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探偵と閃き

 探偵に必要なものをあげるとしたならば、信念、個性に知力に行動力、優秀な助手にとあげれば、あげるだけキリが無いのだが、僕に足りないものをあげるとしたならば、同じぐらいにキリがない。


 世の中は、無いものを欲しいと思う心はあっても、手に入ることなど殆ど無いという事だ。


 無いものは無いと言う事が分かっているからこそ、諦める事が出来ると言うものだし、つまりは出来ない事は出来ないと言う事で、関係者へのアリバイの聴取という事を諦めて、いや一時的に保留にしておこうと思う。


 保留にしたところで、重大な問題はまだまだあるが、さてこれからどう犯人に辿りつければいいのだろうか。


 屋敷が燃え証拠というものに乏しく、犯人に辿りつけれるのかと言う不安要素が、チロチロと舌を出しているようで、後回しにした、聴取という問題と、早速向き合っていかねばいけないという事態に呑まれかねない。


 聴取をするとしても、被害は出来れば最小限に抑えたい。

 ここは、考えどころであろう。


 事件の解決に繋がりそうな事を、誰彼構わず聞くというのは、やめておこう。


 殴られてもいないが、お腹をさすりながらそう思うし、想像の痛みすら凌駕しそうである。


 犯人に繋がりそうな手がかりとしては、あの予告状と天誅の文字の2点であるが、予告状はともかく、天誅の文字は何をさすのかという事から考えてみる。


 僕としては、わざわざ犯人が、壁に文字を書く意味合いが薄いと思うのだ。


 ただ、被害者である、和歌子お嬢様が書いたものであれば、犯人を示すためのメッセージだと考えられる。


 もっとも、和歌子お嬢様が書くのであれば、もっと暗号めいたメッセージになっているような気がするし、なにより和歌子お嬢様は、椅子に縛られていたのだから、被害者の和歌子お嬢様が書いたものではない気がする。


 そうなるとしたならば、犯人が書いたという可能性が高いだろうし、犯人が天誅と書いて、和歌子お嬢様を縛り、放火することによって、折神和歌子に対して、その周りに対して、何か示すことが必要であった、つまりは威嚇行為あるいは脅迫をするということだ。


 しかし、その場合は意味合いが薄いというよりも、あってないような中途半端にしかならないとも思うのだ。


 屋敷に火が回っているという状況では、その威嚇行為自体が悟られないという点だ。

 火の回り次第では、和歌子お嬢様の部屋にすら辿りつけず、誰一人気づかないということも、十分考えられるし、その逆として火が回る前に、救出され、犯人としては天誅をくだせ無いままに終わった可能性もある。


 そういった意味合いでは、あってないものだと思う。


 なら犯人が天誅の文字を関係者に見せると言う事を、計画していたならば、見せたい 相手は僕か川中さんと言う事になる。


 僕が見つけた予告状のように、川中さんも犯人から何らかのアクションがあり、燃え盛る和歌子お嬢様の部屋へと誘導されたのだろうか。


 しかし、そうなると屋敷が燃えてから、誘導されたということにならないだろうか。


 誘導が僕と同じような段階では、僕よりも先に、メイドの川中さんは、和歌子お嬢様の元へと辿りつくだろう。


 天誅の文字は屋敷を燃やしたら、意味合いがなくなるはずなのに、なぜ屋敷を燃やしたのか。


 僕の部屋に予告状を置き、和歌子お嬢様の部屋に天誅の文字を書き、和歌子お嬢様を椅子に縛り、屋敷に火をつけ、もしかしたら、川中さんにも接触して、状況を見せた犯人は誰なのか。


 無いはずの閃きを待つかのように、僕の推理は浮かんでは消えていく。


 無いものをねだる様に、掴める様に、手に入れたいと思いながら。



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