表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姉が結婚するので家を出ます。  作者: 如月雨水
Stella miira 《不思議な星》
22/41

6

ぎゅうぎゅうと私を抱きしめるライさんの背に手をまわし、何やら悔やんでいるように感じたので背中を撫でてみた。そしたら余計に力が強まった。し・・・絞め殺される!

内臓が出そうだと出ていた手で背中を叩き、訴えて漸く力が弱まった。ほっ。

「ところで――――」

私の頭に顎を置いて、ライさんが思い出したように告げた。

気のせいでなければ、声が冬を連想させるほどに冷たいような・・・。

「これは何だ?」

じゃらり、と耳元で聞こえた音からライさんが鎖に触れているんだな。と言う事は解る。それ以外はまったく不明!誰か実況してくれないかな・・・。

「・・・ヴェルク」

「はっ」

「その手を離せ。それとこの首輪、壊すぞ」

「怠惰の王の意のままに」

言葉の途中でぱきり、と何かが壊れる音が聞こえた。同時に首に感じていた違和感が消え、恐る恐るそこに触れればあったはずの首輪がない。どうやって壊したの、ライさん?きょとんと見上げたいが、生憎と頭にライさんの顎が乗っているので出来ない。

地味に痛いから、やめてくれないかな・・・。

見下ろした床に、黒い靄となって消える首輪があった。・・・何故、靄?

「どうやってここに来たんだ、リィン?」

「あ・・・それは」

「恐れながら陛下」

2人の聖女のおかげ、と言うより早くルナディアが声を張り上げた。

「その人間は恐れ多くも陛下の執務室に許しもなく侵入した者です。そのような不届き者、今すぐにでも殺すべきではありませんか?」

「ルナディアの人間嫌いは相変わらずだな」

「黙れ、ディアッカ。私は人間が嫌いだから言っているのではない。陛下に害をなすやもしれない存在を、野放しに出来ないから言っているのだ!」

ルナディアの台詞に、くすくすと嘲笑する中性的な声が聞こえた。え?誰?ちょっと気になるんですけど・・・!ぐっとライさんの胸板を強く押し、何とか身体の向きを逆にすることができた。

でも頭が痛い。ぐりぃぃぃってした。抉るようにぐぃぃぃぃぃって・・・。

「私的感情のくせに」

「違う!」

ディアッカとルナディアの会話にライさんが溜息をつき、私のお腹に腕を回す。ああ・・・太っていることがばれるからそれはやめてください!

しかし・・・魔王であるライさんの前で喧嘩とは・・・いいのか、魔界。

ルナディアの隣にいる、両眼を包帯で隠した、人の身体に鴉の頭と翼を持つ男性を見る。来ている服がルナディアと同じ軍服からして、この男性が四将軍の1人だろう。違ったらごめん。確信が持てないのは逆十字の腕章のせいだ。たぶん。

男性は長身巨躯、と言う文字が似合うほど背が高く、軍服を着ていても解るほどに筋肉粒々だ。マッチョだ、マッチョ!腹筋とかすごく割れてそう!中性的な声のわりに体格は物凄く漢!ですね。でも肌艶が綺麗で漢らしくない。あと、声と見た目が合わないんですけど。

「あれはディアッカ=オル=デーム」

ぽそり、と耳元で男性の名前を教えてくれたライさんは次いでルナディアとヴェルクを教え、そして3人から離れた場所に立つ男性の名を告げる。

「あっちがアウル=アイン=ディグ。あの4人が魔王に、いや、魔界に仕える四将軍と呼ばれる存在だ」

五つ葉の飾りがついた片眼鏡モノクルをかけた、飢えて痩せた狼の印象を抱かせる体格の男性。黒鉄の髪は本当に鉄のように見えるし、鉄錆のような双眸は血に飢えているように爛々と不気味に輝いている。こわっ。肩口までまくった軍服から晒す両肩に歪な月の刺青があった。強面の顔に似合いすぎて怖い。葉巻とか吸ったら様になってるだろうな。

これで魔狼と言う種族だったら、見た目通りすぎて怖いんですけど。・・・あ、魔狼だ。だって狼の耳と尻尾があるもん。髪に隠れるように耳があったよ。・・・まじか。

「ルナディア」

「っは!」

「リィンを見つけたことは褒めてやる。だが、殺すことは容認しない」

「っですが!」

「黙れ。他の奴もよぉく覚えておけ。この人間」

右手で顎を掴まれ、強制的に上を向かされる。首が痛い。私の左手をライさんの左手が、いわゆる恋人繋ぎをして握りしめた。・・・はい?

