな容姿とは打って変わった容姿だから、色合いだけはそっくりね!!」

いろ・・・あい。

だらだらと嫌な予感に冷や汗が流れた。壊れた機械のようにライさんを向き、震える口で尋ねる。

「わ、私の姿って・・・・・・」

「見た方が早い、ユフィ」

「こちらをどうぞ」

どこから取り出したのか、大きな円形の鏡。まるでおとぎ話に出てくる魔法の鏡のようですね。・・・冷静にそう考えられる時点で、私はまだ大丈夫。大丈夫だ、大丈夫。

さぁ、勇気を振り絞って鏡を見てみようじゃないか!!

見慣れたくすんだ色の髪も、カエルと言われた過去を持つ瞳もそこにはない。あるのは青に近い灰色の髪に空色の瞳。色が変わっただけで、別人の印象を与えるなんて・・・自分のことなのに誰、この人?と首を傾げたくなった。いや本当、誰これ?

そして何より存在を主張する、髪に紛れるような・・・・・・。

「・・・・・・けものみみ?」

寝ぐせがそうなっただけと言い聞かせ、触ってみたら・・・柔らかい。

ぐい、引っ張ってみる。ぐいぐい、さらに力を入れて。ぐいぐいぐいぐいぐいぐいぐいぐいぐいぐぃぐぃぃぐぃぃぃぐぃぃぃぃぃぃぃぃい。

「やめとけ、リィン。引っ張っても取れないから」

「・・・っは!?」

現実を認めたくなくて、無意識に行動していたようだ。・・・引っ張った個所が痛い。

と、するとこれは本当に・・・嘘偽りなく、獣の・・・猫の、耳?し、シビルさんってもしかして――。

「シビルは猫の獣人だ、愛し子」

「ぃ、いやぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

認めてたまるかこの現実!!

弾かれたようにライさんから離れ、風のようにオルフさんに近づいて胸倉を掴む。にっこり笑って「やはり我が良いか」・・・だって?ふざけんなよおい!!


「私は猫が好きですよ。猫を愛してますよ?猫がそこにいるならご飯を与え、無碍にされようがその姿だけで癒されるほどに大好きです!!けど、けどですね!!――――いくら猫が好きでも猫耳をはやしたいと思ったことは一度もないんですよ!!」

「ちょ・・・愛し子、首、首しまってっ」

「戻せ、今すぐに私を前の姿に戻せ!猫は愛でるものであってなるものじゃない!!」


猫が好きだからと言って、猫耳はやした獣人を好きだと公言するような浮気者じゃないんですよ私!と言うよりもですね、猫と猫耳はやした獣人じゃあ比べるのも馬鹿らしい、天と地、月とすっぽん程の違いがあるんですよ。判ります?解りますよね?解れ。

可愛さがね、まったくもって違うんですよ。判りますよね?判らなくても解れよ。

そもそも猫の耳と尻尾がついてるだけの顔は人間、な獣人のどこが可愛いんですか?猫限定のケモナーな私には理解できません。もふもふしたいのは猫であって、間違っても猫の獣人じゃないんですよ。判りますよね?判らないなら無理矢理解らせるよ?

つまり何が言いたいかって?

「どうせ猫耳はやすなら猫化した方がいい!!」

「そっち?!・・・え、そっち?」

驚くエステルの声が聞こえるけど、知らない。

「でも猫になって愛でられるのはごめんなんですよ!!」

顔面蒼白なオルフさんから手を離し、頭を抱えて床に膝をついた。ああ、この頭になるブツをどうにかしたい。

「・・・ねぇ、ねぇねぇ!見てみなさいよエステル!尻尾が怒りを表すようにべしーん、べしーんって床を叩いてるわ!!触りたいわ、触っていいかしら?」

「や、そっとしてやれよ」

このまま一生、猫耳をはやしたままなんて・・・嫌だな。私は猫を愛でるけど、猫になりたい訳じゃないんだよ。そりゃ、猫になってみたいな。とは思ったことがあるけど、やっぱり愛でる方がいいんだ。・・・でもこれで仲間と思った野良猫が近づいて、仲良くなるチャンスが増えるんじゃ・・・・・・・・・いやいやいやいや、そんな欲望に負けちゃダメ。

