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探偵と決意

 探偵の本番というものは、事件が発生してからと言うものが本番ではある。


 しかし、探偵というものは、心が痛くならないのだろうか?


 もしくは痛みを堪えてさえ、真実を掴みたいのだろうか。


 僕は、彼女は誰に殺されてしまったのか、考えねばならない。


 本当にそうだろうか。


 考えねばならないのか。


 緑川さんの様に、長い付き合いでもない。


 川中さんの様に、揺るがず仕事に全うしている心も能力もない。


 家族の様な絆があるわけでもない。


 ロボ和歌子初号機の様に、割り切って考えられるわけでもない。


 そういう契約だったとは言え、探偵として僕に何が出来るのか。


 僕が考えて答えをださねばならないのか。


 そう僕に問えば、僕自身がその答えを、どう答えることは分かっている。


 僕自身である必要性はない。


 そう答えてしまえることは、重々承知している。


 必要性と言うものが、改めて問うまでもなく、無いと言い切れてしまう程だ。


 それでも、微かに、僕自身の答えにケチ、いや反論するのであれば、それは逃げと言うものではないか。


 確かに、長い付き合いも、揺るがない心も、血の絆もないし割り切って考えることも出来ない。


 ただ、和歌子お嬢様は期待した。


 彼女自身の死が物語の様になることを期待した。


 熱く熱く語るように、あの炎の中で見せた様に、満ち溢れていた。


 その和歌子お嬢様の期待に、応えようとした心が僕がだす答えを否定する。


 探偵達が言うみたいに。


「その答えはつまらない」

「探偵の名が廃る」

「舞台から逃げる主役がどこにいる」

「探偵とは、事件に会い、事件を考え、事件に答えを出すことだ」


 もっともらしく、総じてみれば、まだ探偵としての役割も果たせていないし、僕は果たしたいと思っているのだ。


「犯人見つけないと」


 意を込めて、拳を握って開いて、また握りこみながら言っても、ロボ和歌子初号機にはわからないだろうけれど。


「それじゃあ所長、皆にアリバイでも聞きに行きましょうか」

「それは、ハードル高いなぁ」


 実に当たり前ではあるが、難易度設定が高すぎる。


 大変な時に、僕らがそれ聞きに言ったら、さらに怒られるどころか、ぶちのめされるという未来しか来ない。


 探偵の役割を果たしたいという気持ちに、はやくも挫けそうな思いが、襲来する。


 それでも、先程意を込めた決意を染み込ませる様に、まだまだ熱をもっているような髪の毛をクシャクシャと、掻き毟りながら、探偵としてまた考えることにした。


 僕自身が出した探偵の声に応えれるように。

 和歌子お嬢様が所望したように、物語の探偵達に近づけるように。



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