「リィンは俺のモノだ。誰であろうと俺の許しなく――リィンに触れることは許さない」

「っ?!」

く・・・首にな、ななななな生暖かい感触が!?何?私、何をされたの?!もしかして舐められた?べろんって舌で舐められた?!私は舐めても美味しくないですよ!!


「ふは・・・ふはははははははは!これは・・・これは傑作だ。まさかお前がたった1人の、しかも人間の女に熱を上げるとはな!腑抜けなお前にはお似合いの相手だっ!」

大声をあげて笑い出した主が、ふらりとライさんの前に姿を現した。どこにいた!


ぎょっと眼を見開き、声の主を観察する。

トカゲの尾と肉も羽毛もない、骨の羽根を背に持った威圧が服を着ているような男性だ。顔の半分を鱗で覆われているが端正な顔立ちを損なうものではなく、青玉サファイアの双眸と相まって雰囲気と異なる神秘性を魅せてくれる。背はライさんより頭3つ分高い。そして無駄に体格がいい。筋肉隆々とまではいかないが、がっしりとした身体が。もしかして龍人と言う種族だろうか?後でライさんと答え合わせしよう。

と言うか――この男性、絶対に肉体派だ。魔法より暴力でことを解決するタイプだ。

「あれは西を守護する傲慢の王、イシェス=イ=ルドゥガ。粗暴で短気な男だから近寄るなよ。孕ませられるから」

「孕ませるか。俺はお前と違って、人間の女に興味はない。あぁだが・・・遊び相手には良い相手だ。人間の悲鳴と生への懇願、死への絶望は甘美なものだからな」

身体は身体でも、違う目的の人間の身体で遊ぶ。と言う事ですね。悪趣味!

「ふん・・・だが解せんな。何故、その人間に固執する?器量が良く、家柄の良い魔族の娘がこぞってお前の元へ訪れたと言うのに、一夜を共にしただけですぐに追い出したお前が何故・・・?ああ、幼女趣味ロリコンか。ふははは、それでは仕方がないな!」

おい、こら。今、どこを見て言った。胸か?胸を見て言いましたかこの野郎!!

内心で憤怒していたら、スリスリとライさんのほっぺが私の頬にすり寄ってきた。何故?

「怠惰の君が幼女趣味なら、あたくしはどうなるのかしら?好みの相手なら少年だろうが年寄だろうが関係なく、身体のお付き合いをするって言うのに・・・はぁ、愛って罪深いですわね。そうは思わないかしら、傲慢の君?」

「知るか」

「あらつれない」

ふぅっと、ぞっとするほどの色気を放った溜息をつく、狐の尾と耳を持った妖艶な女性を見つめる。おお・・・同性なのに見惚れる美しさ。蛍石フローライトの瞳を細め、細く長い指で長い金髪を弄る。たったそれだけの仕草なのに、息を呑んでしまう。姉よりも魅入ってしまう色香に、クラクラと眩暈がした。煙管を吹く姿も様になってます。

細くしなやかな身体を纏う服は鮮やかな色合いの懸衣で、けれど大胆に胸元をさらし、足もきわどい所まで見えるなんとも危ない着方をしている。見ているこちらがドキドキする。歩くR指定のような気がしてならない、危険な色気だ。恐ろしい。

