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探偵はかくして語る。

 事件が終わり、メイドの川中さんから働いてないだろという目で見られることも、緑川さんからお前は何でいるのとか、そういった視線を避ける様に、僕は懐かしいともいえる、アパートへと身一つで戻っていた。


 考えてみたら、屋敷の中に荷物おきっぱなしのため、僕の私物は燃え上がってしまったのだ。


 おかげで帰る時の服装も、書生の格好をして、街についた時の奇異の目は、閉鎖されている島ではなく、僕の日常へと戻ってきているんだと実感することと、恥ずかしさの上塗りで、いち早く、アパートへと戻ってしまいたい気持ちだった。


 色々あった様で、その実何も無かった様なあったようなフワッとした体験の後日と言うものは、中々現実的に、携帯の買い替えだったり、部屋の鍵の予備を大家さんにおこられながらも持ってきて貰ったり、そのついでに家賃を払ったら、怪訝な顔で見られ、何か犯罪めいたことでもしたのかとまで言われそうであった。


 そして、ようやく一息ついて、このどうしようもない居場所で落ち着こうとしている。


 和歌子お嬢様から貰った報酬は、口に出したら笑われるほど、高額であり、税金云々の処理は、向こうで手続きする安心クリーンなお金なので、受けとって下さいと言われた。


 今でも携帯のスパムのようで、騙されているような気がする。

 

 お金の当面どころか、怪しげな薬や、ギャンブルに依存しなければ、もしかしなくても、一生を暮らせるだけのお金がある。


 夢も希望もない居場所に、お金はある。


 つまりは、暇があると言う事だ。


 暇なら、浪人生ならば勉強していれば良いのだと意気込んで、新しく買い直した参考書や問題集を開いて解いて充実をはかるものの、身が入らないので気分転換に、久々に中古の本屋で立ち読みをした。


 久々の立ち読みは、足にこたえたが、それでもそれなりの充足は、はかれた。


 しかし、読んだ探偵小説や漫画の影響か、僕はあの事件で不意に気になることを思い出した。


 何故、天誅と書いたのか。


 あれは何の意味もない、メッセージだったのだろうか。


 和歌子お嬢様の見立てとして、ロボ和歌子をあの火の中へと置いた。


 自分の代理として、ロボ和歌子を置いたのだとするならば、あそこに書く文字としては、死者からのメッセージとして何を意味していたのだろうか。


 天誅とは、天に背くものに天が罰を与えることである。


 天とは何だろうか。


 天が親だったら親の望むものになれなかった、自分を殺すという意味だったのか。


 天に殺される、和歌子お嬢様が神の様に盲信ともいえる様に信じていたのは探偵、つまりは探偵が犯人である事を示した。


 もしかしたらそれらのどれかが、和歌子お嬢様の望む犯人だったのかもしれない。


 そして、何故僕が探偵だったのか。


 まぁ今さら知るよしも無いことだ。



「所長、何を意味のない現実を逃避してボォーとしているんですか」

「立川所長、これからよろしくお願いします」

「所長、どうせ暇ですよね」



 見慣れたアパートの、僕の部屋の前には、満足げな表情を浮かべる、二人組がいた。


 ご丁寧と言い難い声かけと、僕の部屋の表札に立川探偵事務所の表札があることで、嬉しいとも悲しいとも言えないが分かった。


 滑稽ながら、お嬢様に与えられた役割の探偵を、出来るかはわからないが、演じて過ごすのもいいのかもしれない。


 探偵とは知る事である。


 夢も希望もない現実をしり、誰かの想いをしっていき、語っていくものである。


 今さら知るよしもないけど、知って行くことは出来る。


 僕は探偵なのだから。










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