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探偵は推理を披露する

 探偵と犯人が対峙する場所というのは、崖と相場が安定しているが、僕がロボ和歌子初号機に先導され、豪華な車に乗せられ、和歌子お嬢様の屋敷から遠ざかり、町の豪華なホテルの一室で、僕はこの事件の犯人と二人きりで対峙していた。


「やっぱり、貴女だったんですね」

「何故、わかったんですか?」


 手を静かに叩くように、頬を緩ませながら、探偵である僕を見ていた。


「あぁ今のは、中々探偵と犯人のやりとりのようでしたわね、立川さん、そこまで、いえここまで探偵として自覚と才覚が備わるとは、色々と感慨深い思いです」

「ご自身で犯人と認めるんですね、和歌子お嬢様」


 犯人と指摘しても、屋敷で見てきた、和歌子お嬢様の顔と一切何も変わらぬその顔で、傷一つ、火傷の後すらない和歌子お嬢様は、楽しそうに微笑んでいた。


「さて立川さん、何で私が犯人であると思った んでしょうか」

「殺されていないので、殺害方法というのも変ですが、放火するという事です」

「別におかしくは無いと思いますよ」

「僕には、そう思えなかったんです、予告状めいた紙と部屋の天誅の文字は見られる事が前提のはず、それなのに屋敷を燃やしたらもしかしたら、見られる事なく終わっていたのは、おかしいでしょ」

「なるほど」

「つまりは、あれは僕にあの光景を見せる事が一つの目的です、僕が目撃者になることで、探偵として動く確率をあげ、探偵として動いて貰いたがっていたのは、和歌子お嬢様だけです」

「他にも殺害方法を放火にした理由があるという事ですか」

「殺害方法に放火を選んだある理由、それは和歌子お嬢様の遺体に近づけさせないという点です、近づく事が出来るのであれば、死体が人間でなく、ロボ和歌子初号機の予備、もしくはそれ様に開発されたロボ和歌子を作ったのかは分かりませんがその事がバレてしまうから、ロボットと人間の違いは見るとわからないけど、触感ではバレてしまう恐れから、犯人は殺害現場を見せても、触れさせるわけにはいかない、だから殺害方法を放火にした」

「確かにそうですね、でもやっぱり私が犯人だと思う理由は、他にもありますよね」

「お金持ちのお嬢様が出てくる物語と、探偵小説を思い出したんです」


 本来ならば、首をかしげる様な答えではあるのに、和歌子お嬢様は、妙に納得のいった顔をしていた。


 両方とも良くある話だ。


 前者は満たされているはずなのに、お金持ちであると、夢も自由がないと、家から飛びだすお嬢様の良くある話。


 後者は、入れ替わる双子の話。


 事件をきっかけに、ドサクサに紛れて入れ替わる話。


「ロボ和歌子初号機が、和歌子お嬢様に似せて作られた理由が和歌子お嬢様の両親が、本当ならお淑やかな娘が欲しかった理由で作られたとしたら? 貴女は自分そっくりなロボ和歌子初号機をみて、ひどく憧れていた、探偵小説のポピュラーである双子の入れ替わりのお話を参考に、折神のお嬢様役をロボットに押し付けて、自分は別の場所へと生きるために事件を画策したと思ったら、貴女が犯人だと思ったんです」

「流石、立川さんです、名推理お見事です」


 意外にも、訂正もなく、そこには拍手すら惜しみなく、賞賛をしていて、ともすれば有効の意をあらんかぎりの握手でしめしそうなぐらいに、頬も紅潮しているぐらいに嬉しそうだ。


 その興奮を抑えながらも、期待に満ちた目で僕に語りだす。


「さて立川さん、探偵として私に道を諭してください、探偵とは犯人に道を諭せることが、事件を終わらし名探偵としての名探偵である由縁だと思うのです」


 期待を込めて、見つめてくる和歌子お嬢様に、僕はその期待に応えるしかない。

 探偵役として、犯人と対峙し、犯人である彼女自身しか分かり得ない事を、わかったふりをしながら推理するという滑稽な事をしたのだ。


 それがお嬢様の求める探偵としての要望ならば、叶えよう。


 それに探偵とは犯人を諭すものと言われてみれば、探偵は犯人に道を諭している。


 それならば、お嬢様の言うとおり、期待に応えて、この事件を終わらせよう。


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