「フレンヴァル=レム=ピアン。北を守護する色欲の王だ」

「あたくしと熱い一夜を過ごしたのだから、そこは嫉妬してほしいわね。・・・ああ、嫉妬はあなたでしたね。ごめんなさい」

「煩い、黙れ、尻軽女、このビッチ。男だろうと女だろうが気に入ったら関係を持って、飽きるまで抱きつぶす色欲の化身め。死ねばいいのに。どうして皆、あんた何かに魅了されるのよ。ただの贅肉でしかな胸をこれ見よがしに晒して、露出狂の毛でもあるのかってぐらい恥ずかしげもなく肌を魅せるこんな女のどこに」

「ふふふふ・・・嫉妬は醜いですわよ。ああ、ごめんなさい。嫉妬の君に言うことではなかったですわね」

ふらり、幽鬼の如くフレンヴァルの隣に現れた水色の髪をした女性。バチバチと火花を散らせている、からではなく、台詞の端々に棘があるから互いに嫌いなんだろう。と言う事は容易に解った。空気が剣呑すぎるよ。

「魔王城に在住している嫉妬の王、ウンシェ=エ=ルフォッカだ。見ての通り、色欲の王と仲は悪い」

上半身を美しい女性、下半身は蛇の姿をしたウンシェを見て、どうしてだろう。嫉妬の名を持つのに納得できてしまった。下半身が蛇だから?

爛々と輝く瑪瑙アゲートの双眸は殺意を込めて鋭くフレンヴァルを睨み、蛇の動きを連想させる髪の毛が怒りの度合いを現しているように感じた。おとぎ話で出てくるメドゥーサか、この女性は。しかし・・・胸を贅肉と言っていた割に豊満で、理想のスタイルである身体つきだ。身体にフィットするタイプの服を着ているせいか、露出していないのにいやらしさを見せている・・・よう、な。蛇の尾についた鈴が、リィンリィンと音を鳴らして煩いんですけど。

そしてライさん。太ももに手を這わせないで、やらしい!ぎゅーっと悪戯をする手をつねりあげた。・・・何故、嬉しそうな声が聞こえるんだろう。意味が解らない。

「ぎゃーぎゃーぎゃーぎゃーと・・・やかましいわ!少しは黙っていられないのか、殺すぞ」

それほど大きくないのに、室内全体に響いた不機嫌な声。どうやら最後の魔王が怒っているようだ。・・・最後の魔王ってことは、憤怒?確認のため、ライさんを見上げる。

「東を守護する憤怒の王、オルデゥア=オンディスク=オールデェック。理不尽なことで怒るから気をつけろ」

捻じれた角と四つの眼を持つ、見た目は薄幸な平たい顔の男性を見つめる。

もやしのように細い身体は筋肉のきの字もなく、白髪の髪が余計に脆弱に見せた。右眼が金緑石クリソベリル、左眼は赤交じりの緑柱石レッドベリルなオッドアイを不機嫌に細め、双眸の奥に隠しきれない憤慨を宿している。腰に差した4つの剣が怒りに反応してか、カチカチと音を鳴らしている。怖い。長い爪を怒りからか嚙み、肉も噛んだのか血が流れている。怖い。

「そんなくだらねぇことで俺様を呼んだわけじゃねぇよな?なぁ、ラインハルト。もしそうだって言うならそれ相応の報いと礼を払ってくれるんだろうなぁ?ああ゛」

平たい顔の癖にガラが悪いな、どこのマフィアだ。ってぐらいに顔つきがヤバい。

と、言うか――――わぁお、七罪勢ぞろいだぁ。

ひしっとライさんの右腕にしがみつきつつ、乾いた笑みを浮かべた。魔王の瞳は皆、宝石のような輝きをしているのは何故だ。ちょっとした疑問を覚え、オズの存在を思い出した。そうだよ、オズ!暴食の王はいずこ?!

