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探偵と予告状

 ゆっくりと忍び寄り、覆いかぶさるのが後悔だ。


 そんな何処かで、読んだ本の一文を思い出したのは、後悔しているからだ。



 パーティーも終わり、一人で割り当てられた自室へと戻ると、疲れた心のせいか、今すぐにまどろみたいという何とも堕落している僕自身に苦笑するしかなく、そしてそれは何事もなければ、実行されていたことだろう。


 部屋の目のつく所へ放り出されていた分厚い本の表紙に貼り紙が貼ってあったからだ。


 一般的な何の変哲もない紙。


 そこにパソコンで書かれていたものだと断定出来る無機質な文字。


【ホンジツタンテイノトキ】


 つまりは、これは単なる予告状と言うことに気づくのに時間はかから無かったが、余計に混乱した。


 誰が置いたかという極々当たり前の問題から、誰に相談すればいいのか、いやそもそも予告状と言うのは、保管すべきなのか、何かの比喩表現なのか、和歌子お嬢様達に報告すべきものなのか、ロボ和歌子初号機のイタズラだったらまだ心労だけで済むのに、本物だったら、本物だったらどうすべきなのかという混乱も願望も入り混じって余計に混乱している。


 とりあえず、部屋を見渡してみるが、他に怪しい文章の書かれた貼り紙はなく、これ一枚であり、貼られていた本も、探偵小説であるだけで、中がくり抜かれていたりはされていない。


【ホンジツタンテイノトキ】と書かれた紙一枚と分厚い探偵小説一冊がこの部屋に存在すると言う事と予告状めいた事から、和歌子お嬢様の望み通りに殺害をしようと思ったと言う事だろう。


 そうでなければ、わざわざ僕の部屋にこの様な予告状をだす必要性など無いだろう。


 いや、普通和歌子お嬢様の所へこういう予告状は送らないだろうか。


 殺害の予告状と言うものは、本来は殺される側へと送られると言う事が、普通なのでは無いだろうか。


 殺される側へ恐怖を煽り、対象を揺さぶり、弱らせてから、己の殺意を満足させるために送る。


 それならば、この予告状は偽物でロボ和歌子初号機のイタズラという僕の願望が現実味を帯びてくるのだが、一つの懸念がその現実味を遠ざける。


 予告状を送って、和歌子お嬢様が不安がるかと言われれば、あの和歌子お嬢様の事だ、喜ぶ事はあっても不安がるということは考えにくいだろう。


 殺害の予告状としての意味が、薄れてしまうだけ、意味がなくなってしまうから、僕に送ることでこの予告状は意味をなす。


 僕がこの予告状を持って他の誰かに説明したとしても、半信半疑いや予告状と信じてくれるかも微妙である。


 僕に送ることで、お嬢様を殺すと言う犯人は確かにいると言う事になる。


 その事に気付く頃に、屋敷から警報装置が鳴り響き、豪華な屋敷は火に包まれていた。


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