「猫は尻尾も性感帯でしたね、羨ましい。わたくしもサキュバスではなく、獣人として生まれていれば新たな楽しみも・・・いいえ、サキュバスだからこそのこの人生。やはり最後まで全うしましょう」

と、言うかですね。

こんな状態を誰かに見られるのが嫌なんですよ。もうライさんとかに見られてるけど、これ以上、他の誰かに見られたりしたら・・・・・・羞恥が爆発して死ねる。

そんな死に方をするぐらいならいっそ――――耳を切り落としてしまおうか。

「何か物騒なことを考えてるようだけど、愛し子。魔族は人間に擬態出来ることを忘れてないかい?」

「・・・はっ!」

「忘れてたようだぜ、初代魔王陛下。・・・なぁ、リィン。ちょっと人間の自分を想像してみろ。眼を閉じて、頭にイメージを浮かべて」

ライさんの言葉に従って、前の私の姿を思い出す。猫耳のない、尻尾のない人の姿の私。何度も鏡で見た、見慣れた私の姿を今、頭に思い浮かべる!・・・・・・どんな姿だっけ?思い出そう、思い出そうとするけど・・・そう思うたびに何も頭に浮かばない。

両手もついて項垂れた。駄目だ、想像できない。

ぺたり、と力なく尻尾が床を叩いたのが見えた。・・・泣きたい。

「・・・あー、まぁ、うん。要特訓で」

「ご指導、よろしく・・・おねがいします」

「愛し子、何故、今代の魔王陛下に頼む。我が教えて」

「結構です」

「父である我が教え」

「結構です」

「・・・我が子が冷たい」

しくしくと泣き出したオルフさんを、付き合いの長いエステルとルキが白い眼で見た。何やら「こんなキャラだっけ?」とか「ヘタレよりヘタレになったわ!」とか言っているけど・・・どーでもいい。

息を吐き出し、立ち上がってソファに座る。あー・・・ふっかふか。

「そう言えば愛し子」

復活が早いですね、オルフさん。

嘘泣き?

「愛し子。君は魔界に行けないと言った。けれど、魔界に行きたいと言った。矛盾したそれの答えを、知っているかい?」

一瞬、何を言われたのか判らなかった。

きょとんと眼を瞬かせ、無言でオルフさんを見る。優しい眼差しは、本当に父親のように感じた。・・・やったことは変態だけど。

「知っているけど、気づかない振りかい?」

「・・・それ、は」

「心のままに、生きろ。愛し子」

ぽん、と優しく頭を撫でられた。

よく、意味が解らない。・・・私は、心のままに生きているはず。どうしてそんなことを言われるんだろう?

「あ、それより私、どれだけ寝てたんですか?」

「4日」

「・・・4時間?」

「4日」

聞き間違いかとライさんを見れば、同じ言葉が返ってきた。え?と思って他の人を見ても、「4日」としか返ってこない。・・・う、嘘だ!

「ああでも、魔界に来て現魔王陛下に逢うまで3日の空白があるから・・・7日か?」

「そうね!確かにそのぐらいよね!」

3日の空白も恐ろしいけど、4日も寝てたって・・・寝すぎた割には身体が痛いとか、頭が痛いとかそう言う症状がないんですけど。むしろすっきり?

「白銀の乙女曰く、寝て起きたら気分爽快になる代物らしいが・・・・・・どこか違和感でもあるのかい?」

むしろその通りなので、と首を横に振って否定する。

「リィン、明日俺に付き合って」

「・・・どこへ?」

背後から腕が!と思ったらライさんに抱きしめられ、猫耳に息を吹きかけられた。ひぃ。震えながら尋ねれば、にこりと微笑まれる。

何やら怖い顔をしたオルフさんと、それを宥めるエステルとは対照的に呷るルキの姿が見える。・・・あれ、ユフィーリアさんはいずこ?

「魔王城を案内するから」

「あ、それはありがたいです」

素直に頷いた私の頭に、ライさんが頬を摺り寄せた。

・・・何だか、スキンシップが激しいですね。どうかしたの?対応の仕方が解らなくて、私はただただ困惑した。いったい、ライさんに何が・・・・・・・・・?


「デートしよう」

・・・・・・・・・本当、いったい何があったのかな?


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