「って言うか、あの大食いはどこ行った!まさかまだメシ食ってるとか言わねぇだろうなぁ!!」

叫び声って、こんなに響いて壁とか柱にヒビをつくるモノだっけ?・・・鼓膜が痛い。

「ぼくをおよび~?なぁに、ぼくがこいしかったの、おるくーん!」

「誰がだ!・・・って、おい。なんだその腕のブツは?」

ふっと影から湧いて出てきたオズに叫んだオルデゥアは、その腕にある❘を見て物すっごく嫌そうな顔をした。え?何々?こっからだと見えないから気になる。

「んんん?おにくだけど?ぶたのまるやき~。たべる?」

「いらねぇし、丸々一頭持ってきた上にここで食べんなよ!汚れるだろうが汚ねぇ!!!」

「ああ!ぼくのおにくがぁ~!!」

べしっと、強い音がしたと思ったらぴょーんと何かが宙を舞う。豚の頭とほぼ骨しかない胴体・・・豚?えっと、豚の丸焼き?らしきものを床に落ちる前に拾ったオズは、肩を震わせ、油で汚れた仮面が何故か、そう何故か不思議なことに“怒”と言うマークがついている。なんで?そういう仕様?

「なんてことするのさ、おるくん!ひどい、ひどいよ!!ぼくのごはんをなげるなんて!!おにだ!あくまだ!きちくだぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁ!!」

「鬼神だからな。つぅか、魔族に悪魔も鬼畜もねぇだろうが!ふざけてんじゃねぇぞ!」


「―――――うるさい」


これぞ鶴の一声ならぬ、魔王陛下の一声。

不穏な空気全てを霧散させるその声に、同じ魔王であるはずの6人が動きを止めた。口を動かしていないバルバゼスなんて、うんざりした顔をしている。たぶん、巻き添えにされたと思ってるんだろうな。あと、イシェスは不機嫌な顔がより凶悪になった。怖い。

「人間が勇者を魔界に送り出した」

勇者の言葉に反応した私に気づいているからか、左手で私のお腹から胸元を辿って唇を撫でていく。ぞわっとした、ぞわって!

何?!何がしたいのライさん!!と言うか恥ずかしいからやめてっ!!羞恥で死ねるっ。

「人間の目的は今まで通り、魔族の殲滅。だが勇者の目的は違う」

おお・・・う!ちょ、ら、ライさん、ライさーん!人差し指で唇をなぞらないでくれませんか!?ぞわぞわするぅ・・・。

「リィンを探している」

「何故、勇者がそんな人間の娘を?実はその人間の女が王族で、勇者の許嫁だとでも言うのか?そんな人間が?」

イシェスの台詞と嘲笑に、ぐさぐさと心に鋭い刃が突き刺さりました。どうせ、どうせ私なんて・・・。鬱になるな、昔からよくあったことだから鬱にはなるな、私。

「勇者が知っているか知らないがぁ、その娘は空の聖女だぞぉ」

「空の・・・!ほぉ、その人間の娘が空の聖女か。とてもそうは見えないがな!」

・・・殴りたい、このイシェスと言う魔王を殴りたい。

「勇者はリィンの元恋人だ」

「あら、勇者の好みってその娘なのですね。なら、その娘のような魔族を送り、誘惑し、搾り取れるだけ搾り取ってしまいましょうか!精液を」

「生き生きした顔で言うな、淫乱変態女。元恋人だから助けに来たってことは、未練でもあるのか?」

「未練だろうが何だろうが、そんなことで魔界に来るとはご苦労なことだ。おい、ラインハルト。その勇者、俺が殺しても問題はないんだろうなぁ?」

「わぁお、おるくんやるきまんまんだねぇ。おにくたべる?」

「いらねぇし、気が抜けるから黙ってろ!あー、こいつ殺してぇ!!」

ライさんが肩口に顔を預け、溜息を吐き出した。ひぃ、息が耳にかかったっ!!

「殺すなら殺せ。勇者にも人間にも興味はない」

冷淡な声で、ライさんは言った。


「だが、俺からリィンを奪うと言うなら容赦はしない」

・・・ライ、さん?

「同族であろうと、神であろうと蹂躙し――――殺すだけだ」


――――っこっわ!

どんな顔か知らないけど、耳に届いた声は凍土なんて生易しいと思えるほどに冷たく、独占欲とか執着心とか、そう言ったもの全てを込めた激情と深淵から底の知れない憎悪が這い出てきたような憤慨を感じた。自分で言ってて意味が解らなくて混乱している。

え?何?何があったの?私、ライさんにこんな風に言われるようなことした覚えないんですけどっ!!ライさんの中で何があったの?!と言うか私はいつ、ライさんのモノになった?!吃驚しすぎて顎が外れるかと思ったよ!!

「アンタでもだ。――――初代魔王陛下」

「ぅえ?オルフ・・・さん?」

え?どこにいるの?私の視界には6人の魔王と四将軍、それと微動だしない甲冑姿の騎士しか見えないんですけど・・・?

「だとしても愛し子から離れろ、小童が!」

「鳥が飛び蹴り?!・・・っは!お、おるおるるるるるオルフさん?!何やって、じゃなくてどこから現れて!?」

鳥の姿のまま右脚でライさんの頭を蹴飛ばしたオルフさんは、鳥の癖に悪鬼羅刹の表情を浮かべていたのをころりと消し、花が舞うような穏やかな瞳を私に向けた。この変わり身!

「扉からに決まっているだろう、愛し子」

「そういう事じゃなくて!!ら、ライさん大丈夫ですか!!」

「突然、姿を消したから漸く成仏したかと思えば、なんだその姿は・・・!鬱陶しいっ!」

崩れた体勢を直すと同時に綺麗な回し蹴りをオルフさんの胴・・・胴体、か?ともかく素の辺りに食らわせ、飛び蹴りされた瞬間に手を離した私の傍にズカズカと近づいてくる。え・・・あの、ライさん?

不穏な眼つきが怖いんですけど・・・っ!ぎゃ、何故に抱きしめる必要が?!

「リィンが愛し子ってどう言うことだ、初代魔王・・・!」

ざわり、と空気が揺れたのはこ・の・巨大な鳥の正体が初代魔王陛下だと知ったからだろう。・・・見えないよね。初代魔王陛下、だなんて。いや、人の姿でもとても魔王だったとは思えなかったけど。むしろ神!って感じ・・・これ、前にも思ったような。まぁ、今の姿はただの大きな鳥だけど。とても初代魔王陛下には見えないよね。ねぇ、魔族の皆さん。

とか思ってたら腹部?部分をおさえていたオルフさんの姿が、紫色の煙に消えた。なんで!?

余計にざわめきが酷くなった室内で、ライさんが私を抱く腕に力を込めた。ちょ・・・ちょっと、それ以上は密着できませんか、ら?!お・・・おにょょょょょょょょょょっ!太もも撫でないでくださいよ、セクハラ!変態!ばぁかぁ!!

「我が愛し子と呼ぶことに嫉妬か、今代の魔王陛下?」

煙が晴れたその場所に、人の姿をしたオルフさんの姿がある。ライさん以外の魔族が膝をつき、頭を垂れた。・・・壮観ですね。

「随分と、変わったようだな。愛し子の影響か、はたまた別の要因か」

不敵に笑う姿はライさんを見下しているようで、浮かべる笑みが嘲笑のように思えてしまった。

「どちらにしろ、我が愛し子を愛し子と呼んで何が悪い」

吐き捨てるように告げて、オルフさんは私を双眸に映した。・・・え、な、何ですか?

瞳に宿る色は愛慕でもあり愛着でもあり、愛執でもあるけれど――私を愛していると言っていた勇者が向けるモノとはまた違うように感じる。これは何だろう?こんな色の感情を、私は知らない。向けられた覚えがない。だから解らない。判らないから怖い。

私はオルフさんが――――怖い。

「何故ならば愛し子は、我の最愛!」

と、思った自分を殴りたい。

この演技かかった動作で、感情を表現するオルフさんを怖がる要素なんて何もないや。怖いと思ったことは錯覚だ。錯覚。もしくは気のせい。


「我の空の聖女と我との間に生まれた――――愛しい愛娘なのだからな!」

「いえ、私の両親はいたって普通の人間です」

そんな爆弾投下、信じると?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